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肩関節の診方

  • 2023年8月21日
  • 2023年8月22日
  • 整形外科
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肩関節の解剖

肩甲骨の関節窩と上腕骨頭が作る、多軸性の関節を肩関節(正確には肩甲上腕関節)と呼びます

肩甲骨の関節窩は浅く小さいため、安定性には欠けますが、その一方で可動性は非常に大きく、人体で最大の可動域を持っています。肩関節は単独でも広い可動域を持ちますが、ここに肩甲骨が胸郭上で位置を変えることにより、さらに上腕骨の可動域が拡大します。

腹側から見た肩関節
背側から見た肩関節

肩関節単独では安定性に欠けますが、これを補っているのが回旋筋腱板(ローテーター・カフ)です。回旋筋腱板は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋からなっており、それぞれが肩甲骨から起始し、前者3つは上腕骨大結節に、肩甲下筋は上腕骨小結節に停止します。

イメージとしては、

・肩関節上方:棘上筋

・肩関節前方:肩甲下筋

・肩関節後方:棘下筋、小円筋

というように筋が走行しています。

背側からみた回旋筋腱板
外側から見た回旋筋腱板

なお、各筋の腱は上図のようにくっきりと分離しておらず、特に棘上筋-棘下筋-小円筋については実際には連続していることが多いです。

肩関節の動作には上記4つの筋以外にも、三角筋や広背筋、大円筋などの複数の筋が関与しています。以下に肩関節の運動と関連する筋をまとめます。

また、このように肩関節には筋や腱といった構造が集中しているため、その緩衝材として複数の滑液包が存在しています。下図では三角筋下滑液包肩峰下滑液包は分けていますが、実際には連続しており両者に交通があるようです。臨床的に重要なのもこの2つの滑液包になるので覚えておきましょう。

肩関節の診察法

触診

まず最初に、肩を体系的に触診し、左右差を確認します。頸椎由来の疾患を除外するために、最初に頸部に近い部分から触っていきましょう。

一般に、下記の構造物を意識して触診を進めていきます。

・頸椎

・胸鎖関節と鎖骨

・肩甲骨と隣接する筋(僧帽筋、棘上筋、棘下筋、三角筋)

・肩峰、肩峰下腔、肩鎖関節

・二頭筋溝と上腕骨の大結節および小結節

特に重要なのが、肩峰下腔の触診です。肩峰下腔とは、肩峰よりやや尾側、三角筋の下の空間を指しますが、この部分には三角筋下滑液包、肩峰下滑液包、棘上筋腱といった構造物が存在しています。非特異的ではありますが、この部分に圧痛がある場合にはインピジメント症候群、腱板断裂、肩峰下滑液包炎といった疾患が疑われることになります。

UpToDateより

肩関節を伸展させることでより触診しやすくなります。

UpToDateより
関節可動域(ROM)

他の関節同様、関節可動域(ROM)の確認は重要です。肩関節の屈曲、伸展、内転、外転、内旋、外旋と、包括的に評価を行っていきます。

一般的には患者さんに能動的に肩関節を動かしてもらい、その後に検者による受動的な診察に移りますが、安静時でも痛みが強い場合は受動的な診察を優先します。

頻度の高い肩関節疾患として凍結肩と腱板断裂がありますが、この二者はROMの診察で対照的な所見を示します。能動的にも受動的にも肩関節の動きが制限されている場合は凍結肩を、能動的には動かすことができないが受動的な制限がない場合は腱板断裂を疑うことになります

回旋筋腱板の評価

回旋筋腱板損傷/断裂は肩関節の疼痛をきたす疾患の中でも頻度が高いです。正確な診断をするために、腱板それぞれの評価を行えるようにしておきましょう。まず、最初に提示した下図をもう一度確認してください。

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腱板の付着部と、筋の関与する肩関節の動作をまとめると、

・棘上筋:肩関節の上方にあり、主に外転に関与

・棘下筋/小円筋:肩関節の後方にあり、主に外旋に関与

・肩甲下筋:肩関節の前方にあり、主に内旋に関与

ということになります。これを踏まえて、それぞれの身体診察を見ていきましょう。

棘上筋の評価

まず、下の写真のように患者さんに両上肢を90°外転し、さらに前側に30°屈曲してもらいます。その上で、検者が患者さんの両腕を頭側から押し、その力に抗するように肩を外転してもらいます。三角筋のMMTを測定するときのイメージです。

