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PFAPA症候群

 PFAPA(Periodic Fever,Aphthous Stomatitis,Pharyngitis,Adenitis)症候群とは、Periodic Fever(周期性発熱),Aphthous Stomatitis(アフタ性口内炎),Pharyngitis(咽頭炎),cervical Adenitis(頚部リンパ節炎)を特徴とする周期性発熱症候群です。通常小児が発症する疾患ですが、近年は成人での発症例も報告されるようになってきています。

 PFAPA症候群は比較的頻度の高い周期性発熱症候群であり、1~4歳の小児に好発します。5歳までの小児の有病率は1万人当たり2.3人程度とされていますが、本邦での詳細な疫学は不明です。

 近年は成人発症例も多数報告されており、20~30歳前半に診断される例が多いとされています。なお、本邦では、成人発症は少なくとも15例報告されているようです5)

 家族性地中海熱など、他の周期性発熱症候群と異なり、PFAPA症候群では単一の遺伝子異常や診断に特異的なバイオマーカーが見つかっていません。このため、病態に関しては不明な点が多いのですが、少なくとも自然免疫系におけるサイトカイン調節異常が背景にあることが示唆されています。また、症候やサイトカインの動きがベーチェット病と類似しており、両者を近縁疾患とする意見もあるようです。

〇発熱

 周期性の発熱はPFAPA症候群最大の特徴です。通常2~8週間ごとに生じ、平均は4週間とされています。PFAPA症候群の発熱は極めて規則的とされており、患者さんによっては次の発熱が起こるタイミングを完璧に予測できる方も少なくないようです。発熱は2~7日間、平均で4~5日間持続し、鑑別となる家族性地中海熱と比較するとやや長めです(家族性地中海熱の有熱期間は12時間~3日間)。

〇アフタ性口内炎

 アフタ性口内炎は40~80%の患者さんに出現し、口唇の内側、または頬粘膜が好発部位です。ベーチェット病のものと比較すると小さく、疼痛も軽度です。このため、患者さんに自覚がないこともあり、発熱時の身体診察で注意深く口腔内を観察する必要があります。

〇咽頭炎

 咽頭炎はPFAPA症候群の患者さんのうち、65~100%に出現します。白苔を有する扁桃炎も伴うことがありますが、特異的な所見はありません。このため、上気道炎による咽頭炎や細菌性扁桃炎と肉眼的に区別することは困難とされています。

〇頚部リンパ節炎

 全体の60~100%に生じ、圧痛を伴うことがあります。リンパ節の形状や分布など、本疾患に特徴的な所見はないようです。

〇その他の症状

 PFAPA症候群では、これまで解説してきたもの以外にも多彩な症状を呈する可能性があります。代表的なものとして、腹痛(40~65%)、関節痛(11~42%)、嘔吐(18~41%)、頭痛(18~65%)などがあります。ただ、やはり中心となるのは咽頭周辺とした症状であり、その他の部位の症状が目立つようなら他疾患を疑うべきといえます。

〇成人と小児の相違点

 PFAPA症候群は、小児と成人で病像に違いがあるようです。例えば、PFAPA の成人 30 人と PFAPA症候群 の小児 85 人を比較した報告では,成人では周期性のエピソードとなることが少なく,咽頭炎が少なかった一方で,胸痛・頭痛・関節痛・筋肉痛・眼症状・発疹を呈することが多かったとされています1)。また別の報告では、成人 63 名と小児 120 名の比較では,成人では明確に周期性があるエピソードや滲出性咽頭炎が少なく,成人の方が関節痛や筋肉痛が多かったとしています2)

 繰り返しになりますが、PFAPA症候群には単一の遺伝子異常や診断に特異的なバイオマーカーは認めていないため、感染症などの除外診断が重要です。また、規則的な発熱発作で咽頭周辺症状が主体であることと、無熱期は完全に無症状であることが診断の鍵となります。

 現在、最もよく用いられている診断基準は、Thomasらが改定したものです3)。ただ、最近は成人発症例があることを鑑み、Eurofeverレジストリーが新たな診断基準を提示しており、感度 97%、特異度 93%と報告されています4)。以下に両診断基準を示します。

 また、これらの診断基準には含まれていませんが、発熱エピソードの際、グルココルチコイドへの反応性がよいことも特徴とされています。鑑別となる家族性地中海熱やその他の周期性発熱症候群は、グルココルチコイドへの反応性が悪いため、これらの疾患との鑑別で有用です。具体的には、発熱時にプレドニゾロンを1~2mg/kg(最大60mg)を単回を行います。この際、全く熱が下がらない、もしくはすぐに症状が再燃してしまうようであれば、他疾患の可能性が高まります。

 最後に、PFAPA症候群の診断時、鑑別すべき疾患を列挙しておきます。

 小児例では、予防としてシメチジンまたはコルヒチンの内服が推奨されています。ただ、成人例ではコルヒチンの効果が低下することが示唆されているようです。また、薬物治療に効果がみられない場合、扁桃摘出術が有効とされています。

 発熱時には先述したコルチコステロイドの内服の他、アセトアミノフェンやNSAIDsの使用が選択肢となります。

1)Clin Rheumatol 2017; 36:463-8.

2)Ann Rheum Dis 2019; 78:1025-32.

3)J Pediatr. 1999 Jul;135(1):15-21.

4)Ann Rheum Dis 2019; 78:1025-32.

5)八重樫牧人先生による成人PFAPAの症例報告

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhgmwabun/20/5/20_272/_pdf/-char/en

6)UpToDate