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パーキンソン病

  • 2024年4月3日
  • 2024年4月3日
  • 神経
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パーキンソン病は中脳黒質神経細胞の脱落により脳内(線条体)でのドパミン低下が起こり、振戦・無動・筋強剛・姿勢保持障害といった運動症状をきたす神経変性疾患です。薬物治療が複雑であるため専門医が診療していることが多いと思われますが、比較的有病率が高いため、一般内科医も知っておくべき疾患と言えます。

 

今回はパーキンソン病について概説しつつ、プライマリケアの設定における本疾患の位置づけを見ていきたいと思います。

 

 中脳黒質のドパミン神経細胞の変性がパーキンソン病の主病態です。

 我々が手や足を動かそうとする際、大脳皮質から筋肉に向けて運動の指令が入力されますが、ここに線条体を始めとする大脳基底核を介した運動の調節が入ります。具体的には、線条体淡蒼球内節を調節し、随意運動に適度にブレーキをかけて過剰な運動を抑制します。さらに、その線条体の働きは中脳黒質からドパミンを介して調節されています。このように、中脳黒質と大脳基底核(線条体、淡蒼球)が協調して働くことにより、我々は随意運動をスムーズに行うことができているわけです。

 

 一方、パーキンソン病の患者さんでは、中脳黒質のドパミン神経細胞が脱落することによって線条体への刺激が不十分となります。これにより線条体から淡蒼球内節への調整がなくなることで、随意運動へのブレーキが過剰にかかるようになってしまい、結果として無動や筋固縮といった運動症状が顕在化してくるわけです。

 

 

 

 さて、そもそも何故中脳黒質のドパミン神経細胞が変性してしまうのか、という点ですが、これにはαシヌクレインというタンパク質の凝集が関わっていると考えられています。パーキンソン病やレビー小体型認知症では、病理学的に中枢神経でレビー小体が見られることが特徴とされますが、このレビー小体こそがαシヌクレインの凝集した構造物なのです。こうなると「αシヌクレインが何故凝集するのか?」「何故神経細胞を脱落させるのか?」と次々に疑問が湧いてきますが、キリがないため今回はここまでとさせて頂きます。

 

 パーキンソン病=中脳黒質、ドパミン欠乏というイメージがありますが、それ以外にも全身の自律神経、青斑核のノルアドレナリン神経細胞、縫線核のセロトニン神経細胞、マイネルト基底核のコリン作動性神経なども変性することが分かっています。このため、パーキンソン病では運動症状だけでなく、多彩な自律神経症状、うつ症状、睡眠障害に伴う様々な症状、認知症などの非運動症状も高頻度に合併することになります。パーキンソン病=神経疾患という理解では不足であり、全身疾患として捉え直すことが重要といえます

 

 本邦の罹患率は10-18人/10万人・年、有病率は100-180人/10万人程度であるとされており、現在の本邦でのパーキンソン病患者数は概ね20万人程度と予想されています。

 

 これまでの疫学調査結果から、除草剤や殺虫剤などの農薬への暴露や乳製品の摂取は発症を促進し、喫煙習慣、アルコール飲料やカフェインの摂取、抗酸化効果のあるとされる食品やサプリメントの摂取、運動習慣などが発症を抑制することを示唆することがわかっています。ただし、これらが影響しないという報告もあり、発症リスクと関連することが確実に証明された環境因子は今のところありません。

 

 パーキンソン病はほとんどが孤発型ですが、5-10%に家族内発症者が存在する遺伝性パーキンソン病があるとされています。単一遺伝子異常に伴うパーキンソン病は最低でも22遺伝子座が存在していますが、実際に原因遺伝子が同定されるのは20%に過ぎず、残りの80%の遺伝子は不明です。

 

 このように、パーキンソン病は遺伝要因(複数のリスク遺伝子)に環境要因(複数または単数)が加わって発症するものと考えられています。

運動症状

 主な運動症状は振戦、無動、筋強剛、姿勢保持障害です。

 

