膵嚢胞について
〇膵嚢胞の種類
膵嚢胞は非腫瘍性膵嚢胞と膵嚢胞性腫瘍(PCN)に分類されます。
非腫瘍性膵嚢胞は多くの場合無症候性であり、切除を必要としないことが多いです。
・良性病批正嚢胞
・炎症後に伴う嚢胞(急性膵炎、慢性膵炎)
・粘液性脾腫要請嚢胞
・リンパ上皮嚢胞
膵臓嚢胞性腫瘍(PCN)には4つのサブタイプがあり、一部悪性の可能性があるため切除が必要となることがあります。
・漿液性嚢胞腫瘍(SCN)
・粘液性嚢胞腫瘍(MCN)
・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
・充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
ここでは主に膵嚢胞性腫瘍についてまとめていきます。
〇疫学
膵嚢胞は画像診断の普及により診断される頻度が増加しており、腹部MRIを受けた患者の40-50%で膵嚢胞が検出され、その頻度は年齢と共に増加します。膵嚢胞の外科的切除を受けた851人の患者に対する後方視的研究では、IPMN 38%、MCN 23%、SCN 16%、SPN 3%でした。ただし、分枝型IPMNやSCNは切除の必要がありませんから、これらについては過小評価されている可能性があります。
〇臨床症状
膵嚢胞の多くの患者は無症状です。嚢胞が大きい場合、腹部不快感や腹痛、再発性膵炎、黄疸といった症状をきたすことがあります。
〇悪性腫瘍のリスク
膵嚢胞全体としての悪性腫瘍のリスクは低く、最大でも0.01%とされています。
悪性腫瘍のリスクに関係する要素として
・嚢胞のサイズが3cmを超える
・嚢胞内に固形成分がある
・主膵管が拡張している
ことが挙げられます。
なお、経時的な嚢胞の拡大のみでは悪性腫瘍のリスクとはならないようです。
上記に加え、嚢胞の種類も重要です。SCNでは悪性の可能性は極めて低いですが、MCN、SPN、主膵管型IMPNでは悪性のリスクが高まります。
膵嚢胞性腫瘍の画像所見
〇漿液性嚢胞腫瘍(SCN)
境界明瞭な多嚢胞性病変として描出されます。中央に“sunburst”様の石灰化を伴うことで特徴で、最大20%に認めるとされます。
〇粘液性嚢胞腫瘍(MCN)
SCNと比較すると単房性のことも多いですが、隔壁を伴う多房性の病変として描出されます。
〇膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
IMPNは主膵管型、分枝型、またはその両方を呈する場合があります。
主膵管型はムチンで満たされたびまん性または部分的に拡張した主膵管が特徴的です。主に膵頭部に認めることが多いですが、どの部分にもできる可能性があります。
分枝型IPMNは膵管の分枝が多房性に拡張していることが特徴的です。膵頭部や鈎状突起に多く見られます。
〇充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)
SPNは固形成分と嚢胞性成分が混在しているように見えるとされます。典型的には35歳未満の若年女性に発生します。
膵嚢胞性疾患のマネジメント
膵嚢胞性腫瘍はMRCPなどの画像検査やEUS-FNAによる病理学的評価を行い、悪性の可能性がある場合には手術を検討します。以下、up to dateのアルゴリズムを記載します。
・・・とんでもなく煩雑で辟易してしまいました。
EUS-FNAなどが必要になることを考えると、赤線以降は専門機関に依頼した方がよさそうです。
私の勤務先ではMRIがないため、腹部超音波やCTで膵嚢胞性腫瘍が疑わしい場合、その時点で紹介とせざるを得ません。
参考
・up to date
・AGAガイドライン Gastroenterology. 2015 Apr;148(4):819-22; quize12-3