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選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)

  • 2022年10月1日
  • 2023年9月15日
  • 骨粗鬆症
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作用機序

SERM選択的エストロゲン受容体モジュレーターの略であり、骨粗鬆症に用いられる薬剤です。そもそもの話ですが、健常人ではエストロゲンは破骨細胞への分化を抑制し、骨代謝の一翼を担っています。女性の場合、閉経によりエストロゲンの分泌が低下してしまい、破骨細胞への抑制がとれて骨吸収が優位となるため骨粗鬆症になりやすくなります。元々骨粗鬆症において女性ホルモン補充療法は試みられていましたが、服用による冠動脈疾患や浸潤性乳癌の増加など、その副作用がネックとなっていました。そこで登場したのがSERMです。これは骨組織のエストロゲン受容体にアゴニストとして作用しますが、乳腺組織や子宮ではアンタゴニストとして作用します。このため、骨密度の上昇作用のみならず、浸潤性乳癌のリスク低減作用も持ち合わせています。

SERMの種類

本邦で使用できるSERMにはラロキシフェン(エビスタ®)バゼドキシフェン(ビビアント®)があります。前者は60mg 1錠 73.4円,後者は20mg 1錠 76.2円と薬価に大きな差はありません。

SERMのエビデンス

①骨密度について

ラロキシフェンにおいて、2002年のシステマティックレビューでプラセボと比較し骨密度の上昇が確認されています。1)

②骨折の予防

ラロキシフェンについては、閉経後骨粗鬆症女性を対象としてCORE試験において、椎体骨折を有意に減少させました。ただし、大腿骨骨折を含めた非椎体骨折は減少させませんでした。2)

ラロキシフェンと椎体骨折

バゼドキシフェンについても、椎体骨折を有意に減少させましたが、非椎体骨折は有意差がつかなかったという同じような結果でした。3)

副作用

ほてり、下肢筋痙攣、末梢浮腫の頻度が高いとされています。臨床的に重要なものとして、静脈血栓症が挙げられます。場合によっては生命にかかわる合併症のため、患者さんによく説明しておく必要があります。逆に、静脈血栓症の患者さんを見つけた場合はSERMを内服していないか確認することが重要といえます。

実際の使い方

SERMは「椎体骨折以外の骨折を減らしたというエビデンスはない」というのが大きな特徴です。直接的にADLや生命予後に関わる大腿骨骨折については明らかな効果がありません。若年のうちは大腿骨骨折よりも椎体骨折の方が起こりやすいといわれているため、比較的若い女性の患者さんはよい適応になるかもしれません。とはいえ、リスクが高い患者さんにはよりエビデンスの高いBP製剤を使用すべきと考えます。私見ですが、若年かつYAM 70-80%の患者さんには使用を考慮してもよいのではないでしょうか。

SERMのまとめ

参考

論文

1)Cranney A, et al. Meta-analyses of therapies for postmenopausal osteoporosis. IV. Meta-analysis of raloxifene for the prevention and treatment of postmenopausal osteoporosis. Endcr Rev. 2002; 23: 524-528.

2)Delmas PD, et al: Efficacy of raloxifene on vertebral fracture risk reduction in postmenopausal women with osteoporosis: four-year results from a randomized clinical trial. J clin Endcrinol metab. 2002; 87: 3609-3617.

3)Silverman SL,et al: Efficacy of bazedoxifene in reducing new vertebral fracture risk in postmenopausal women with osteoporosis: results from a 3-year, randomized, placebo-, and active-controlled clinical trial. J Bone Miner Res. 2008; 23: 1923-1934.

・竹内靖博 編:もう悩まない!骨粗鬆症診療 新装版: 2022

・南郷栄秀, 岡田悟 編: なんとなくDoしていませんか?骨粗鬆症診療マネジメント. Gノート, 4(1): 2017