 振戦は力を抜いた時、1秒間に4-6回くらいの速さでふるえるのが特徴的で、静止時振戦と呼ばれます。歩行時に良く認められ、母指と示指をすり合わせるような動きをするため、丸薬丸め振戦とも呼称されます。本態性振戦との鑑別が問題となりますが、こちらの場合は安静時ではなく、コップを持つときなど一定の姿勢を保とうとする時(姿勢時)やコップをとろうとする時(動作時)に振戦が出現します。ただし、パーキンソン病では姿勢をとることで一旦振戦が消失するものの、10秒程度の潜時をおいて振戦が再現し、次第に強くなることがあり、この場合随意運動に激しく支障をきたします。これをre-emergent tremorと呼び、パーキンソン病に特徴的な所見です。振戦は患者さんにとって最も自覚しやすい症状であり、パーキンソン病を疑うきっかけになることも多いです。ただし、全体の20-30%には振戦がなく、必発症状ではない点に注意しましょう。

 

 動作がゆっくり、小さくなる無動も特徴的で、運動緩慢、寡動とも呼ばれ、多彩な症状を呈します。表情筋の動きがゆっくり小さくなると、一見無表情となり、仮面様顔貌と呼ばれます。字を書くとだんだん小さく右下がりとなり、拙劣になることもあります(小字症)。声が小さくなるのは構音筋に現れた無動です。流延も無動症状の一つであり、咀嚼、嚥下筋が無動となることで無意識の嚥下ができなくなるため外にこぼれてしまいます。歩行は開始に時間がかかり、すり足となり、歩幅が小さくなります。水頭症などの他のパーキンソニズムと異なり、開脚歩行はないことが特徴です。

 

 筋強剛は固縮とも呼ばれ、四肢や体幹の筋肉が硬くなってしまいます。これは自覚症状というよりも他覚的な身体所見をとる際に重要で、パーキンソン病では歯車様固縮を呈します。

 

 進行すると姿勢を保つことができず、転びやすくなります。これがすなわち姿勢保持障害です。これが出てくるとパーキンソン病の重症度分類であるHoehn and Yahr重症度Ⅲ度以上に該当します。

 

 他にもすくみ足(一歩を踏み出そうとすると足がプルプル細かく振るえ前に出せず、上体の前屈がだんだん強くなり前方に転倒してしまう)、腰折れ・ピサ症候群・首下がりといった姿勢異常といった運動症状もあります。

 

 また、振戦を含んだパーキンソン病の運動症状は、左右差を持って出現するという特徴があります。例えば、以下の図のように、右腕に始まった場合は次に右足に、右足から始まった場合は次に右腕に症状が出てきます(N字型)。

 約50%の患者が振戦を初発症状として発症し、経過中も含めると全体70-80%の症例で経験されるとされます(逆に20-30%は未経験)。約30%の症例は下肢の歩行障害に始まり、残り20%は上肢の無動に関連した症状で発症します。歩行障害についてはすり足歩行や歩行速度の低下について確認し、上肢の無動についてはボタンのかけ方やネクタイの結び方など、具体的に問診を行うとよいでしょう。

非運動症状

 パーキンソン病では運動症状ばかりが注目されがちですが、非運動症状も重要です。特に、便秘、嗅覚障害、REM睡眠行動異常といった徴候は運動症状に先行することが多いことが判明しており、パーキンソン病を疑った場合は積極的に非運動症状の有無を確認する必要があります。 

 

 パーキンソン病では自律神経障害により種々の症状を呈しますが、代表的なものが便秘です。パーキンソン病での便秘の頻度は70%であり、発症に20年程度先立っていると試算されています。頻尿も38-71%に認め、過活動性膀胱としての治療が必要となることがあります。また、パーキンソン病では血圧が低いことが多く、特に起立性低血圧による失神を呈しやすいとされています。他にも自律神経障害として発汗異常性機能障害がみられることもあります。

 

 嗅覚障害はパーキンソン病の80-90%と高頻度に合併し、5年程度運動症状に先行することが知られています。自覚症状として感じにくく、問診でコーヒーや香水、化粧水の匂いがわかるかどうかを確認するとよいです。

 

 パーキンソン病では睡眠障害を高頻度に合併し、特にREM睡眠行動異常は特徴的とされています。大体30-40%に合併するとされ、運動症状に3-11年先立って見られます。夜間に叫んだり、やたらと動き回ったりしないか家人に確認するとよいでしょう。他にも入眠障害中途覚醒むずむず肢症候群を認めることがあります。

 

 また、パーキンソン病による精神症状、認知機能障害について理解しておくことも重要です。幻覚・妄想を訴える患者は20-40%程度とされており、特に錯覚や幻視が多いとされます。うつ症状意欲減退(アパシー)を伴うこともあります。認知症は進行してから出現することが多く、運動症状が出てから大体10年後から目立ってきます。アルツハイマー型認知症のような記憶障害も呈しますが、遂行機能障害(料理をするときにどのような材料が必要か、どのような手順で行えばよいかわからない)が前景に立つことが多いです。なお、パーキンソン病と同じスペクトラムの疾患であるレビー小体型認知症は、認知症症状が運動症状に先行するか、この両者がほぼ同時に出現すると定義されており、パーキンソン病に伴う認知症とは概念が異なるため注意が必要です

パーキンソン病を早期に診断するには?

