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高尿酸血症・痛風

高尿酸血症

〇定義

高尿酸血症としての閾値は複数あり、定まっていません。

痛風の生涯リスクを鑑み、尿酸(UA)≧6.0mg/dLがあり、痛風患者におけるUA値の降下目標としても使用されています。

一方、血清中での溶解限界であるUA≧7.0mg/dLを閾値として設定することもあります。

本邦のガイドラインでは、溶解限度であるUA≧7.0mg/dLが高尿酸血症の定義として用いられており、痛風患者のUA降下目標としてUA<6.0mg/dLが用いられています。

〇病態

過剰な尿酸産生、腎でのクリアランスの低下、腸分泌の減少の3つの要素により高尿酸血症が惹起されるとされています。過剰な尿酸産生の原因として、下記の遺伝疾患、血液疾患、薬物などが挙げられます。

また、腎での尿酸クリアランスの低下の原因として下記のものが挙げられいます。

〇疫学

食生活の欧米化に伴ってわが国の高尿酸血症患者数は年々増加しており、2010年ころには成人男性の20-25%に高尿酸血症が認められるとされます。全人口では男性の20%、女性で5%と報告されています。女性より男性の方が多いのは女性ホルモンが尿酸代謝に関与しているためとされます。

高尿酸血症患者の80%に高血圧、肥満、耐糖能異常、脂質異常症といった生活習慣病が合併しているとされ、その背景には内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性が関与することが示唆されています。

〇リスク

①尿酸沈着障害

痛風、慢性痛風性関節炎、痛風結節などが挙げられます。ただし、高尿酸血症の患者全体のうち、これらを引き起こすのは1/3に満たないとされます。痛風については後述します。

➁慢性腎臓病(CKD)

高尿酸血症とCKD関連性は議論の余地がある所です。古典的には高尿酸血症の患者では腎間質に尿酸血症が沈着することでCKDを惹起するとされていました。一方で最近の研究では、高尿酸血症が腎毒性を呈するのは男性で13mg/dL、女性で10mg/dLを超えて初めて現れるとされており、臨床的にそこまで重要ではないのではないかとされています。

③腎結石

高尿酸血症に伴い、尿中UAが高値となることで尿酸結石の原因となることが知られています。

〇マネジメント

一般的に痛風などがない無症候性高尿酸血症では介入する必要がないとされています。

一方でUA≧13mg/dLなど、無症候性であっても顕著な高尿酸血症である場合は治療介入と原因疾患の検索が推奨されています。

また、CKDのある高尿酸血症の患者では治療介入をするべきであるという意見もありますが、CKD-FIX試験やPERL試験の結果、アロプリノールによる尿酸降下療法はCKDの進行を抑制しませんでした。このため、CKDのある高尿酸血症に治療介入する意義は乏しいとされています。

痛風

〇病態

前述の通り、高尿酸血症は痛風のリスクではありますが、高尿酸血症の患者の大多数は痛風を発症しません。関節内に尿酸ナトリウム血漿が形成され、そこに炎症反応が起こるという一連のプロセスを経て痛風は発症します。高尿酸血症→痛風発症の個人差についてのメカニズムははっきりとしたことはわかっていません。

痛風発作による急性炎症は、単球が尿酸ナトリウム血漿を貪食し、NLRP3インフラマソームの活性化によりIL-1βが産生されることで生じ、急性の関節炎を引き起こします。その後、好中球が遊走しNET(好中球細胞外トラップ)が形成され、前炎症性物質が分解されることで痛風発作は終息します。このNETはその後の痛風結節形成に関与しているといわれています。

〇疫学

前述の通り、高尿酸血症を有する患者のうち痛風を発症するのは1/3に満たないといわれています。本邦では痛風の有病率は、30歳以上の男性では1%を超えているとされ、現在も増加傾向です。

〇臨床的特徴

痛風発作は典型的には単関節性で、下肢、特に第1MTP関節に生じることが多いです。12-24時間以内に疼痛は最大となり、未治療であっても数日-数週間以内に完全に消失します。また、日中よりも夜間に生じることが多いとされます。下記は典型的な痛風発作の画像になります。

