注目キーワード
  1. 高血圧
  2. 骨粗鬆症
  3. 糖尿病

頚椎症

頚椎症とは

頚椎症は頸椎の加齢変性とともに発症するため、中高年に多い疾患です。頚椎症は神経根症脊髄症の2つが知られていますが、頸部神経根症は40-60歳代、頸椎症性脊髄症は70歳代が平均発症年齢とされています。

神経根症は椎間板ヘルニアや椎間板の傍流、骨棘などによって神経根が椎間孔にて圧迫されて発症します。

脊髄症は、神経根症と同様の加齢性変化や脊柱靭帯の肥厚などにより、脊柱管内が狭小化し脊髄組織が圧迫されて発症します。

頚椎症性神経根症

臨床像

一側の頸部、肩甲骨周辺部から上肢に放散する痛みがしびれに先行するのが最大の特徴であり、痛みが先行しない脊髄症との最大の鑑別点です。片側の肩甲上部(C5-6)、間部(C7-8)、骨部(C8)のいずれかの痛みが、平均して1か月ほど前に先行するとされています。したがって、神経根症を疑った場合、上肢だけでなく肩甲骨周辺の痛みが先行していないか問診すべきといえます。

神経根症の発症頻度はC7、C6、C8の順に多いとされ、上腕、前腕の外側に疼痛があればC6神経根症腕の背側に疼痛があればC7神経根症前腕の内側に疼痛があればC8の神経根症が示唆されます。

また、朝に改善し午後から悪化することも神経根症に特徴的です。

所見

Spurling testは頸椎を患側に側屈し、さらに後屈させた状態で、頭部から上から下に力を加えた時に、頸部から肩、上肢に放散する疼痛が出た時を陽性とします。感度は28-92%と幅がありますが、特異度は86-100%とされます。症状が増悪する可能性があるため、本人に頸部を側屈・後屈してもらう愛護的な方法もあります。

頸部MRIは有用ですが、肝心なことは臨床所見と画像所見が一致するかどうかです。

治療

頸椎MRIを施行し、臨床的行為診断と画像所見が一致するようなら保存的加療を試みます。頸椎カラーや鎮痛薬を処方します。手術が必要になることは少ないですが、進行性に筋力低下が進行するようであれば検討されます。

頚椎症性脊髄症

臨床像

服部の分類によれば、脊髄症の進展様式は、まず圧迫により脊髄中心部の灰白質に病変が生じ髄節症候をきたし、圧迫の増大に伴い脊髄周辺部に広がり索路症候が出現します。

したがって、脊髄症の自覚症状は脊髄中心部の灰白質の障害である手指のしびれで発症します。障害の強い片側の手指のしびれが発症し、対側にもしびれがおよび、両上肢の感覚障害をきたします。

進行すると上肢の筋力低下も出現し、続いて錐体路が障害され、下部の深部腱反射亢進など下行性運動路の障害が出現します。

さらに進行すると後索と脊髄視床路などの上行性感覚路が障害を受け、下肢のしびれが出現し、最終的には歩行障害を呈していくのが典型的な進展様式です。

所見

脊髄症の高位診断では、下記の表に示すように、椎間高位がC3/4なら近くの髄節でC5-6の領域、C4/5なら髄節ではC7の領域、C5/6なら髄節ではC8の領域、C6/7なら髄節でT1の領域に感覚障害が分布します。感覚障害の分布は筋力低下や深部腱反射の異常よりも優位に高位診断に有用ですのでしっかり評価するようにしましょう。

錐体路まで障害が及んでいるかを確認する方法に、手の症候としてfinger escape signと10秒テストが知られています。

finger escape signは患者に両手を回内位にして、前方に挙上してもらい、すべての指をしっかり閉じて30秒間伸展するように指示します。脊髄症の患者では、軽度なら小指の内転保持が困難となり、次第に外転してきます。進行すると環指、中指の進展も困難となってきます。

10秒テストは、患者に両手を前に挙上してもらい、手掌を下にしてグーとパーをできるだけ早く繰り返してもらい、10秒で何回できるか数えます。頚髄症では21-22回以下になるとされます。

治療

手のしびれのみにとどまっている場合は経過をみることが多いです。

深部腱反射が出現したり頸椎の後屈で頻回に増悪を繰り返す場合は整形外科へのコンサルトが必要となります。

参考

・Up to date

・非専門医が診るしびれ 塩尻俊明 羊土社

・標準的神経治療 しびれ感 日本神経治療学会

・医学事始

頚椎症による神経障害