 ここまでにパーキンソン病の症状について、運動症状、非運動症状に分けて確認してきました。これを踏まえ、我々のような非専門医がパーキンソン病を疑い、早期診断に繋げるにはどのようにしたらよいのでしょうか?私としては、運動症状に先行する非運動症状に着目するということを推奨したいと思います。

  

 便秘、嗅覚障害、睡眠障害、うつ症状、意欲減退といった非運動症状一つ一つは非特異的ですが、複数重なってくる場合はパーキンソン病を疑うべきです。このような場合、運動症状について問診・身体所見を丁寧に行いつつ、REM睡眠行動障害のような比較的特異度の高い病歴を確認しにいくとよいでしょう。そういう眼でみてみると、最初は気が付かなかった小刻み歩行や振戦、仮面様顔貌といった軽度の所見も見えてくることがあるはずです。甲状腺機能低下症など、非特異的な症状を呈し、かつ有病率の高い疾患と同様、まずは閾値を低めにパーキンソン病を疑うことから初めてみましょう

 

振戦

・安静時振戦の確認

両膝に手を置いてもらい、安静にした状態で出現しないかを確認します。振戦がある場合、姿勢をとったり、随意運動を行うと通常は振戦が消失します。

 

・re-emergent tremorの確認

振戦が姿勢ないしは随意運動で消失した後、10秒後に振戦が再度出現しないか確認します。

無動

・指タップ試験

片手ずつ、できるだけ早く人差し指と親指をタップしてもらいます。パーキンソン病では大きさが小さく、速度も遅くなります。

・回内回外運動試験

前腕を回内回外してもらいます。パーキンソン病では速度が遅くなり、動作もぎこちなくなります。

筋強剛

 筋強剛は手関節と肘関節で見るのが分かりやすいです。最初に手関節を伸展、屈曲させます。肘関節は上腕の脱力が難しく、偽陽性となりやすいので注意が必要です、下肢の症状が強い場合は足関節の屈曲も確認するとよいです。パーキンソン病では筋強剛に左右差があり、がくがくと断続的な抵抗を示す歯車様の固縮を認めます。

姿勢反射障害

 患者の後ろに立ち、「これから後ろに引きますが、転びそうになったら足を後ろに踏み出して構いません」と説明し、患者の両肩に検者の手を置いて、患者が一歩を後ろに踏みだす程度の力で引きます。2歩またはそれ以上後ろに足を踏み出してしまう、またはそもそも足を踏み出せない場合に、姿勢反射障害ありと判断します。

歩行

 歩行は開始に時間がかかり、すり足となり、歩幅も小さくなります。また、パーキンソン病では進行するまでは継ぎ足歩行ができることが特徴で、できない場合は他のパーキンソニズムを示唆します。

マイヤーソン徴候

 検者が眉間を指でトントンと叩いて刺激すると、瞬目(眉間反射)が出現します。健常人では繰り返すことで慣れが生じ、瞬目がなくなりますが、パーキンソン病では減弱が生じません。実臨床では非特異的であり、認知症や脳血管障害、加齢のみでも陽性となることがあります。あくまで参考所見に留めるのがよいでしょう。

 

パーキンソン病の検査、診断は専門的であるため、ここでは簡単な紹介に留めます。

 

頭部MRI

他のパーキンソニズムとの鑑別のために行います。パーキンソン病では特異的な所見がなく、早期には脳委縮を伴わないことが多いです。脳梗塞や水頭症の有無を確認できますし、多系統萎縮症や進行性核上性麻痺では特徴的な所見を認めます。アクセスができるのであれば、MRIを行った上で専門医への紹介とする親切かもしれません

MIBG心筋シンチグラフィ

メタヨードベンジルグアニン(MIBG)はノルアドレナリンの類似物で、交感神経に取り込まれます。MIBGに目印をつけて、心臓の交感神経が正常にMIBGを取り込むかを測定し、そこから交感神経の障害を評価します。パーキンソン病では著明な取り込み低下を認めますが、他疾患では異常を示さないことが多いです。

