先日、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care) の茨城コースを受講してきました。
以前から気になってはいたものの、「大変そう」「忙しい中で本当に受ける意味があるのか」と迷っていたコースでした。この度、専門医取得の要件で必要となったため、満を持して申し込みを行いました。
今回は雑記として、
・JATECとは何か
・実際にどんな日程・内容だったのか
・費用感
・受講してみて感じた意義
といった点を、個人的な感想ベースで簡単にまとめてみたいと思います。
JATECとは?
JATECは、日本外傷学会が主催する外傷初期診療の標準化を目的とした教育コースです。
重症外傷患者に対して、
・到着直後に何を優先するのか
・どの順番で評価・処置を行うのか
を、体系的(Primary survey / Secondary survey)に学ぶことを目的としています。
いわゆる「外傷版のACLS」とイメージすると、分かりやすいかもしれません。
日程・内容はどんな感じ?
私が受講したJATEC茨城コースでは、webセクション半日と対面セクション1日の、計1日半の日程で行われました。
WebセクションではZoomを利用し、おおよそ午後半日、休憩を併せて5時間程度かけて行われました。ショック、頭部外傷、骨盤外傷、Trauma Imagingの4分野についてレクチャーが行われ、1セッションあたりの時間は40分程度であり、適宜講師からの質問が行われ、双方向的に進んでいくような形式でした。
Webセッションから1週間後に対面セクションが行われますが、それまでにWebテストの受験が求められます。これは100問のYes\Noクエスチョン形式であり、95点以上をとる必要があり、なかなか大変でした(テキストをみながらでなんとか一発合格できましたが)。
対面セクションは朝8時半に開始され、17時半までというかなりの長丁場で行われました(私は会場が遠方でしたので、前日に近隣のホテルに宿泊しました)。午前中には、シミュレーターを用い、手技(外科的気道確保、骨髄内輸液路確保、心嚢穿刺、胸腔ドレナージ)と、Primary survey、Secondary surveyでの動き方を、熟練の先生方の指導を受けながら練習をしていきます。午後は色々なシナリオでPrimary surveyからSecondary surveyまでの流れを反復して練習した上で、試験としてOSCEが行われました。
最後に自施設で対応困難な症例が搬送されてきた場合の転院基準に関するレクチャーが行われた後、合格証が授与されて解散となりました。
費用はどのくらい?
さて、このJATECですが、受講するのにかなりのコストがかかります。
まず、テキストが定価で16,500円もします。医学書そのものが比較的高価ではありますが、さすがに気軽にはポチれない金額です。
更に、受講料で60,000円がかかります。ここに宿泊費、交通費も加わると、かなりの費用になってしまいますね…。所属施設に確認し、補助が出るのであればそちらを活用したいところです。
事前学習はどのくらい?
結論から言いますと、JATECの最低2週間前から勉強時間を確保しておくことをオススメします。
まず、テキストは300ページ以上あり、密度も濃いため、通読するとなるとそれなりの時間が必要です。また、テキスト内のQRコードから学習動画を視聴することができるのですが、これが全部で79個もあります。動画の内容は数分のものもあれば30分近くボリュームがあるものもあり、すべてに目を通すのはかなり大変です(視聴速度の変更機能があるため、うまく活用すれば視聴時間を短縮できます)。しっかり知識を定着させるには、余裕を持ってテキストに取り組むのがベストでしょう。
…と、偉そうなことを言っていますが、私はWebセクションの1週間前になって慌てて勉強を開始しました。一応、運営から事前にテキストの中でも特に目を通しておくべき箇所と動画が提示されるため、最低限そこだけは確認をし、講習に挑みました。個人的には、短期間で集中して勉強することができ、結果としては問題なかったかな、と思っています。…繰り返しますが、皆さんには2週間前からちゃんと勉強することをオススメしておきます。
受けてみての感想
JATECを受けてみた率直な感想としては、費用や時間の負担はそれなりにあるものの、受講して損はない講習だった、という一言に尽きます。
おそらく多くの医師が、外傷診療における Primary survey や Secondary survey という言葉自体は、一度は耳にしたことがあると思います。しかし、それを「知っている」ことと、「実際の現場で適切に動ける」ことの間には、思っている以上に大きな隔たりがあります。
JATECの良い点は、アルゴリズムを頭で理解するだけでなく、実際の外傷初期対応を想定した流れの中で、何を優先し、どう動くべきかを繰り返し体に染み込ませられるところにあります。熟練した救急医の先生方から直接フィードバックを受けながらトレーニングできる機会は、そう多くはありません。
また、外傷診療に対する漠然とした苦手意識や不安が、「何から手をつければよいのか分からない」という状態から、「少なくとも最初の一手は切れる」という感覚に変わった点も、個人的には大きな収穫でした。
なお、もともとは丸2日間の対面コースだったと聞いていますが、現在は Webセクション半日+対面セクション1日 という構成になっており、以前と比べると時間的な負担はかなり軽減されている印象です。忙しい臨床医にとっては、この点も受講を後押しする要素かもしれません。
すべての医師に必須の講習とは言いませんが、救急外来や当直で外傷患者に対応する可能性があるのであれば、一度は受講しておいてもよいコースだと感じました。
