注目キーワード
  1. 高血圧
  2. 骨粗鬆症
  3. 糖尿病

甲状腺ホルモンの生理

  • 2022年11月18日
  • 2023年1月26日
  • 内分泌
  • 28view
  • 0件

甲状腺の解剖と診察法

〇解剖

甲状腺は喉頭と気管上部の前面に張り付くように位置する内分泌器官であり、重さは成人で10-20gです。通常左右2葉からなり、甲状軟骨中部から第5-6気管軟骨の側面に位置します。全体は線維性被膜で包まれ、輪状軟骨や気管軟骨に固着しているため、嚥下に伴い上下に動きます。女性と比較すると男性の甲状腺は尾側に位置していることを覚えておく必要があります。

〇甲状腺の診察

触診は対座して、顔をまっすぐか、少し上向きにして行います。顔を上に挙げすぎてしまうと前頸筋が緊張してしまうため注意が必要です、甲状腺の触診で診るべきポイントは、腫大がないか、結節が存在しないか、あれば硬さ、表面の性状、圧痛の有無、可動性になります。

手順は次の通りに行います。

①まず甲状軟骨と輪状軟骨の位置を確かめます。甲状腺は、輪状軟骨の上縁から5mm頭側に左右の上縁があり、側葉はその位置から尾側に4cmの長さを占めています。女性は甲状軟骨の位置が高いため比較的触診しやすいですが、男性は甲状軟骨の位置が低く嚥下させて初めてわかることがあるので注意が必要です

➁甲状腺のある部位に両手の母指を軽く当てます。

③触診するときは気管が動かないように片方の手の母指を軽く気管にあてておいて、もう一方の手の母指を気管の側面から横に滑らせて押し込むようにして触診をします。

④甲状軟骨の下縁から鎖骨まで上記の触診を繰り返して、甲状腺の腫大、結節の有無を診ていきます。

⑤嚥下すると甲状腺が上下に動くので、気管の側壁あるいは輪状軟骨の両側に母指をおいて嚥下させると小さな腫大や結節を発見でき、甲状腺の硬さもよくわかります。

正常甲状腺は小さくて軟らかいので、通常は触れません。小さくても弾性から硬に振れれば、何らかの甲状腺疾患があると考えます。

甲状腺ホルモンの合成

〇甲状腺ホルモンの種類

生理学的に活性のある甲状腺ホルモンには、サイロキシン(T4)3,4,3-トリヨードサイロニン(T3)という2種があります。T4は4つ、T3は3つのヨウ素原子を持っていることが名前の由来です。T4の内側のフェニル環からヨウ素原子が取り除かれた場合3,3`,5`-トリヨードサイロニンはrT3と呼ばれますが、これは生理学的活性を持っていません。

T4は基本的に甲状腺そのもので産生されます。一方、T3はT4を脱ヨウ素化することで産生され、その部位は甲状腺に限らず肝臓など多彩です

〇甲状腺ホルモンの合成

甲状腺での甲状腺ホルモンの合成は、下記の機序で行われます。

①ヨウ素イオンが血中からNa+/I-共輸送体により甲状腺濾胞細胞内に取り込まれる

➁ヨウ素イオンが拡散により甲状腺濾胞細胞の頂点に移動する

ペンドリンを介してヨウ素がコロイド内に輸送される

④TPOにより無機ヨウ化物がヨウ素へと酸化され、コロイド内のサイログロブリン内のチロシン残基に取り込まれる。これにより、まずヨウ素を1つ含んだモノヨードチロシンとヨウ素を2つ含んだジヨードチロシンが産生される。

⑤TPOにより、ジヨードチロシンを2つ結合しT4が、モノヨードチロシンとジヨードチロシンが1つずつ結合しT3が合成される。

⑥エンドサイトーシスによりコロイドから甲状腺濾胞細胞に、モノヨードチロシンやジヨードチロシン、T3やT4を含むサイログロブリンが取り込まれる。サイログロブリンは分解される。

⑦T3とT4は血中に放出される。

⑧残ったモノヨードチロシン、ジヨードチロシンは脱ヨウ素化され、ヨウ素イオンは再利用される

甲状腺ホルモンの調節

甲状腺ホルモンは2つの方法で調節されています。

①TRH-TSH系による甲状腺におけるT3、T4の生合成、分泌の調整:

TSHは下垂体前葉で合成される糖タンパク質です。T4、T3のわずかな変化によって増減し、このTSHの厳密に制御された分泌によって甲状腺ホルモンは非常に狭い範囲内に維持されています。

また、TRHは視床下部で産生される蛋白質です。こちらもT4、T3によって増減します。下垂体前葉に作用し、ホスホリパーゼC-ホスホイノシチド経路の活性化を介してTSH分泌を刺激します。

➁栄養状態や疾患による、甲状腺外でのT4→T3の変換の調整:

肝臓など、甲状腺外でのT4-5`脱ヨウ素酵素によってT4→T3の変換が行われています。生理活性はT4よりもT3の方が高いため、甲状腺ホルモンが働く上でこの反応は重要といえますが、この酵素の活性は多くの要因によって変化します。飢餓状態、糖尿病、甲状腺機能低下症、尿毒症、プロピルチオウラシルグルココルチコイドβ遮断薬、rT3の増加など、複数の要因によって活性が低下します。一方、甲状腺機能亢進症、グルコース、インスリンの血中濃度上昇及び高カロリー摂取によって増加します。

参考

・Up to date

https://www.uptodate.com/contents/thyroid-hormone-synthesis-and-physiology?source=mostViewed_widget#H2

・甲状腺疾患診療パーフェクトガイド 改訂第3版 診断と治療社