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肺分画症

  • 2023年11月8日
  • 2023年11月8日
  • 呼吸器
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定義

肺分画症は下気道の稀な先天性奇形であり、「正常気管支との間に交通がなく、周囲から隔絶された肺葉構造を有する組織=分画肺が存在すること」と「分画肺が体循環系から血液供給されていること」の2つにより定義されます。

頻度は稀であり、下気道の先天異常が10,000-35,000人に1人とされていますが、そのうち肺分画症は0.15-6.4%程度に過ぎないとされています。ある報告では、大学レベルで年に1件経験するかどうかという頻度と言われています。

一般に、肺内型肺外型の2つのサブタイプに分類されています。

肺内型の特徴

肺内型は肺分画症全体の75%を占めています。正常肺葉内に位置し、固有の臓側胸膜持たず、正常肺と連続しています。このためコーン孔を介し正常肺と繋がっており、細菌が侵入することで肺炎を繰り返すことが最大の特徴です。なお、正常な気管・気管支と連続していることは本来はありませんが、感染の影響で交通をきたすこともしばしばあります。

肺のどの部分にも発生する可能性がありますが、全体の98%が両肺下葉のS10に発生します

動脈は下部胸部大動脈または上部腹部大動脈から供給され、静脈は左心房に流出します。

肺外型と比較すると小さく、合併奇形も少ないため、新生児期に発見されないことが多いです。

反復感染を契機に20歳までに半数が診断されますが、裏を返せば残りは成人になってから発見されるということです

肺外型の特徴

肺外型は肺分画症の25%を占めています。正常肺の外に位置し、独自の臓側胸膜を有しており、“隔離”された状態です。肺内型と異なり、コーン孔による連続がないため、通常肺炎は起こしません。こちらも正常な気管・気管支との連続はありません。

左下葉と横隔膜の間が好発部位とされます。

動脈は胸部大動脈から供給されることが多く、静脈系は右心房、大静脈、奇静脈など様々です。

肺内型と比較すると大きく、分画肺の圧迫による呼吸困難や心不全をきたします。また、半数以上に横隔膜ヘルニアや心奇形を合併します。このため、肺内型と異なり新生児期に発見されることが多いです

大きい物は妊娠中の超音波検査で出生前に診断されます。

出生時は多くは無症状ですが、病変が大きいと呼吸不全、心不全を呈します。

前述の通り、肺内型は新生児期に発見されず、感染を繰り返します。下気道感染による発熱、湿性咳嗽に加え、喀血をきたすこともあります

 

無症状のことも多く、成人では健診による画像検査で偶然指摘されることもあるようです。

胸部X線写真では、分画肺は胸腔または肺実質内に境界明瞭な腫瘤影が見られます。

radiopaediaより

CTでは、実質性の軟部腫瘤として認識されます。

基本的に正常肺のような含気はありませんが、肺内型の場合は慢性感染により空気を含み、多房性嚢胞性病変に見える場合もあります。また、大動脈を中心とした体循環からの流入血管が同定できます

肺内・肺外の判断は画像では困難である場合も多いです。

3D構成を行うことで血管構造等を描出でき、肺内・肺外の病型分類の判断や術前評価に役立ちます。

 

radiopaediaより

成人では肺癌肺膿瘍肺動静脈奇形との鑑別が重要です。

肺癌と比較すると境界が明瞭であり、流入血管が存在するため、多くは画像で鑑別が可能です。

感染を繰り返し多房性嚢胞性病変となっている場合は純粋な肺膿瘍との判別が難しい場合もあります。

 

最終的な確定診断は外科的切除後の病理検査によって行われます。

小児の場合、基本的には手術を行います。

成人の場合、手術を行うべきかのコンセンサスはありませんが、肺内型で有症状の場合は積極的に手術を検討します。

 

肺内型では肺葉切除となることがほとんどですが、肺外型では正常肺と分離しているため、比較的低侵襲に手術を行うことができます。いずれの場合も、事前に血管構造を把握し、慎重に処理を行う必要があります。

症例報告レベルですが、カテーテルによる塞栓術が行われることもあるようです。

・UpToDate

・新 胸部画像診断の勘ドコロ 高橋雅士 MEDICAL VIEW

・Radiopaedia

https://radiopaedia.org/articles/pulmonary-sequestration?lang=gb