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肝機能異常

  • 2023年2月5日
  • 2023年2月5日
  • 消化器
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肝機能異常とは

AST、ALT、ALP、γGTPなどは肝酵素とも呼称される、肝障害の際の生化学的マーカーです。一般に肝機能異常というとこれらの数値が上昇していることを指しますが、赤血球など肝細胞以外の組織にも存在しているため、肝酵素の上昇が必ずしも肝自体の障害を表しているわけではない点に注意が必要です。

肝酵素

いわゆる肝酵素には下記のものが含まれます

・AST

・ALT

・ALP

・γGTP

・LDH

ASTとALT

ASTは肝臓だけでなく、心筋、骨格筋、腎臓、脳、赤血球に分布しています。一方、ALTは主に肝臓に存在するため、肝障害に特異的なマーカーといえます。肝細胞にはAST/ALT=2の比で存在しており、半減期はASTが18時間、ALTが48時間です。肝障害の急性期には含有量の比を反映してAST/ALT>1となりますが、48時間以上経過すると半減期の影響からAST/ALT<1となります。また、アルコール性肝障害ではAST/ALT>1となる点が特徴とされます。AST/ALT>3の場合、アルコール性肝障害または肝細胞障害以外の原因を考慮する必要があります。

ALPとγGTP

ALPは主に肝臓と骨に存在しています。γGTPは肝細胞と胆道上皮細胞、腎臓、精嚢、膵臓、脾臓、心臓、脳に認めます。ALPとγGTPは一般的には胆汁うっ滞による病態で上昇します。ALP単独で上昇している際は、分画を測定することで由来臓器を同定することができます。

LDH

LDHは全身の組織に存在する細胞質酵素です。LDHには5つのアイソザイムが血清中に存在し、電気泳動によって分画を測定することができます。肝酵素としては非特異的であり、LDHがAST、ALT以上に上昇している場合は横紋筋融解や溶血を鑑別に挙げましょう。また、間質性肺炎の急性増悪やニューモシスチス肺炎、甲状腺機能低下症の際にも上昇します。

Bil

Bilは厳密には肝酵素ではありませんが、同時に評価することが多いのでここに記載します。直接Bilと間接Bilがあり、前者は抱合型、後者は非抱合型です。

直接Bilの上昇はグルクロン酸抱合後の過程における肝・胆道系疾患の存在を示唆します。すなわち、胆管側への肝細胞内輸送障害、胆管への排泄障害、胆管からVater乳頭に至るまでの胆道系の通過障害などで上昇します。

間接Bilの上昇は溶血で生じますが、肝硬変で肝機能が低下し、グルクロン酸抱合ができなくなっている場合にも上昇します。

肝機能検査

肝機能検査(肝合成能の指標)として重要なものに、

・PT

・Alb

・ChE

などがあります。特にPTは劇症肝炎の診断で使用されるため重要です。

また、血小板は肝細胞で合成される血小板増殖因子(TPO)で増加するため、血小板の低下は肝合成能の低下を間接的に表します。

肝酵素の症状/肝機能低下を認めた際のアプローチ

病歴

飲酒量、輸血歴、性交渉、刺青、違法薬物の使用、食べ物(イノシシ、魚介類、豚、鹿など)、渡航歴などを確認しましょう。肝炎の家族歴も重要です。また、新規に開始された薬剤がないかも調べましょう。

身体所見

肝臓の触知、脾腫の存在の有無を確認します。

クモ状血管腫、手掌紅斑、メデュサの頭、女性乳房は肝硬変の存在を示唆します。

非代償性肝硬変の患者では腹水、肝性脳症がみられることがあります。心不全所見がある場合、うっ血肝による肝障害を示唆する場合があります。

採血

・血算、CK、甲状腺機能

・肝逸脱酵素:AST、ALT、LDH、γGTP、ALP、Bil

・肝合成能:Alb、PT、血小板

・アンモニア

下記は赤色のものはルーチンで提出

・その他:IgG、IgM、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体

・ウィルス関連:A型肝炎(抗HAV-IgM)、B型肝炎(HBs抗原、抗HBs抗体、抗HBc抗体)、抗HCV抗体、E型肝炎(HEV-IgA)、EBV(VCA-IgM、VCA-IgG、EBNA)、CMV(アンチゲネミア、IgM)、HSV(IgM、IgG)、VZV(IgM、IgG)

・ウィルソン病:セルロプラスミン、尿中銅定量

腹部エコー検査

肝腫大、肝硬変、脂肪肝、肝細胞癌、胆道閉塞の有無などを評価します。

肝逸脱酵素のパターン分析

R値を算出することで肝障害の病態を把握することができます。

R値=(ALT÷ALT正常上限)/(ALP÷ALP正常上限)

R値≧5:肝細胞障害型

2<R値<5:混合パターン

R値≦2:胆汁うっ滞型

肝酵素の症状/肝機能低下の鑑別疾患

肝酵素の症状/肝機能低下の鑑別疾患は多岐にわたりますが、外来で遭遇する慢性経過の肝障害の場合、頻度の面から、

・アルコール性肝障害

・NAFLD

・ウィルス性(HBV、HCV)

・薬剤性

・自己免疫性(AIH、PBC)

をまずは疑うようにしましょう。

また、肝逸脱酵素が3桁を超え急性経過である場合は劇症肝炎がないかPTなどの肝機能評価を行い、早期に専門家への紹介を検討します。

参考

・up to date

・医学事始

肝機能障害の原因精査