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書籍紹介:アウトカムを改善するステロイド治療戦略

どのような本か

今回紹介するのは『新装改訂版 アウトカムを改善するステロイド治療戦略 日本医事新報社』です。

編者は東京ベイ・浦安市川医療センターの膠原病内科医長である岩波慶一先生です。

「最小限の副作用で、最大限の効果を得る」というコンセプトの下でステロイドの使い方がまとめられています。

膠原病、消化器、呼吸器、腎臓、神経、血液、集中治療、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科と各分野別にパートが分かれており、それぞれの分野のエキスパートがステロイドの使用法について解説しています。当然ですが膠原病分野のウェイトが大きく、全体の1/3程度を占めています。

ページ数は356ページで、私は合計5時間程度で通読することができました。

読んでみた感想

結論から申しますと、私にとっては大変勉強になる一冊でした。

私も呼吸器内科医として勤務している際、主に間質性肺炎に対してステロイドを使用することが頻繁にありました。ただ、ステロイドというと長年使用されている割には開始用量や減量方法に関するエビデンスが乏しく、各施設やエキスパートによって使い方が異なることが多いです。また、呼吸器内科は症例数の面から知識・経験が肺癌や感染症の分野に偏る傾向があり、免疫学の知識を背景とする間質性肺炎がどうしても手薄になりがちです。私の場合もそういった点に戸惑いを覚え、ステロイド治療についてはかなりの苦手意識がありました。

この本では、ステロイド治療や免疫抑制薬の基礎知識についてまず触れられており、ざっくりと全体像を見渡すことができます。その上で各論に入っていくわけですが、ステロイドの使い方(開始基準や初期用量など)だけではなく、やめ方(減量の指標や減量速度、中止の是非)という「出口戦略」に重きを置いている点が特徴です。

また、現在はどの分野でも『steroid sparing agentを活用して如何にステロイドへの依存度を少なくするか』という点が注目されています。本書はステロイド一辺倒ではなく、免疫抑制薬や抗体薬といった『steroid sparing agent』についても数多くの言及がされており、ステロイドに依存しない治療方法を体系的に学ぶことができます

自分が診療に携わる分野はもちろんですが、その他の領域も読んでみることをお勧めします。当然分野・病態によってsteroid sparingについての考え方が異なるわけですが、「へー、この分野はこんな風に工夫してステロイドを使っているのか!」と膝を打つことが多々あり、免疫学全体に対する理解が深まりました。

コンセプトにもあるように、単なる『ステロイドに関する本』ではなく、『ステロイドを最小限の副作用で、最大限の効果を得るための本』といえると思います。

どのような人にオススメするか

ステロイドによる治療を行うことがある医師すべてにオススメできる良著だと思います。

特に膠原病に興味のある若手の先生には必携でしょう。年次の高い膠原病内科の先生には簡単過ぎるかもしれません。

また、呼吸器内科や消化器内科など、膠原病内科ほどステロイドの使用経験がない科の医師には学年問わず推奨できます。少しでもステロイドの使い方に自信がないと思うのであれば是非手に取って頂きたい、オススメの一冊です。