はじめに
今回紹介するのは、若手医師なら一度は手に取ったことがあるであろう『救急外来 ただいま診断中!』です。著者は旭中央病院救急救命科の坂本壮先生で、全国各地で救急診療の教育に尽力されている方です。この書籍は、初期研修医の救急外来診療における「バイブル」と言っても過言ではなく、私自身も研修医時代に何度も読み返して勉強しました。初版は2015年に刊行されましたが、本年10月、約10年ぶりに改訂された第2版が出版されました。
最近、救急診療能力が低下していると感じる場面が続いたため、これを機に改訂版を購入し、再び勉強し直そうと決意しました。一通り読了しましたので、本記事ではそのレビューをお届けしたいと思います。
どのような本か?
本書は、救急外来診療に従事する研修医や若手医師を主な対象とした書籍です。「意識障害に出会ったら」「失神に出会ったら」といった、救急外来でよく遭遇する症候ごとにセクションが分かれています。第2版では、初版と比べて各項目の内容が大幅に加筆され、最新の知見を反映した文献も追加されています。また、新たに「呼吸困難」と「嘔気嘔吐」の2項目が加わり、全体で100ページ以上のボリューム増となっています。
本書の特徴は、救急外来で取るべきアクションについて、考え方やエビデンスがわかりやすく解説されている点です。そのため、単なるマニュアル本というよりは教科書に近い印象を受けます。じっくり時間をかけて読み込むことで、より深い理解が得られる構成になっています(もちろん、現場での活用も可能です)。
さらに、救急外来初心者が陥りやすいピットフォールについての警鐘や、検査や入院の判断に役立つスコアリングも多数収録されています。本書のエッセンスをしっかり吸収することで、救急診療の質が格段に向上することは間違いありません。
読んでみた感想
医師7年目となると、経験則に基づいて効率よく診療を進めることができるようになる一方、経験が少ない症候や疾患に関する知識が抜け落ちていることがあります。私自身、最近救急外来でヒヤリとする場面を経験し、「研修医の頃はもっとできていたのにな…」と反省することがありました。そんなタイミングで本書の改訂版が発売されたため、救急診療をブラッシュアップしようと購入しました。
読んでみて感じたのは、自分が久しく経験していない症候に関する知識の抜け落ち具合です。例えば「けいれん」や「頭部外傷」、「脳卒中」などの項目を読んで、「こんなに忘れてしまっていたのか…」とショックを受けました。この機会に、UpToDateなど他の媒体も活用しながら、学習をやり直そうと考えています。
また、この学年になると、研修医時代に漏れなく確認していた評価スコアリングをつい省略してしまいがちです。本書には重要なスコアリングが一通り掲載されており、よい復習になりました。最近は臨床支援アプリHOKUTOを活用することで容易にスコアリングを評価できるようになっています。これからは初診に帰り、改めてスコアリングを日常臨床に取り入れたいと思いました。
さらに、自分が比較的経験数の多い症候であっても、自分のプラクティスとは違った視点が見えてきたり、腹落ちしてより理解度が深まったりと、いくらでも学びになるポイントは見つかります。苦手な部分をかいつまんで読むことも良いのですが、通読して余すことなく坂本流ER診療のエッセンスを吸収するのがベターだと言えるでしょう。
まとめ
まとめますと、本書は初期研修医向けではありますが、ある程度の学年の医師にも強く推奨できる内容です。特に、最近救急診療のアップデートが疎かになっているかも…と自覚のある場合は特にオススメです。もちろん、救急診療にある程度自信がある人も、むしろ経験を積んだ上読むからこそ、新しく見えてくるものがあると思います。文句なしのクオリティであり、この改訂を機に、是非皆さんに手に取って頂きたい一冊です。