今回は器質化肺炎についてまとめです。呼吸器診療から離れて久しいのですが、器質化肺炎はたまに外来でも見ることがあります。疑う上で、“抗菌薬で改善しない肺炎”、“陰影の移動する肺炎”、“喀痰の乏しい肺炎”といったところがキーワードになってきます。self limitedな経過を辿る場合もあり、症状が軽い場合は介入すべきなのか悩ましい所です。また、ステロイド治療を導入したとしてもtaper時に容易に再発してしまうので、扱いにくいことこの上ない疾患です・・・。なかなか実態の捉えにくい器質化肺炎ですが、少しでも皆さんの参考になれば幸いに思います。
疫学
器質化肺炎(organizing pneumonia:OP)は比較的稀な疾患であり、正確な有病率・発症率は明確ではありません。報告によって差はありますが、人口10万人あたり年間1例程度とされています。
発症年齢は50〜60歳代が中心で、小児では稀です。喫煙との明確な関連は指摘されていません。
また、器質化肺炎は、
・原因不明の特発性(cryptogenic OP:COP)
・感染、薬剤、膠原病などに伴う二次性(secondary organizing pneumonia:SOP)
に分けて考える必要があります。
なお、代表的な二次性器質化肺炎の原因は以下の通りです。
・器質化期のびまん性肺胞障害
・膠原病 (関節リウマチ、 Sjögren症候群など)
・感染症
・臓器移植
・薬剤性(免疫チェックポイント阻害薬、抗菌薬、アミオダロンなど)
病態
器質化肺炎は、肺胞上皮の障害に対する修復反応として生じる病態です。
肺胞上皮の障害後、
・フィブリン沈着
・炎症細胞の流入
・線維芽細胞の増殖
が起こり、最終的に肺胞内に肉芽組織(Masson体)が形成されます。

これだけだとイマイチわかりにくいのですが、要するに細菌やウィルスによらない、内因性の肺炎と言い換えることができます。 間質性肺炎の一種ですが、他の間質性肺炎が間質(肺胞壁など)を炎症の主体とする一方、器質化肺炎は肺胞内に肉芽が充満するような病理像をとります。この病理像が画像所見にも反映される訳ですが、この点は後述します。
臨床所見
典型的には、数週間〜数か月の経過で
・咳嗽
・呼吸困難
・発熱
・全身倦怠感
などが出現します。
これらは非特異的であるため、臨床的には、
・抗菌薬に反応しない
・喀痰が乏しい
・経過がやや長い
・全身状態が比較的良い
といった、“細菌性肺炎としての違和感”が器質化肺炎の診断において重要となります。
画像パターン
器質化肺炎の画像パターンをまとめると、以下のようになります。
・中下肺野領域に有意な斑状影であり、気管支血管束に沿うか、または胸膜下優位に分布する症例が6-8割の症例に認められる。
・隣接する正常領域との境界が陰影側に凹であり、容積減少を伴う。
・陰影内部には牽引性気管支拡張を認めることがあるが、中枢側の気管支拡張像は通常伴わない。
・小葉辺縁性分布は6割に認めるが、これは小葉間隔壁や胸膜直下の二次小葉辺縁を縁取るように気腔内器質化物の貯留を反映したものである。
・20%程度に中心のスリガラス影を取り囲むように周囲の高吸収域を認めるreversed halo signを認める。
・30-50%の症例で1-10mm大の結節影が報告されている。
色々と書きましたが、症例と時相によって様々な画像パターンを取りうるため、画像だけで器質化肺炎と診断することは困難です。
また、先述した通り、肺胞を炎症細胞、肉芽組織が充満するように進展していくため、通常の細菌性肺炎と同様に浸潤影や腫瘤影など、みずみずしい画像所見をとるという特徴があります。この点は他の間質性肺炎が間質影(スリガラス影や網状影など、ガサガサした水分を含まない影)を示すことと大きな差異であるといえます。よって、初見では細菌性肺炎と区別が付かないことも多々あり、抗菌薬への反応性など、経過を含めて総合的に判断していく必要があります。
なお、具体的な画像所見については、以下のwebサイトを参照いただくのがよいと思います。
診断
器質化肺炎の確定診断は、気管支鏡による肺生検で行われることが多いです。
