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急性胆管炎

定義

ガイドラインによれば、「胆管内に急性炎症が発生した病態であり、その発生には①胆管内に著明に増加した細菌の存在、➁細菌またはエンドトキシンが血流内に逆流するような胆管内圧の上昇、の2因子が不可欠となる」と定義されています。

疫学

一般的に人口の10%が胆石を有しているとされますが、そのうち急性胆管炎を発症するのは3.8-12%とされています。

胆管炎の原因となる胆道閉塞について、原因として多いのは総胆管結石、良性胆道狭窄、胆道の吻合部狭窄、悪性疾患による狭窄などがあります。最も多いのは総胆管結石ですが、最近は悪性疾患の頻度が増えてきており、10-30%を占めるとされています。

重症化率は11.6%、死亡率は2.7-10%と見積もられており、いずれも急性胆嚢炎と比較すると高値です。

病態

急性胆管炎は、胆道閉塞による胆汁うっ滞に感染を伴うことで発症します。胆道内圧上昇により胆汁内の細菌やエンドトキシンが血中、リンパ流中(cholangiovenous cholangiolymphatic reflux)に逆流することで、敗血症などの重篤かつ致死的な感染症に進展しやすいという特徴があります。この点が炎症が胆嚢に限局している胆嚢炎と大きく異なる点になります。

また、胆嚢炎では必ずしも細菌感染は必発ではありませんが、胆管炎の場合は胆管の中で著明に細菌が増殖していることが定義の一つとなっています。

症状

Charcotの3徴:発熱、黄疸、腹痛

Reynoldsの5徴:上記に意識障害とショックを加えたもの

が有名だと思います。ただし、すべてがそろうことは少ないので注意が必要です。

症例全体でみると、発熱と腹痛は80%以上に、黄疸は60-70%に認めるとされます。

また、胆嚢炎と比較すると、急性腹症というよりも敗血症の症状が前面に出ることが多いです。このため、意識障害、嘔気、嘔吐、悪寒戦慄など多彩な症状を示し、臨床像の幅が広いことを押さえておきましょう。

加えて、病態から容易に菌血症、敗血症を起こすため、胆管炎を疑った場合、一段階ギアを上げることが必要です。「振り向いたらショック」とならないよう、モニターできる環境に患者さんを移すようにしましょう。

診断

診断基準

以下にガイドラインの診断基準を示します。感度は91.8%、特異度は77.7%と高い精度を誇ります。

身体所見

胆管炎に特異的な身体所見はありません。胆嚢炎を含めた肝胆道感染全体においてにはなりますが、肝叩打痛は感度60%、特異度85%と、比較的精度のよい診察法だという報告があります。

血液検査所見

胆管圧亢進を反映し、高確率で肝胆道系酵素が上昇するのが特徴です。このため、細菌感染症の中で熱源同定に採血検査が有用なほぼ唯一の疾患といえます。白血球数やCRPなどの炎症反応も上昇することが多いですが、高齢者や免疫不全の患者では上昇しないこともあります。

腹部超音波検査

胆管拡張と胆管結石について、感度 38-91%、特異度 94-100%とされています。胆嚢炎と比較すると検者の技量によるところが大きいかもしれませんが、侵襲度を考えると身体所見の次点で行う検査としては有用と言えるでしょう。

CT検査

急性胆管炎に対し、胆管拡張、胆管内結石を証明するために行われます。感度は65-88%、特異度は97%程度とされています。ダイナミックCTが推奨されていますが、これにより胆管炎ではTHAD(transient hepatic attenuation difference)という所見を認めることがあります。これは早期相において肝実質の一過性早期濃染を認めるという所見ですが、炎症が肝に広がることで動脈血流の増加を示しているとされています。

総胆管内に結石を認める
MRI検査

MRI/MRCPは腹部エコー、CTと比較し、胆道の解剖学的な構造を明瞭に描出することができ、狭窄部や胆石などの成因診断に有用です。ただし、検査に時間がかかることが難点で、敗血症に至りやすい急性期に行われることは少ないです。

治療

胆管ドレナージ

急性胆管炎の治療で最も重要なのが胆管ドレナージです。ガイドラインでは内視鏡的経乳頭的ドレナージが推奨されていますが、他にも経皮経肝胆道ドレナージや超音波内視鏡ガイド下胆管ドレナージなどが行われることもあります。

抗菌薬治療

考え方は胆嚢炎と同様で、基本的には腸内細菌科のGNR+嫌気性菌をカバーしていくことになります。

・大腸菌の耐性が低ければABPC/SBTやCMZ

・大腸菌の耐性が高ければPIPC/TAZ

・重症例ではPIPC/TAZ

というように、アンチバイオグラム重症度に基づいて抗菌薬を選択していくのがよいと考えます。

投与期間はドレナージ等で感染源のコントロールを行った後、4-7日間が推奨されています。

また、胆管炎は菌血症を伴いやすい点が胆嚢炎との相違点です。ガイドラインでは、もし血液培養から腸球菌や連鎖球菌などGPCが検出された場合、2週間以上の抗菌薬投与が推奨されています

参考

・TG18新基準掲載 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 医学図書出版

・Up to date

・radiopaedia

https://radiopaedia.org/cases/choledocholiathiasis-with-cholangitis?lang=us