高齢者総合機能評価(CGA)とは?
高齢者は多くの場合、複数の身体的な問題を抱えている上、さらに精神的や社会的な問題が複雑に絡み合うことで、医学的な介入が難しくなることがよくあります。
高齢者総合機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment: CGA)は、高齢者の健康状態を包括的に評価するためのツールであり、身体的、精神的、社会的な機能を多角的に分析し、個別化された介護・治療計画を立てるために用いられます。
高齢者の診療にCGAを活用することにより、
①健康状態を包括的に把握できる
➁認知症、うつ病、転倒リスクなど、早期発見と介入が可能となる
③多職種の連携による、全体的なケアの質が向上する
といった効果が期待できます。
CGA7について
CGAでは、意欲、認知機能、ADL、抑うつに加え、社会的背景の評価を行うことが一般的です。いきなりそれぞれの項目を詳しく評価していくことは現実的ではないため、まずはCGA7というスクリーニング検査を行うことが推奨されています。
ここで引っかかった項目に対し、より詳細な総合機能評価を実施していくことになります(Vitality indexやBarthel indexも紹介しようと思いましたが、作図の労力を考慮し断念しました。スミマセン…。興味があれば調べてみてください。)。
なお、CGA7をいきなり行うと、患者さんが尋問されているように感じてしまうことがあります。事前によく説明の上、患者さんの心情に寄り添いながら実施するようにしましょう。
CGAはどのように行うべき?
CGA(高齢者総合機能評価)は、すべての高齢者に対して実施する価値があるとされていますが、外来診療の限られた時間内で全員に実施するのは現実的ではありません。個人的な見解としては、患者さんの健康状態や生活状況に大きな変化が見られたとき、または診療で困難を感じたタイミングで行うのが適切だと考えます。
例えば、
①入院や手術が必要になったとき
➁新たな健康問題が現れたとき(転倒後、認知機能の低下、うつ状態など)
③高血圧症や糖尿病など、慢性疾患の管理が難しくなったとき
④在宅ケアの見直しが必要なとき
などがCGAを実施する良い機会となるでしょう。
また、CGAによって明らかになった問題に対しては、医学的な介入だけでは対処が難しいことが多く、患者さん本人に加えて家族のサポートが不可欠です。さらに、ケアマネージャーや訪問看護師など、多職種との連携が求められることもあります。CGAを契機に、患者さんのQOLを向上させるため、柔軟なマネジメントを行っていきましょう。
参考
1) 高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024 日本老年医学会など 南山堂
2)外来・病棟でのマルチモビディティ診療 石丸裕康 金芳堂