さらに、下図のように親指を尾側に向ける肢位(前腕を回内する)をとらせます。こちらも同様に検者が患者さんの両腕を頭側から押し、その力に抗するように肩を外転してもらいます。

これを“empty can test(空き缶テスト)”と呼びます

もし上記の手技の中で、肩関節の外転保持困難や疼痛を生じた場合に棘上筋腱の障害を疑います。

棘下筋/小円筋の評価

棘下筋/小円筋の評価は、下図のような“External rotation test”で行います。まず、患者に前腕を回外した上で90°屈曲してもらいます。この肢位から患者さんに肩を外旋してもらい、検者はそれに抗するように力をかけます。

この手技の中で肩関節の外旋保持困難や疼痛を生じた場合に棘下筋/小円筋の障害を疑います。

肩甲下筋の評価

肩甲下筋の評価は“Lift off test”で行います。下図のように、患者さんに肩関節を伸展/内旋/内転、肘関節を屈曲してもらい、腰に掌が当たるような肢位をとってもらいます。この肢位から肩関節をさらに内旋させ(掌が腰から離れる方向に動かす)、検者はそれに抗するように力を加えます。

この手技の中で肩関節の内旋保持困難や疼痛を生じた場合に肩甲下筋腱の障害を疑います

以上、回旋筋腱板の評価を解説してきました。

まとめると、

・棘上筋→empty can test

・棘下筋/小円筋→external rotation test

・肩甲下筋→lift off test

というように筋と手技を対応させて評価を行うことになるわけです。

インピジメント症候群の評価

肩インピジメント症候群とは、肩甲骨(肩峰や烏口突起)と上腕骨(大結節や小結節)の間で衝突(インピジメント)が起こり、その間に肩峰下滑液包や回旋筋腱板(主に棘上筋)、靭帯といった組織が挟み込まれることで炎症をきたす疾患です。主に肩の外転、屈曲など、腕を頭より高く上げた時に痛みが走ります。

インピジメント症候群評価は、

・Neer`s test

・Empty can test

・Hawkins-Kennedy Test

の3種の身体診察で行います。

Empty can testは既に紹介した通り、棘上筋の評価を行うものになります。

Neer`s testとHawkins-Kennedy Test

この2つの身体所見はいずれも肩峰下滑液包の疼痛誘発テストです。肩が上まで挙がる人に行います。(インピジメント症候群は腕を上に挙げることでインピジメントが起こって発症する疾患ですので、そもそも腕が挙げられない場合、腱板断裂や凍結肩など、他疾患の可能性が高くなります。)

Neer`s testは前腕を回内してもらい、検者が受動的に頭の上まで肩関節を屈曲させます。痛みがあればインピジメント症候群を疑います。

Hawkins-Kennedy Testは、下図のように肘を屈曲させて上で肩関節を90°水平に内転させます。検者は一方手で肩峰を、他方の手で上腕遠位部を把持します。その上で、上腕遠位部を把持した手で肩関節を内旋させ、その際に肩峰が挙上するのを抑制します。疼痛が生じた場合、インピジメント症候群を疑います。

以上、肩関節の診察についてまとめてみました。

これ以外にも、上腕二頭筋長頭腱、肩鎖関節、肩関節唇の評価法などもありますが、まずは頻度の高い回旋筋腱板損傷/断裂、凍結肩、肩インピジメント症候群あたりの診察が最低限できることを目標に身体所見をピックアップしてみました。一般内科外来で肩痛を訴える方は結構多いので、内科医もある程度は評価できた方がいいと思います。

今後は各論としてそれぞれの肩疾患や関節内穿刺/注射についてまとめていければと考えています。

参考

・Gノート 整形診療 for プライマリ・ケア診療所 羊土社

・UpToDate

https://www.uptodate.com/contents/physical-examination-of-the-shoulder

・Standord Medicine How to conduct a shoulder exam

https://stanfordmedicine25.stanford.edu/the25/shoulder.html