DATスキャン

目印となる物質を含む薬剤を注射し、頭部を撮影することで、脳内に存在するドパミントランスポーター(DAT)の分布密度を画像化する検査です。密度の低下を示さなければパーキンソン病を除外することが可能ですが、多系統萎縮症などのその他のパーキンソニズムでも低下を示すため、鑑別には不向きです。

診断

現在のパーキンソン病の診断基準は、2015年に国際運動障害学会で提唱された診断基準に準拠しています。特異度は高いが感度の低い診断基準(臨床的に確実なパーキンソン病)と、感度、特異度ともに80%を超える実用的な診断基準(臨床的にほぼ確実なパーキンソン病)の2つの基準が含まれています。

 

ガイドラインより引用

 

治療に関しても専門医レベルの内容になりますので、最低限の紹介に留めます。

レボドパ製剤

 パーキンソン病では不足したドパミンを補うことが治療の根幹となります。ただ、ドパミンそのものは血液脳関門を通過できないため、その前駆体であるレボドパを投与します。レボドパは血液中の芳香族アミノ酸脱炭酸酵素により中枢に到達する前に分解されてしまうため、同時に芳香族アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬を投与することでより効率よく薬効を発揮させることができます。現在はレボドパ単剤よりも、レボドパと芳香族アミノ酸脱炭酸酵素の配合剤を使用することが多いようです。配合される芳香族アミノ酸脱炭酸酵素にはカルビドパとベンセラジドの2種類がありますが、両者の間では薬効に大きな違いはありません。

 

 レボドパ量として1回50mg、初回1-2回で開始し、初期には1回50-100mg、1日3回で維持します。その後、症状に応じて適宜維持量(通常300-800mg/日)、投与回数(3-8回)を定めます。

 

 注射用のレボドパ製剤(ドパストン®)もあり、内服できない場合には一時的に使用することがあります。その場合、内服時のレボドパ量の半量のレボドパを静注します。(例えば内服で300mg/日の場合は静注レボドパは150mg/日になる。ドパストン50mg+NS 100ml 3時間かけて静注、1日3回投与とする。)

 

 また、最近はデバイス補助療法として、胃瘻造設をしてレボドパの持続経腸療法がおこなわれることがあります(デュオドーパ®)。

ドパミンアゴニスト

 ドパミンと科学的によく似た作用の物質で、脳内ではドパミンと同じようにふるまいます。また、レボドパと比較すると長期で服用した際にwearing-offなどの運動合併症出現頻度が少ないという特徴があります。一方、効果はレボドパ配合薬に及ばず、薬価も高めです。一般的には、65歳以下発症など運動合併症の発現リスクが高い場合には、レボドパ製剤ではなく本剤での治療開始を検討します。

 

 大きく分けて麦角系非麦角系に分けられますが、麦角系では心臓弁膜症を生じることがあるため、現在は非麦角系を優先することが多いです。各々に使用上に注意すべき点があり、患者さんの社会的背景などを総合的に勘案して薬を選択していく必要があります。ドパミンアゴニスト全体として突発性睡眠という副作用があり、内服している患者さんには車の運転や高所作業を避けてもらう必要があります。

 

ドパミンエコノマイザー

 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬のように、ドパミンの利用効率を上げる薬剤をドパミンエコノマイザーと呼称します。芳香族アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬同様、末梢でのドパミン分解を抑制する薬剤としてカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬が、脳内でのドパミン分解を抑制する薬剤としてB型モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬があります。

 

ドパミン遊離促進薬

 アマンタジンは元々A型インフルエンザ治療薬として開発された薬剤ですが、パーキンソン病にも効果があることが認められ、治療薬として用いられるようになりました。ドパミン放出作用があり、軽度の運動障害治療薬として使用されます。また、高用量で用いるとジスキネジアを改善することがわかっています。

 

抗コリン薬

 脳内のアセチルコリンとドパミンの不均衡を改善し、パーキンソン病症状を改善する効果があります。特に振戦の抑制効果が高いとされており、レボドパ製剤やドパミンアゴニストで抑制しきれない場合に追加することがあります。当然、緑内障や便秘、尿閉、口渇感といった副作用に注意する必要があります。

 

