疫学と分類
〇疫学
胆嚢ポリープは超音波検査で評価された場合に1.5-4.5%、切除された胆嚢において最大13.8%で観察されるといいます
〇コレステロールポリープ
有病率は9-26%とされており、最も頻度の高い胆嚢ポリープです。男女差はありません。
コレステロールポリープは胆嚢壁の粘膜にトリグリセリド、コレステロールが異常に沈着することで生じます。肉眼的には黄色の沈着物として観察できます。
病理学的には細長い絨毛内に脂質を含んだマクロファージが観察されます。
〇炎症性ポリープ
炎症性ポリープは比較的頻度の少ないポリープです。形質細胞およびリンパ球を含む肉芽組織および線維組織で形成されています。ポリープの直径は通常5-10mmですが、時に1cmを超える場合もあります。
〇腺筋腫症
腺筋腫症は粘膜の異常増殖、筋肉壁の肥厚、および壁内憩室を特徴とします。有病率は1%程度と高くはなく、男性より女性で頻度が高いとされます。びまん性、分節性、胆嚢底部限局型の3種に分類されます。
〇腺腫
有病率は0.5%未満とされます。癌のリスクはポリープのサイズとともに増加し、腺腫が10mm以上の場合には37-55%までになります。
臨床的特徴
〇腹痛
多くの場合は無症候性ですが、まれに右上腹部痛を引き起こすことがあります。ポリープが胆嚢管を閉塞し、胆道疝痛または胆嚢炎を生じるということがその機序として考えられています。また、稀に剥離した部分が総胆管を閉塞し、胆管炎や膵炎を引き起こすことが知られています。
〇癌のリスク
ほとんどの胆嚢ポリープは良性であり、腺腫を除いて悪性の可能性はありません。ポリープがある患者とない患者の間で行われた観察研究では胆嚢癌は前者で0.053%、後者で0.054%であり、ほとんど差がありませんでした。胆嚢ポリープにおける胆嚢癌のリスクは下記のものがあります。
・胆嚢ポリープの大きさが10mm以上
・原発性硬化性胆管炎がある
・無茎性ポリープ
・50歳以上
ちなみに、胆石があることは胆嚢癌のリスクとしては小さいようです。
また、腺筋腫症があることも胆嚢癌のリスクとしては小さいとされています。
診断
通常、胆嚢ポリープは経腹超音波検査で偶然に発見されるものです。良性と悪性をはっきりと鑑別することは困難といわれていますが、下記にそれぞれの特徴をまとめます。
・コレステロールポリープは通常、複数の均一な有茎性ポリープであり、肝実質よりも高エコーに描出されます。多くの場合は1cm未満です。
・腺腫は均一で、肝実質と等エコーで、表面は滑らかで通常は無茎性です。無茎性であることと4mmを超える胆嚢壁の肥厚と伴う場合、悪性腫瘍のリスクといわれます。
・腺筋腫症は壁内憩室を伴うびまん性壁肥厚を呈します。胆嚢底部に位置する場合、有茎性のようにみえる場合があります。
・腺癌は均一または不均一な肝実質と等エコーなポリープ状構造を示し、表面は桑のように描出されます。
マネジメント
〇疝痛や膵炎など合併症がある症候性の患者
胆嚢摘出術を検討します。
〇胆嚢癌の危険因子を持つ無症候性患者
胆嚢摘出術と観察を比較した研究はほとんどないため、最適なフォローアップは不明ですが、up to dateによれば前述の癌のリスクを考慮し、下記のようなアルゴリズムでのフォローアップが推奨されています。5年観察して安定していればフォロー中止を検討します。経過中に2mm以上の増加がある場合は悪性の可能性が高いため、その時点で外科に紹介とします。
参考
・up to date