はじめに
今回紹介するのは、発売されたばかりの「LIVE!! 輸液プラクシス 3つのRで現場に実装 輸液ど真ん中!!!」という書籍です。著者はひたちなか総合病院の救急・総合診療科の柴崎俊一先生です。柴崎先生は2017年に同病院に赴任され、なんと卒後10年弱にして救急・総合内科を創設されました。以後、ひたちなか市を中心とした地域医療の充実と、後進の教育に奮闘されております。
また、柴崎先生は『茨城の「墨子」』を目指しておられるといいます。墨子というのは中国の戦国時代に活動した諸子百家の一人であり、墨家の開祖、墨翟の尊称です。彼は「兼愛」という考え方を中心に、戦国乱世の世に平和主義・博愛主義を説きました。これは、戦国時代の如く厳しさを増す地域医療の中でも、墨子の「兼愛」の精神に習い、愛を持った医療に取り組んでいくという、先生の強い決意を表しているのだと思います(柴崎先生、解釈を間違っていたらスミマセン)。管理人はプライマリケアを主戦場としている上、趣味として歴史や中国哲学を嗜んでおりますので、勝手に柴崎先生にはシンパシーを感じております。
今回は、そんな柴崎先生の待望の単著である本書を読んだ上で、感想をまとめていこうと思います。
どのような本か?
※以下は商品情報の紹介文を参考・引用して作成しています。
本書は卒後2~3年目の医師&診療看護師をターゲットとした、“ちょうどいい”輸液の入門書です。完全な初心者というよりも、現場で学びつつある医師や看護師、つまり「初級者」を想定しており、更なる学びのスプリングボードとして、易しく深く新しく、輸液のための/からの活きた(ライブな)知見を満載しています。
症例をベースにし、輸液の原理・原則や、輸液を決定する上での思考過程について、詳細な解説が行われていくというような構成となっています。症例は全部で15例であり、感染症の急性期、敗血症性ショック、心不全、電解質異常、終末期など、様々なシチュエーションをカバーしています。ページ数は400ページです。
読んでみた感想
前提として、管理人は医師7年目になります。ここ数年、外来診療を中心にしていたため、病棟業務から離れ、輸液について深く考える機会がほとんどありませんでした。しかし、来年から病棟業務に復帰することになり、改めて輸液を学ぶ必要性を感じていました。そんなタイミングで本書が出版され、まさに求めていた内容だと感じて手に取ったのが、この本との出会いです。
結論から申しますと、本書はそんな自分にとって最適な内容でした。
著者が本書の冒頭でも書いている通り、完全な初心者向けよりはハイレベルである一方、専攻医などの中級者向けほどは難しくない…、つまり、「初心者から中級者を橋渡しするような難易度」で執筆されています。序盤は輸液回路・穿刺の準備や速度調整など、超基本的事項から始まるのですが、中盤はResuscitation(蘇生)の“ROSD”に関し、フェーズごとに症例が用意されており、なかなか手応えがありました。
また、領域に関しては循環・集中治療から電解質異常まで、様々なシチュエーションが幅広くカバーされている点も特徴です。このため、様々なバックグラウンドの症例を診療しなければならない初期研修医、若手の総合内科・総合診療医には適した内容であると言えます。
さらに、フルカラーである上に、可愛いイラストがふんだんに盛り込まれており、全体を通して大変読みやすいです。
最後に、これは完全に個人的な感想になりますが、中国古典由来の四字熟語が随所に盛り込まれているのも良かったです。恥ずかしながらほとんど初見だったので、その都度ググって勉強しました。
まとめ
まとめますと、本書は「初心者を脱した初級者が、中級者との橋渡しに読む本」として最適な難易度です。具体的には、初期研修医2年目から専攻医がよい対象になると考えます。また、管理人のような輸液をもう一度学び直したいという人間にもよい適応がありそうです。
対して、医学生や初期研修医1年目など、初めて輸液を学ぶという人は、本書の難易度にやや面食らってしまうかもしれません。そういった方は、より初心者向けの平易な書籍を挟んだ上で、次に本書を手に取るとよいでしょう。