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選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

  • 2025年6月16日
  • 2025年6月16日
  • 精神
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 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)とは、複数ある抗うつ薬の中でも、第一選択として用いられる薬剤です。脳内のシナプス前セロトニン再取り込みポンプを阻害することでシナプス間隙のセロトニン濃度を上昇させ、臨床効果を発揮します。αアドレナリン、ヒスタミン、アセチルコリンなど他の神経伝達物質の受容体への親和性が低く、セロトニンに選択的に作用します。

 SSRIはうつ病だけでなく、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害など、様々な精神疾患に用いられます。

 一方、

・適切な使い方をしないと十分な薬効が期待できない

・セロトニン症候群など特徴的な副作用がある

など、使用する上注意すべきポイントもあります。

 本邦で使用できるSSRIとして、以下のようなものがあります。

 使い分けるとなると専門領域となってしまうので、プライマリケア医はどれか一つを使いこなすことができればよいと思います。

 私の場合、

・メタアナリシスで有効性、忍容性が優れることが示されている

・副作用がマイルド

・薬物相互作用が少ない

・1日1回の内服でOK

・OD錠、ジェネリックがある

といった点から、セルトラリンを使用するようにしています。

 SSRI投与の原則は、“少量から開始し、推奨量まで少しずつ増量”です。underdoseになりがちなので、少し良くなったからといって増量をやめず、副作用がない限りは推奨量まで増やすことを意識しましょう。

 投与開始から症状が改善するまで2~4週ほど時間がかかります。この点を理解した上で患者さんにもしっかりと説明し、医師・患者の双方があせらないことが需要です。また、基本的には半年~1年は継続し、副作用がない限りは減量・中止もあわてる必要はありません。むしろ、性急に減量して症状が悪化してしまうことに注意しましょう。

 以下にセルトラリンを例にした投与スケジュールのイメージ図を掲載しますので参考にしてください。

 SSRIの副作用として、消化器症状、アクチベーション症候群、中断症候群、セロトニン症候群、性腺機能障害、眠気・ふらつきなどがあります。ここでは、前者の4つについて詳しく解説します。

消化器症状

 全体として最も多い副作用であり、悪心・嘔吐、食思不振、便秘、下痢、口喝など、多彩な症状が出現する可能性があります。多くは一過性であるため、事前に患者さんに説明しておくことで、不必要な内服中断を防ぐことができます。

アクチベーション症候群

 本剤により、中枢神経が過剰に活性化されることで出現する症状です。不安、焦燥感、不眠、衝動性、アカシジア(鎮座不能)、易怒性、衝動性といったものがあります。全体で10~20%程度に生じると報告されています。

 本症状が出現した場合、SSRIを開始直後の場合は薬剤の中止を、増量後の場合は元の投与量に戻すことが推奨されます。

中断症候群

 それまで内服していたSSRIを急に中断することで生じます。めまい、倦怠感、頭痛、しびれ、耳鳴りなどの身体症状と、焦燥、不安、不眠などの精神症状がみられる可能性があります。中止からおおよそ1~3日で出現し、2週間程度で消失します。

 予防は“急にSSRIを中断しないこと”に尽き、減量は時間をかけて漸減していく必要があります。また、患者さんにも予め中断症候群について説明をしておき、自己判断での休薬を防ぐことも重要です。

セロトニン症候群

 セロトニン症候群とは、中枢神経系におけるセロトニン作動性活動が亢進することで生じる、命に関わり得る病態です。他の抗うつ薬や抗てんかん薬でも生じることがありますが、原因薬剤としてはSSRIが最も多いとされています。

 中枢神経症状として不穏、意識障害、高体温が、末梢神経症状としてミオクローヌス、下痢、発汗、頻脈、血圧の変動などが生じます。軽度から重度なものまで幅広い表現型を示し、軽症なものは見逃されることも多いと考えられています。重度である場合、しばしば悪性症候群との鑑別が問題となります。

 過量内服が誘因となりますが、通常の内服量でも発症する可能性があり、特に初回内服、投与量変更後には注意が必要です。

 治療の基本は支持療法であり、vitalの安定化、薬物の中止を行い、必要に応じて鎮静を行います。

 SSRIの効果が乏しい場合、以下のようなケースを考えます。

・診断が間違っている(うつ病と思っていたら双極性障害2型だった、など)

・診断は正しいが用量不足

・より専門的治療が必要な病態

 プライマリケア医の場合、原因が何にせよ、SSRIを使用して3か月が経過しても改善がみられない場合には専門家にコンサルトするのが妥当と考えます。

・UpToDate

・医学事始 セロトニン症候群https://igakukotohajime.com/2020/07/31/%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-serotonin-syndrome/