ただし、実臨床では気管支鏡へのハードルが高いことも多く、
・抗菌薬無効
・典型的画像
・他疾患の否定
が揃えば、臨床診断で治療に進むことも少なくありません。
また、特発性と二次性の鑑別も併せて行っていく必要があります。
以下、各種検査について概要を述べます。
■血液検査
・基本的には非特異的な所見が多い。
・CRP、赤沈、白血球数などの炎症マーカーの上昇はよく見られる。
・膠原病関連の自己抗体(抗核抗体、リウマチ因子、抗CCP抗体、CK、ANCAなど)を提出し、二次性OPの検索を行う。
・慢性好酸球性肺炎の場合、末梢血好酸球数が増多していることが多い。
■呼吸機能検査
・拘束性障害とDLcoの低下を認めるが、1/4の症例では呼吸機能検査は正常となる。
■画像検査
・前述の別項を参照。
■気管支肺胞洗浄
・器質化肺炎が疑われる場合、好酸球性肺炎や肺胞出血、感染といったその他の疾患を除外するためにBALの施行が推奨される。
・器質化肺炎では著明なリンパ球増加と、わずかな好中球と好酸球数の増加が認められることが多い。
・極端な好酸球の上昇や細菌の検出があれば他疾患を疑う根拠となる。
■病理学
・肺胞腔と肺胞管、細気管支内にゆるい結合組織からなるポリープ(マッソン小体)を認めるが、肺の基礎となる構造は保持される。
・リンパ球の浸潤など、軽度の炎症所見を間質に認めることはあるが、著明な間質性慢性炎症や形成不良の肉芽腫などを認める場合は器質化肺炎以外の疾患を考慮するべきである。
鑑別診断
器質化肺炎と鑑別すべき疾患として重要なのは、
・慢性好酸球性肺炎
・肺癌・リンパ腫
・感染症(非定型含む)
・他の間質性肺炎
などです。
特に慢性好酸球性肺炎は画像分布が類似しており、鑑別が難しい代表例です。慢性好酸球性肺炎では末梢血好酸球数が増多していることが多いため、血液検査をしっかり確認しておくのがよいでしょう。
治療
器質化肺炎の治療ではランダム化前向き試験が実施されていないため、経験的治療が中心となります。
糖質コルチコイドは最も一般的な治療であり、低酸素血症がある場合に考慮されます通常の開始用量はPSL 0.5-1.0mg/kgであり、最大で60mgを経口投与します。初回投与用量を2-4週間継続し、治療反応性に応じて4-6か月かけて0.25mg/kgずつ漸減し、さらに6-12か月かけてoffとする、というレジメンで行われることが多いでです。
再発は1/4で生じるとされ、通常は最初の一年に起こります。また、PSL 15mg以下に減らしたときが最も起こりやすいとされます。
糖質コルチコイドへの反応性が悪い場合、他の免疫抑制薬を使用することもありますが、専門的な内容となるため割愛します。
器質化肺炎はself-limitedで勝手に治ってしまうこともあるため、“どのタイミングで治療介入するべきか”、という点は悩ましいところです。
私の場合、
・呼吸不全がある
・本人の自覚症状が強い
・画像で病変が大きい
・炎症反応が非常に高く、消耗している
といった点を参考とし、治療や専門家への紹介について判断をしています。
まとめ
以上、器質化肺炎についてまとめてきました。最重要ポイントとしては、やはり細菌性肺炎との鑑別になるかと思います。“肺炎っぽいけど、何かがおかしい…”という違和感を、しっかり言語化していくことが診断のスタートとなることを覚えておきましょう。
本記事が、「器質化肺炎…、よく聞く疾患だけど、イマイチ全体像がわからない…」という初学者の一助となればうれしく思います。そうはいっても理解が難しい疾患であることは間違いないですから、悩むようなら早めに専門医に紹介するのがよいと思われます。
参考
・UpToDate
・N Engl J Med. 2022 Mar 17;386(11):1058-1069.
・特発性間質性肺炎の診断・治療ガイドライン 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会 https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/043030179j.pdf