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抗RANKL抗体(デノズマブ、プラリア®)

  • 2022年9月28日
  • 2023年9月15日
  • 骨粗鬆症
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作用機序

抗RANKL抗体は骨粗鬆症診療において、個人的にはBP製剤に次いで使用頻度の高い薬剤です。RANKLはreceptor activator for nuclear factor κ-B ligandの略になります。RANKLは骨芽細胞に発現しており、前破骨細胞側のRANKと結合することで前破骨細胞→破骨細胞への分化を誘導します。抗RANKL抗体はRANKLと結合し、RANK-RANKLの結合を阻害することで破骨細胞への分化を抑制し、骨吸収を低下させます。BP製剤との大きな違いとして、抗RANKL抗体は骨に残存しないことが挙げられます。この特徴は後療法の必要性に関わってくるため記憶しておきましょう。

抗RANKL抗体の種類

抗RANKL抗体は一般名をデノズマブと呼びますが、プラリア®とランマーク®という2種類が販売されています。骨粗鬆症に適応があるのは前者のプラリア®であり、半年に1度投与を行います。一方、後者は悪性腫瘍の骨転移に対して使用されます。私も肺癌診療を行っていましたので、ランマーク®にはよくお世話になったものです。

エビデンスと特徴

①骨密度について

2015年のメタアナリシスでプラセボ群と比較し骨密度を上昇させることが分かっています。1)

➁骨折の一次予防

一次予防について検討したstudyはないようです。参考までに、文献2)については、対照群のうち73.4%に既存骨折がなかったとのことであり、一次予防効果がある可能性はあるのではないかと思います。この点を検討するstudyが出てくれば面白いかもしれません。

③骨折の二次予防

閉経後女性を対象としてFREEDOM研究では、対象患者の24%に既存の椎体骨折があり、デノズマブ投与群がプラセボ群に対し椎体骨折、大腿骨近位部骨折、非椎体骨折のいずれも有意に減少させました2)

まとめますと、デノズマブには骨折の一次予防について確固たるエビデンスはないが、骨密度の上昇、二次予防における椎体、大腿骨骨折のリスク低減についてはエビデンスがある、ということになるかと思います。

副作用

①皮膚症状

FREEDOM試験において、プラセボ群と比較し湿疹、蜂窩織炎の頻度が高くなることが示されています。私は実臨床上では遭遇したことはありませんが、抑えておくべき副作用だと思います。

➁低カルシウム血症

CKDや副甲状腺機能低下症、吸収不良症候群のある患者で発症する可能性が上昇するといわれています。定期的な採血による血漿Ca濃度のチェックが望ましいです。

③顎骨壊死、異型骨折

骨のリモデリングを抑制することで効果を発揮するため、年間0.25%の頻度で顎骨壊死を発症したり、異型骨折の報告もあるそうです。

また、副作用とは異なりますが、抗RANKL抗体を中止してしまうと骨吸収が促進されてしまい、急速に骨密度が低下することがわかっています。このため、やむを得ず抗RANKL抗体を中止する場合でも、可能であれば他の骨粗鬆症治療薬の使用を検討するべきです。

実際の使い方

抗RANKL抗体ですが、他剤との比較検討試験に乏しいこともあり、エビデンスの蓄積されたBP製剤の使用を優先すべきと考えます。具体的な使用方法としては、以下の場合に使用が検討されると考えます。

①GERDや腎機能低下でBP製剤が使用できない

➁BP製剤を3-5年使用した後治療を行う

③BP製剤の効果が乏しい

繰り返しになりますが、中止する場合は可能であれば別の治療薬への切り替えを検討しましょう。ただ、寝たきりとなってししまい骨粗鬆症治療の意義が薄まってしまった場合にはその限りではありません。

抗RANKL抗体のまとめ

参考

論文

1)Gu HF, et al: Efficacy and Safety of Denosumab in Postmenopausal Women With Osteoporosis: A Meta-Analysis. Medicine(Baltimore). 2015; 94:e1674

2)Cummings SR, et al; FREEDOM Trial: Denosumab for prevention of fractures in postmenopausal women with osteoporosis.N Engl J Med. 2009; 361: 756-765.

・竹内靖博 編:もう悩まない!骨粗鬆症診療 新装版: 2022

・南郷栄秀, 岡田悟 編: なんとなくDoしていませんか?骨粗鬆症診療マネジメント. Gノート, 4(1): 2017