副腎偶発腫瘍とは
〇定義
副腎偶発腫瘍は放射線検査によって偶然発見された直径1cmを超える腫瘤性病変です。
・悪性ではないか?
・機能性ではないか?
の2点に注目して評価を進めていく必要があります。
〇疫学
1985-1990年にかけて実施された61,504件の腹部CTの研究では、偶発的な副腎腫瘍が259人(0.4%)で検出されました。その後、CTの性能が上昇した以降の研究によると、腹部CTでの副腎偶発腫瘍の有病率は1.4-7.3%であるとされています。高齢者ではさらに有病率が高くなり、10%程度と見積もられています。また、剖検での偶発腫瘍の有病率は2%程度とされています。
片側の副腎腫瘍が見つかった症例で、10-15%に対側性での副腎腫瘍がみつかったという報告もなされています。
また、副腎偶発腫瘍のタイプの内訳は下記の通りになります。
副腎偶発腫瘍のアセスメント
〇内分泌能の評価
sub-clinical Cushing症候群は副腎偶発腫瘍の中で最も多いホルモン分泌性副腎腫瘍です。デキサメタゾン抑制試験でホルモン分泌能の評価を行います。ただし、画像上褐色細胞腫が疑わしい場合、デキサメタゾン抑制試験でクリーゼが誘発される可能性があるので注意が必要です。
褐色細胞腫は副腎偶発腫瘍の3%を占めるとされています。褐色細胞腫というと症候性である印象がありますが、画像診断能の上昇のため無症候性での発見例が増加しています。特にHU>10の場合に疑わしいとされ、その場合は蓄尿や血清メタネフリン・カテコラミン分画を測定します。
原発性アルドステロン症は副腎偶発腫瘍としては数%と稀です。副腎偶発腫瘍としては無症候性で高血圧、低K血症を伴わないことも多いため、全例でPACとPRAを測定する必要があります。
〇悪性の評価
原発性副腎癌の頻度は副腎偶発腫瘍の2-5%と低いですが、見逃してはいけません。
診断時に小さければ小さいほど予後が用量になるといわれています。4cmをカットオフ値とすると、副腎癌に対して感度93%、特異度76%の精度があるとされます。そのため、4cm以上のサイズでは悪性を考慮し切除を検討する必要があります。
また、CT値も重要です。HU<10の場合、脂肪組織を多く含んだ腺腫である可能性が極めて高く、その可能性はほぼ100%であるとされます。一方、HU>10の場合、悪性の可能性が高くなり、その感度は100%、特異度33%であるとされます。
下記に診断のフローを掲載します。
〇画像所見
・高脂質良性副腎腫瘍:CT値は5HUであり、造影剤で乏血管性で均一に造影されている
・褐色細胞腫:CT値は25HUであり、脂質に乏しい。造影剤では血管が多く嚢胞性であることがわかった。
・小さな無症候の褐色細胞腫:CT値は40HUであった。
・非機能性副腎癌:CT値は34HUであり、造影剤で不均一に造影された。
・両側大結節性副腎皮質過形成
〇プライマリケア医としての視点
腹部CTを撮影した際、副腎偶発腫瘍を見落とさないことが第一と考えられます。ホルモン分泌能の測定はなかなか難しいでしょうし、発見した時点で一度高次医療機関に紹介するのが無難かもしれません。
参考
・up to date
・ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版