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白癬

  • 2023年11月16日
  • 2023年11月16日
  • 皮膚
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白癬の診断

白癬とは、白癬菌が趾間や足底に感染することにより、掻痒感を伴う鱗屑、角化、水疱、びらんなどが生じる疾患です。本邦での有病率は20%程度とされ、非常に頻度の高い疾患です。このため、皮膚科医に限らず、一般内科医も対応することが多々あります。

足白癬で重要なのが、最初に鏡検による確定診断をつけることです。

接触性皮膚炎、汗疱、カンジダ症、点状角質融解症、疥癬など、白癬の鑑別は多岐に渡るためです。特に疥癬は白癬同様鏡検で診断ができるため、鑑別の上で非常に有用です(疥癬に関しては感染性も強いですし、高齢者施設でしばしば発生するため、白癬の鑑別として覚えておいて損はありません)。

鏡検で糸状菌が検出できなかった場合、改めて検体採取を行い、それでも検出できなければ皮膚科専門医への紹介を検討すべきです。

患者さんの「水虫だから薬がほしい」という言葉を鵜呑みにして抗真菌薬の外用薬のみ処方する、なんてことはしないようにしましょう

KOH直接鏡検での糸状菌

ちなみに、他の検査として培養やPCRという選択肢もあるようですが、一般内科医は鏡検を覚えておけば十分だと思います。

白癬の種類と治療

頭部白癬、体部白癬といった例外もありますが、白癬は基本的には足に生じます。

足白癬で最も多いのが趾間にできるタイプです。その他、小水疱主体の小水疱型、足底の広い範囲で角化を認める角化型白癬、爪が肥厚、混濁する爪白癬といった病型もあります。

趾間型、小水疱型は外用薬のみで治癒が期待できますが、角化型白癬、爪白癬では抗真菌薬の内服が必要になります。白癬の診断がついた場合、角化型白癬や爪白癬の合併がないか、患者さんの足全体をくまなくチェックするようにしましょう。

趾間型白癬の治療の基本となるのが、抗真菌薬の外用です。角化型白癬や爪白癬を合併していたり、抗真菌薬の外用により接触性皮膚炎を起こしてしまうような症例では抗真菌薬の内服が必要となります。

外用で使用される抗真菌薬には

・アゾール系:ルリコナゾール(ルリコン®)、ラノコナゾール(アスタット®)、ケトコナゾール(ニゾラール®)など

・テルビナフィン(ラミシール®)

・リラナフタート(ゼフナート®)

があります。

薬剤ごとの優劣は特にないようなので、病院で採用のある薬剤を選択するのがよいと思います。

角化が強い場合は、抗真菌薬外用に尿素配合クリームであるケラチナミンを併用することもあります。

爪白癬への外用薬としてエフィナコナゾール(クレナフィン®)がありますが、やはり内服の抗真菌薬と比較すると効果は劣ります。

治療期間ですが、本邦のガイドラインでは趾間型は2か月以上、小水疱型では3か月以上、角化型では6か月以上を目安としています

本邦で白癬で使用される内服の抗真菌薬として、

・イトラコナゾール(イトリゾールカプセル®)

・ホスラブコナゾール(ネイリンカプセル®)

・テルビナフィン(ラミシール錠®)

があります。

いずれも肝障害、無顆粒球症などの重大な副作用があるため、定期的な血液検査は必須です。また、薬物相互作用が多いことにも注意が必要です。なお、海外ではフルコナゾールも推奨されています。

足白癬の治療において、イトラコナゾールとテルビナフィンの経口薬が同等であるというRCTが存在します1)。このため、本邦のガイドラインではいずれを用いても良いとされています。

 

イトラコナゾールはアゾール系の抗真菌薬です。重篤な副作用として肝障害、腹痛・下痢といった消化器症状があります。また、アゾール系ということで、薬物相互作用が非常に多いことが最大の難点といえます。投与法については、通常の内服法よりもパルス療法(400mg/日を1週間投与後、3週間休薬)を3サイクル行うことが推奨されています

ホスラブコナゾールは2018年に販売された新規アゾール系抗真菌薬です。イトラコナゾールと比較しバイオアベイラビリティが改善されており、爪白癬に対する完全治癒率が高い(59.4%)とされています。薬物相互作用もワルファリン、シンバスタチン、ミダゾラムなど一部に限られており、イトラコナゾールと比較すると少なくなっています。このため、本邦のガイドラインでは爪白癬に対する使用が強く推奨されています。ただし、本邦発の新薬ということで、海外では使用されておらず、エビデンスの蓄積も乏しいという点に注意が必要です。治療期間は12週間です。

テルビナフィンは副作用として重篤な肝障害、無顆粒球症、血小板減少、横紋筋融解症が報告されています。なお、アゾール系と比較して薬物相互作用は少なく、リファンピシンや三環系抗うつ薬、シクロスポリンなど併用注意薬はありますが、併用禁忌はありません。治療期間は24週が望ましいと考えられています。

いずれも甲乙つけがたく、どの薬剤を使用するかは悩ましい所ですが、薬物相互作用が少ないテルビナフィンが比較的使いやすいかなと思います。

処方例:

イトリゾールカプセル® 50mg 8カプセル 分2 1週間内服・3週間休薬を計3サイクル

ネイリンカプセル®100mg 1カプセル 分1 12週間内服

ラミシール錠®125mg 1錠 分1 24週

1)Int J Dermatol. 1998 Feb;37(2):140-2.

・日本皮膚科学会皮膚真菌症ガイドライン 2019

・UpToDate

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