痛風患者の20%は多関節炎パターンを呈するとされ、高尿酸血症・痛風を未治療のまま放置しているとその頻度が上昇するとされます。

痛風結節は尿酸ナトリウム血漿と周囲の結合組織の慢性炎症の結果、形成される結節です。耳や肘などの関節構造、腱、滑液包に生じ、通常痛みはありません。

ときおり下記のように痛風結節に炎症が起きることがあります。

〇検査所見

関節穿刺を行った場合、関節液は炎症性であり、WBCは10,000-100,000まで上昇していることが多く、好中球が優位です。また、偏光顕微鏡では尿酸ナトリウム結晶を認めます。

血液検査では炎症反応の上昇を認めますが、UA値は12-43%で正常値をとるため注意が必要です。ベースラインのUAの評価を行うには発作が収まってから2週間以降に行う必要があります。

〇画像所見

超音波検査では関節軟骨の表面を覆う線状高エコー(double countour sign)を認めます。

〇診断

関節穿刺で尿酸ナトリウム結晶を同定することで診断されることになりますが、手技の侵襲性や設備の問題から関節穿刺なしで臨床的に診断されることが多いです。

その場合、以下のスコアリングが参考になります。

・男性(2点)

・以前に同様の関節炎のエピソードあり(2点)

・1日以内に発症(0.5点)

・関節の発赤(1点)

・第1MTP関節の関与(2.5点)

・高血圧または少なくとも1つの心血管疾患(1.5点)

・血清尿酸値が5.88mg/dl以上(3.5点)

合計スコアが4点≧で可能性が低い、4-7点で可能性が中間、8点≦で可能性が高いと判断します。それぞれ痛風発作である可能性は2.2%、31.2%、82.5%とされています。

高尿酸血症・痛風の治療

〇痛風発作時の治療

①NSAIDs

NSAIDsは痛風発作に対して最も使用しやすい薬剤です。ナプロキセンやロキソプロフェン(痛風発作に対しては適応がないことに注意)を投与します。発作が現れてから48時間以内に治療を開始すると最も効果的であり、症状が消失してから2-3日で中止とできます。高齢者や腎機能障害のある患者では注意が必要です。

➁コルヒチン

発作が現れてから24時間以内に服用するとNSAIDsや経口ステロイドと同等の効果が期待できます。通常、発作初日は最初0.5mg 1-2錠を直後と数時間後に内服します。翌日からは1錠/日を関節炎が収まるまで内服させます。下痢などの胃症状や頭痛、末梢神経障害などの副作用に注意が必要です。腎障害がある場合は使用できません。

③経口グルココルチコイド

腎機能障害があったりしてNSAIDs、コルヒチン共に使用できない場合に選択肢となります。通常PSL 0.5mg/kg/日を投与し、7-10日かけて漸減終了します。

〇尿酸降下療法

前述の通り、痛風発作がある高尿酸血症の患者に対して尿酸降下療法を検討します。

ちなみに本邦のガイドラインでは8.0≦UA<9.0mg/dLの場合はCKDなどの合併症がある場合に、9.0mg/dL<の場合は合併症がなくても尿酸降下療法を検討するとされています。

目標値はUA<6.0mg/dLを目指して行います。

尿酸降下薬には尿酸合成阻害薬と尿酸排泄促進薬がありますが、基本的には前者を使用します。

第一選択は尿酸合成阻害薬であるアロプリノールです。基本的には使用しやすい薬剤ですが、薬剤過敏症症候群の発症に注意が必要です。また、CCr<30でも禁忌となります。

最近使用頻度が増えているフェブキソスタットはアロプリノールと比較して非劣性が証明されています。1日1回の投与でよく、腎機能による調整が不要である点がアロプリノールと比較してのメリットです。フェブキソスタットは一時心血管イベントのリスクが懸念されていましたが、その後の研究においては否定的な結果が出ています。どちらかと言えばフェブキソスタットのリスクについての議論は下火になってきている印象がありますが、いまだに決着がついていない分野ですので基本的にはアロプリノールを優先して使用するのが無難と考えます。

また、最近トピロキソスタットという尿酸合成阻害薬も販売されていますが、アロプリノールやフェブキソスタットに対する優位性はわかりません。少なくともup to dateには記載がありませんでした。

尿酸排泄促進薬にはベンズブロマロンプロベネシドがありますが、ベンズブロマロンの方がプロベネシドより優れた尿酸降下作用を持つとされます。いずれも尿路結石の既往があったり、腎機能が低下している場合には使用できません。

参考

・up to date

・N Engl J Med 2022; 387:1877-1887

・高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版