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Thymoma-associated multiorgan autoimmunity(TAMA)

胸腺は一次リンパ器官の一つであり、T細胞が成熟する臓器です。

正常胸腺では、まず最初に異物を認識できる能力を持ったT細胞が選択され(positive selection)、その後に自己抗原を認識しない能力を持ったT細胞が選択されます(negative selection)。positive selectionとnegative selectionの両方をクリアしたT細胞のみが成熟し、それ以外のT細胞は淘汰されます。

胸腺腫は胸腺から発生する縦隔腫瘍です。胸腺腫では、正常胸腺と比較すると微小環境に異常があり、Tリンパ球の成熟に支障をきたします。特にnegative selectionがきちんと行われないため、自己抗原に反応するTリンパ球が淘汰されず、それらが末梢組織中に漏れ出てしまいます。

また、末梢組織で自己抗原反応性T細胞の機能を抑制する制御性T細胞の産生も低下することが報告されています。

このため、胸腺腫の患者では全身での異常な自己免疫反応が惹起され、結果として種々の自己免疫性疾患が合併することになります。具体的には、全体の30-44%に重症筋無力症が合併するとされ、その他にも低γグロブリン血症、赤芽球癆、全身性エリテマトーデス、心筋炎といった疾患との関連も示唆されています。

Thymoma-associated multiorgan autoimmunity(TAMA)は、日本語に訳すると胸腺腫関連多臓器自己免疫となります。その名の通り胸腺腫に合併し、自己免疫的機序による種々の臓器障害を呈する腫瘍随伴症候群の一種です。

典型的には移植片対宿主病(GVHD)に類似した皮膚症状に加え、肝機能障害、腸炎、甲状腺機能異常を呈します。

TAMAは1995年にKornackiら1)によって胸腺腫にGVHD様の腸炎を合併する症候群として最初に報告され、その後、Waldheraら2)によって、皮膚をはじめ消化管や肝胆道系を標的とした組織障害を引き起こす、病理組織学的にGVHDに類似した病態として定義づけられました。

胸腺腫に加え、全身の紅斑、表皮剥脱といった強い皮膚症状を見たら本症を疑うことになりますが、胸腺腫に対する化学療法中に発症することもあるため、SjSを始めとする薬疹との鑑別が問題になることが多いようです。また、皮膚症状が類天疱瘡、天疱瘡と類似しており、鑑別が難しい場合があります。

文献3より引用

これまで20症例程度の症例報告がありますが、術後再発や残存病変を有する進行期例が大多数です。

高容量のコルチコステロイドの投与で一時的に皮疹や下痢症状の改善が得られるようですが、減量や胸腺腫自体の進行によって再燃することが多いようです。

進行した胸腺腫自体の予後が悪いことに加えて免疫抑制療法に伴う易感染性の影響を受け、TAMAは予後不良であるという報告が目立ちます。

胸腺腫に対する手術や化学療法によりGVHD様症状が消退・改善する報告が散見され、腫瘍量を減ずることでTAMAの病態制御を図ることができる可能性が示唆されています。

このため、胸腺腫瘍+皮膚症状というプレゼンテーションの患者が受診した際は、TAMAを念頭に胸腺腫の診断をつけ、早期に胸腺腫への治療介入を行うことが重要といえます。

1)J Am Acad Dermatol 57:683-689, 2007

2)Am J Surg Pathol 19:224-228, 1995

3)BMJ Case Reports CP 2019;12:e229163.

・日内会誌 107:550-555, 2018