またもや久方ぶりとなってしまいましたが、今回は書籍紹介の記事です。
先日、今更ながら大ベストセラーの「嫌われる勇気」を読了しました。本書は心理学者アルフレッド・アドラーの「アドラー心理学」に関する書籍です。これがまた私個人には非常に刺さる本でして、本書を読む前後で日々の思考に変化が生まれたように感じています。読書でこういった経験をするのは初めてのことでしたので、結構な衝撃を受けました。
本記事では、最初にアルフレッド・アドラーとアドラー心理学に関して簡単に紹介し、その後「嫌われる勇気」の内容に関して触れ、最後に私の感想を綴っていきたいと思います。
アルフレッド・アドラーとは?
アルフレッド・アドラー(1870年 – 1937年)は、オーストリア出身の心理学者であり、個人心理学の創始者として知られています。彼は世界的にはフロイトやユングと並ぶ心理学の巨匠の一人とされていますが、本書が出版される前は日本では無名に近い存在でした。
彼は幼い頃に声帯の痙攣とくる病に苦しんでいたことに加え、3歳下の弟がジフテリアで亡くなったこと、何よりアドラー自身が肺炎にかかって重体になったことをきっかけに医師を志しました。医師になった当初は眼科医や内科医として働いていましたが、次第に心理学に興味を持つようになりました。そんな中で心理学の権威であるジークムント・フロイトと出会い、初期の精神分析運動に参加しましたが、後にフロイトの理論とは異なる独自の理論を展開し、いわゆる「個人心理学(アドラー心理学)」を創設しました(ちなみに、よく誤解されている点ですが、アドラーはフロイトの弟子ではありません)。
アドラーは生涯を通じて多くの講演や執筆活動を行い、その影響は心理学の分野を越えて広がり、教育学や社会学など多くの分野に及びました。1937年にスコットランドで講演中に急逝しましたが、彼の思想は今なお多くの人々に影響を与え続けています。
アドラー心理学とは?
さて、アドラーの提唱した心理学、通称「アドラー心理学」は、個人心理学とも呼ばれ、その名の通り“自分自身を考え方の中心に置いた”心理学です。私も本人の著書を読んだわけではないのですが、大変に難解な考え方のようです。ここでは、アドラー心理学のエッセンスを、“目的論”と“課題の分離”の2つに絞って紹介します。あと、自分だけで書く自信がないので、この項目ではChatGPTのお力を大いにお借りしてます…。
目的論
“目的論”はアドラー心理学の根幹を成す思想です。これは、人間の人間の行動にはすべて目的があり、自分が現在置かれている状況は自分の目的を達成するために自らが選択した道である、という考え方です。目的論と対極にあるのがフロイトの提唱した“原因論”であり、こちらでは、結果にはすべて原因があり、自分が現在置かれている状況は自らの過去によって決められる、という考え方になります。
なかなかわかりにくいと思いますので、この目的論と原因論を、長年引きこもっている中年の人物を例に考えていきましょう。原因論では、幼い頃の家庭環境や学校でのいじめなど、過去のトラウマが原因で引きこもりとなってしまっていると考えます。一方、目的論では、過去のトラウマなど存在せず、環境が変わるのを恐れて「引きこもり」であることを自身で選択している、と結論付けます。うーん、これだけ聞くと過激な思想に見えますね…笑
私は、この目的論という思想を通じてアドラーが言いたいのは、「原因論では過去の経験、トラウマを言い訳にしてしまい、前に進む原動力にならないよね。それよりも今この瞬間についてよく考えようじゃないか。今の行動は過去ではなくあなた自身が決めているのだ!」ということなのではないかと考えています。確かに原因論に基づけば、「過去が過去だからしょーがないよねー」と今との自分の状況に納得が行くかもしれません。でもこれだけでは前に進むことができません。そうではなくて、こう考えてみましょう。現在の自分の行動や状況を自分自身が選択していると認識することで、自分の人生に対する責任を持つことができるのです。これは、過去の経験や環境に囚われるのではなく、現在の自分の選択や行動に焦点を当て、未来に向かって進むための力を引き出すためのアプローチです。つまり、目的論をベースに自己決定権の重要性を説いているのです。
このように、アドラー心理学の目的論は、個人が自分の人生に対して主体的な態度を持ち、自らの行動に対する責任を持つことを促します。これは、自己成長や変化を促進する強力な考え方であり、困難な状況に直面している人々にとっても、希望と前進の道を示すものです。
課題の分離
課題の分離とは、誰の課題であるかを明確にし、それぞれが自分の課題に集中することを意味します。具体的には、他人の問題や課題に干渉せず、自分の課題に責任を持つことです。これにより、過度な干渉や依存から生じるストレスや対立を減少させることができます。要するに、“自分の力でどうしようもない部分には手を出さない・意識を向けない”いうことですね。以下に課題の分離の基本原則を示します。
①自分の課題と他人の課題を明確にする: 最初のステップは、ある問題や状況が誰の課題なのかを明確にすることです。例えば、子供の成績が悪い場合、それは親の課題ではなく子供自身の課題です。親ができるのはサポートであり、成績を上げるための努力は子供自身の責任です。
②自分の課題に集中する: 課題の分離を実践することで、自分の課題に集中し、他人の課題に干渉しないことが求められます。これにより、他人の責任を奪うことなく、自己の成長と自立を促すことができます。
③他人の課題に干渉しない: 他人の課題に干渉しないことで、相手に自分の責任を果たす機会を与えることができます。過度な干渉は、相手の自立を妨げることになりかねません。
