アルツハイマー型認知症とは
概念
アルツハイマー型認知症は、病理学的に神経原線維変化とアミロイド沈着の2つを特徴とするアルツハイマー病によって、大脳皮質、海馬、前脳底部で神経細胞死、シナプス減少、アセチルコリン低下が起こり、認知症を発症した段階と定義されます。
主要症状は緩徐進行性の出来事記憶障害に始まる記憶障害と学習の障害が典型的で、失語、遂行機能障害、視空間機能障害と人格変化などの社会的認知機能の障害に進展していきます、
病態
常染色体遺伝性アルツハイマー病ではAPP、PSEN1、PSEN2に多数の遺伝子変異がみられ、いずれの変異もAβ42産生亢進を起こすことが明らかにされています。Aβの産生増加、輸送、代謝の低下により、形成されたAβ凝集体がシナプスを傷害し、神経原線維変化と神経細胞死を誘発し、認知症を発症する機序が推定されています。これをAmyloidβ-tauopathyカスケード仮説と呼称します。
疫学
アルツハイマー型認知症は世界的に推定4700万人が罹患しているとされています。
ほとんどの先進国で年齢調整された有病率は5-7%の範囲です。
2010年代前半の全国庁舎では、アルツハイマー型認知症は全認知症のうり67.6%を占め最多です。加齢がリスクとされ、60歳以降、10年ごとに発症率は2倍になっていきます。
症状
記憶障害:初期は前向性健忘が主体です。MMSEで「さくら、ねこ、電車」の再生が不良になる点が特徴的です。正常老化では十分な病識を有する一方、アルツハイマー型認知症は病識に乏しいです。
見当識障害:時間→場所→人の順に障害されることが多いとされます。
初診時にMMSEを評価することが多いと思いますが、前向性健忘+時間の見当識障害の所だけを失点するのが初期のアルツハイマー型認知症に特徴的といえます。
その後、遂行機能障害、視空間認知障害、執行などの皮質症状が出現し広がりをみせていきます。
錐体外路症状やミオクローヌス、けいれん発作など明らかな神経症候を認める場合は他疾患を疑う必要があります。
診断
診断基準
NIA-AAによる診断ガイドラインによれば、ほぼ確実なアルツハイマー型認知症として以下の診断基準が提唱されています。
認知症があり、
A.数か月前から年余に緩徐進行
B.認知機能低下の客観的病歴
C.以下の1つ以上の項で病歴と検査で明らかに低下
a.健忘症状、b.非健忘症状:失語、視空間認知、遂行機能
D.以下の所見がない場合
a.脳血管障害、b.レビー小体型認知症、c.前頭側頭型認知症、d.進行性失語症、
e.その他の内科・神経疾患の存在、薬剤性認知機能障害
検査
血液検査で最低限甲状腺機能、電解質、ビタミンなどは確認しておきましょう。
頭部CT、MRIでは側頭葉の萎縮を認めますが、非特異的な所見です。画像診断のみでアルツハイマー型認知症と診断するのではなく、病歴を重要視しましょう。
その他、遺伝子検査、髄液検査、脳血流SPECT、アミロイドPET検査などがありますが、専門的な内容ですので割愛させて頂きます。
治療
アルツハイマー型認知症に対する治療薬については意見がわかれる所です。
アルツハイマー型認知症に限っては薬物治療により進行が有意に抑制されることが証明されており、ガイドライン上は投与が推奨されています。あくまで進行を遅らせるだけであり、アルツハイマー型認知症の病態を改善するわけではないことに注意が必要です。漫然と継続するのではなく、効果がなさそうであれば早期に中止、その他の薬剤への変更を検討しましょう。
基本的にはドネペジルを使用しますが、興奮性や行動障害など、周辺症状が強い場合はメマンチンを使用します。
参考
・認知症疾患診療ガイドライン2017 日本神経学会
・神経内科がわかる、好きになる レジデントノート増刊号
・medicina 60巻2号 慢性診療のお悩みポイントをまとめました
・医学事始
・up to date