ノルアドレナリン前駆物質

 パーキンソン病では脳内のノルアドレナリンも減少しているため、本薬の投与を行うことで症状が改善することがあります。低血圧による立ち眩みにも効果があり、起立性低血圧が強い症例はよい適応となります。

 

ドパミン賦活薬

 ゾニサミドは元々抗てんかん薬としてしようされていましたが、ドパミン放出やドパミン合成を促したり、神経の脱落を防ぐ効果が報告されており、進行期の患者さんで使用することがあります。

 

アデノシンA2A受容体拮抗薬

 進行期で問題となるwearing-offの改善を期待し投与される薬剤です。従来はレボドパ配合薬を工夫したり、ドパミンエコノマイザーやドパミンアゴニストを併用するなどして治療してきましたが、本剤は他の内服薬を変更することなく上乗せするだけでwearing-offを改善するとされています。

 

外科的治療

 症例によっては深部刺激療法という外科的治療が適応となることがあります。すべての患者さんに適応があるわけではなく、症状、年齢、ADLを総合的に勘案し、慎重に判断を行います。

 

 パーキンソン病の治療をしていく中で、もっとも注意をしなければならない副作用が悪性症候群です。相当量の治療薬を急に中止してしまうことによって生じます。高熱、自律神経の活動亢進(頻脈、不整脈、頻呼吸、血圧変動)、筋強剛、意識障害を呈し、重症例では横紋筋融解症による急性腎不全に至ることがあります。このため、パーキンソン病の治療をしている患者さんには自己判断で内服を中止しないよう十分に指導する必要があります。

 

 悪性症候群について、非専門医として気を付ける点が2点あります。

 まず、パーキンソン病の患者さんが入院した際、その治療薬を安易に中止にしないようにしましょう。内服が可能であれば継続とし、内服が難しい場合はドパストン静注を使用するようにします。

 また、パーキンソン病が既往にある患者さんが発熱、意識障害など重篤な症状で来院した際、敗血症といった頻度の高い疾患と共に、悪性症候群についても鑑別として想起する必要があります。これを頭に入れておかないと、よくわからないけどとりあえず敗血症として治療をしていたら、後から悪性症候群であることがわかった…、何てことが起こる可能性があります。パーキンソン病の患者さんが具合が悪いと受診したら、「まさか悪性症候群じゃないよな?」と自問する癖をつけるとよいでしょう。

 以上、今回はパーキンソン病についてまとめてきました。勉強しなければと思いつつも、ずっと先延ばしにしてしまっていた項目でしたので、ようやく肩の荷が下りた気分です。

 

 パーキンソン病は有病率が高いことに加え、非運動症状を始めとした初期症状を捉えにくい疾患であるといえます。ともすれば不定愁訴の多い患者さんとして不適切に扱ってしまっていることも少なくないと思われ、プライマリケア医が早期診断に果たす役割は大きいと言えます。私も明日以降の外来ではパーキンソン病を見逃さないよう、意識して診療をしていくつもりです。

 

 最後に、重要事項をまとめて終わりにしたいと思います。

・パーキンソン病は中脳黒質のドパミン神経細胞の脱落により生じる疾患である。

現在の本邦でのパーキンソン病患者数は概ね20万人程度であり、頻度の高い疾患である。

・パーキンソン病の症状は振戦、無動、筋強剛、姿勢反射障害などの運動症状と、便秘、嗅覚障害、REM睡眠行動異常といった非運動症状に分けられる。特に非運動症状は運動症状に先立って出現するため、パーキンソン病の早期診断において重要である。

・病歴、身体所見に加え、頭部MRI、MIBG心筋シンチグラフィ、DATスキャンといった検査を組み合わせて診断を行っていく。

・治療はレボドパ製剤を中心に、ドパミンアゴニストや非ドパミン製剤を組み合わせて行う薬物治療が主体である。

・パーキンソン病患者の体調不良時には、必ず悪性症候群を鑑別に挙げるようにする。

 

・みんなで学ぶパーキンソン病(改訂第2版): 患者さんとともに歩む診療をめざして 柏原 健一 南江堂

・パーキンソン病の診かた、治療の進めかた 水野美邦 中外医学社

・パーキンソン病診療ガイドライン2018

・今日の臨床サポート

・みんなの脳神経内科 湘南鎌倉総合病院の山本大介先生のチャンネルです。神経疾患について、大変わかりやすく解説されておりオススメです。著書に関してもご存じの方が多いのではないでしょうか。