この課題の分離ができるようになると、日常生活において、
・他人の期待や評価に縛られず、自分の価値観に基づいて行動できるようになる。
・人間関係のストレスが減少し、対立が少なくなる。
・自己効力感が高まり、自分の人生に対する責任を持てるようになる。
といった効果が期待できます。
“目的論”と“課題の分離”について解説してきました。これはあくまでアドラー心理学の一部分であり、当然すべてを網羅したものではありません(すべては解説するのは私には無理です…)。最終的に、アドラーが伝えたかったメッセージは、「あなたの人生はあなた自身の選択によって形作られるものであり、過去の出来事に左右されるものではない」ということになるでしょうか。
さて、アドラー心理学についてはこのくらいにして、次は実際に「嫌われる勇気」の内容について見ていきましょう。
「嫌われる勇気」について
本書は日本におけるアドラー心理学の第一人者(日本アドラー心理学会顧問)で、アドラーの著作も多数翻訳している岸見一郎氏と、臨場感あふれるインタビュー原稿を得意とする古賀史健氏によって書かれています。
著者らは、『「トラウマ」の存在を否定した上で、「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善していくための具体的な方策を提示していくアドラー心理学は、現代の日本にこそ必要な思想である』という信条の下、本書を作成したとのことです。ただ、前述の通りアドラー心理学そのものは難解であり、そのまま解説しただけではその本質を伝え切れない恐れがあります。このため、本書では平易かつドラマチックにアドラーの教えを伝えるために、哲学者と青年の対話篇形式によってその思想を解き明かしていく、という形を取っています。
この「哲学者と青年の対話篇形式」というのは大変とっつきやすく、確かにわかりやすい構成となっています。青年は自己肯定感が大変低く、人生に対して多くの疑問や不安を抱えており、哲学者はアドラー心理学に基づきつつその疑問に答え、教え導く役割を果たします。この青年はしばしば哲学者の言葉に対して反論するのですが、常にケンカ腰でなかなか尖ったキャラクターをしています。よく哲学者は怒らずに議論を続けられるなぁと感心しながら読んでいました笑
ページ数は259ページなので、結構サクッと読めてしまうと思います。私は読了まで1週間くらいだったかな?また、私は単行本ではなく電子書籍で読みました。カラー部分や図はほとんどないため、電子書籍でも問題なく読むことができました。価格も電子書籍の方が500円くらい安いです。
読んでみた感想
最後に読んでみた感想です。冒頭でも述べましたが、本書をきっかけに日々の生活に良い変化がうまれたため、いくつか具体的に紹介したいと思います。
①原因論からの解放
目的論と原因論に関しては前述しましたが、私は本書を通じて「原因論」から脱却することができました。元々自身の生い立ちにコンプレックスがあり、それを持ち出して現状に対する言い訳をするという悪癖があったのですが、3年前にうつ病になったことをきっかけに、その傾向がより顕著となりました。ただ、アドラーも言っている通り、原因論は前に進んでいく原動力にならないんですよね。
アドラーの目的論に触れることで、私は「過去の出来事に囚われずに、今ここで自分が何を選択するかが大切」という考え方を実践するようになりました。最初は過去のトラウマや失敗を手放すのが難しかったのですが、少しずつ「今この瞬間」に焦点を当てることで、前向きな選択ができるようになってきました。
➁課題の分離によるストレスの軽減
前述した「課題の分離」という考えを取り入れることで、“自分の力でどうしようもない部分には手を出さない・意識を向けずに”日々の生活送ることができるようになりました。私は他人の能力や成功をと自身を比較してしまうことが多く、結果として自分の力量不足に落ち込んでしまう傾向がありました。
いわゆる“隣の芝生は青く見える”という奴ですね。これもうつ病をきっかけに増悪してしまった感があり、さらに抑うつ状態を悪化させるという負のスパイラルに陥ってしまっていました。
この思考パターンは非常にストレスフルで、自己肯定感を著しく低下させていました。しかし、アドラーの「課題の分離」の概念に出会ってから、自分と他人の課題を明確に区別することを意識するようになりました。これにより、他人の成功や評価に一喜一憂することなく、自分の成長と成果に集中できるようになったのです。
まとめ
本書を通じて「抑うつ状態が改善し、行動力が向上し、前向きになることができた」と言えます。もちろん、うつ病そのものが時間経過や抗うつ薬の効果もあって回復傾向であったというのもあるでしょうが、ブースト効果があったことは確かです。自分に自信がない人、他人と自分を比べがちな人には是非読んでいただきたい一冊です。
ただ、アドラー心理学の「自分の人生には自分で責任を持つ」という点については、人によってはむしろ精神的な重荷になってしまう可能性があり注意が必要です。特にうつ病になったばかりの人にはオススメできません。あくまで回復期に読む本かな、と思います。
参考
・カオナビ アドラー心理学とは?【わかりやすく】フロイトとの違い
https://www.kaonavi.jp/dictionary/adler_shinrigaku
・図解の世界 アドラー心理学『嫌われる勇気』の内容を13枚の図解にまとめました!
https://www.diagram-wolf.com/kirawareruyuuki/
・アバタロー 【究極】人生の意味の心理学|アドラー 疲れた心に効く、アドラー直伝の教え