はじめに
経口薬やGLP-1受容体作動薬を使ってもHbA1cが下がりきらない。そろそろ基礎インスリンを、と考えたところで手が止まる。外来でそんな経験をしたことはないでしょうか。患者さんにとって「毎日注射を打つ」ことの心理的な負担は、私たちが想像するより大きいものです。さらに、自己注射が難しい高齢の方では、家族や訪問看護が毎日打つことは現実的ではなく、インスリンが必要とわかっていても導入を見送る場面があります。
こうした場面の選択肢として登場したのが、週1回投与の基礎インスリン製剤であるインスリン イコデク(アウィクリ®)です。注射回数は年間365回から52回に減ります。一方で、「1週間効き続ける」という性質は、これまでの基礎インスリンにはなかった注意点も生みます。今回は、アウィクリの仕組みとエビデンス、実際の使い方と注意点を、海外の状況も含めて整理していきたいと思います。
アウィクリとは
アウィクリは、アルブミンに強く結合することで半減期を約1週間まで延ばした基礎インスリンアナログです。国内では2024年6月に承認されました1)。
なぜ1週間効くのか
インスリン イコデクは、ヒトインスリンのアミノ酸配列の一部を改変し、炭素数20の脂肪酸側鎖を付けた構造をしています2)。この側鎖がアルブミンと可逆的に結合します。皮下から血中に入ったイコデクは、99%以上がアルブミンに結合し、その状態では作用を示しません1)。そこから少しずつ離れてインスリン受容体に結合するため、血中に「不活性な貯蔵庫」ができるイメージです。アミノ酸の改変には、受容体への親和性を下げて分解を遅らせる役割もあるとされています2)。
その結果、半減期は約155〜164時間(およそ1週間)となります1)。デグルデクの半減期が国内添付文書で18時間であることを考えると、桁違いの長さです。
押さえておきたい薬物動態
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 半減期 | 約155〜164時間(約1週間) |
| 最高血中濃度到達時間 | 投与後およそ12〜21時間(中央値) |
| 定常状態まで(2型、初回増量なし) | 3〜4週 |
| 定常状態まで(2型、初回1.5倍増量あり) | 2〜3週(推定) |
| 低血糖が最も多い時期 | 各投与後2〜4日 |
いずれも添付文書1)の記載です。「効果が安定するまでに数週間かかる」「低血糖は投与後2〜4日目に多い」の2点は、後述する使い方と注意点の土台になります。
製剤の特徴
・濃度は700単位/mLで、従来の100単位/mL製剤の7倍です。1週間分を1回で打つため、注入する液量は連日製剤の1日分とほぼ同じになります。
・ペンは総量300単位と総量700単位の2規格があります1)。
・ダイアルは1クリックが10単位で、用量は10単位刻みでしか設定できません1)。
・使用開始後は、300単位製剤は6週間以内、700単位製剤は12週間以内に使い切ります1)。
アウィクリのエビデンス:ONWARDS試験群
2型糖尿病では、HbA1c改善は連日投与の基礎インスリンと同等以上、低血糖は絶対数こそ少ないもののやや多い、というのが全体像です。1型糖尿病では低血糖がおよそ2倍に増えました。
アウィクリの第III相試験はONWARDS 1〜6の6本で、いずれも連日投与の基礎インスリンを対照としたtreat-to-target試験です。国内の添付文書に臨床成績が載っている4試験を並べます1)。
| 試験 | 対象 | 対照 | 期間 | HbA1c変化量(本剤 vs 対照) | レベル2・3の低血糖(件/人・年) |
|---|---|---|---|---|---|
| ONWARDS 13) | インスリン未使用の2型(984例) | グラルギンU100 | 52週 | −1.55% vs −1.35% | 0.30 vs 0.16 |
| ONWARDS 24) | 基礎インスリン使用中の2型(526例) | デグルデク | 26週 | −0.93% vs −0.71% | 0.73 vs 0.27 |
| ONWARDS 45) | Basal-Bolus療法中の2型(582例) | グラルギンU100 | 26週 | −1.16% vs −1.18% | 5.64 vs 5.62 |
| ONWARDS 66) | 1型(582例) | デグルデク | 26週 | −0.47% vs −0.51% | 19.93 vs 10.37 |
レベル2は血糖54 mg/dL未満、レベル3は回復に他者の介助を要する重症低血糖を指します。
2型糖尿病:効果は同等以上、低血糖はやや増える
ONWARDS 1と2では、HbA1cの群間差はそれぞれ−0.19%、−0.22%で、非劣性に加えて優越性も示されました1)3)4)。ONWARDS 1ではTime in Rangeも71.9% vs 66.9%と本剤群で良好でした1)。
一方、レベル2・3の低血糖は、ONWARDS 1で0.30 vs 0.16件/人・年、ONWARDS 2で0.73 vs 0.27件/人・年と、本剤群で多い傾向でした1)。1人あたり年に1回未満という頻度ではありますが、「低血糖が減る薬」ではない点は押さえておく必要があります。
Basal-Bolus療法中のONWARDS 4では、効果も低血糖も対照群とほぼ同じでした1)5)。
このほか、インスリン未使用の2型糖尿病を対象としたONWARDS 37)とONWARDS 58)があります。
1型糖尿病:低血糖がおよそ2倍!
ONWARDS 6では、HbA1cは非劣性でしたが、レベル2・3の低血糖は19.93 vs 10.37件/人・年と本剤群でおよそ2倍でした1)6)。夜間低血糖も3.38 vs 1.58件/人・年と多くなっています1)。
この結果を受けて、添付文書の「効能又は効果に関連する注意」には、1型糖尿病では連日投与の基礎インスリンを選ぶことも検討したうえで適用を慎重に考慮する、と明記されています1)。
ONWARDS試験群の解釈の注意
・多くは非盲検試験です。
・評価項目はHbA1cで、心血管イベントや細小血管合併症といったハードアウトカムを検証した試験ではありません。
・試験期間は最長でも52週+延長26週で、長期の安全性はこれから蓄積される段階です。
実際の使い方
基本は「週1回、同じ曜日に皮下注射」です。用量の考え方は、インスリン未使用の場合と、連日投与の基礎インスリンから切り替える場合とで分かれます。
インスリン未使用の患者に始める場合
添付文書上、初期用量は通常1回30〜140単位ですが、基礎インスリン未使用の患者では70単位以下を目安に、低用量から慎重に始めることとされています1)。
70単位/週は連日製剤の10単位/日に相当し、ONWARDS 1の開始用量でもあります1)3)。最小の30単位/週は約4単位/日に相当します。高齢者ややせ型の方では、30単位程度から始めるのが無難だと思います。
連日投与の基礎インスリンから切り替える場合
週1回量は「それまでの1日量×7」が目安です1)。ただし、そのまま切り替えると定常状態に達するまでの数週間は血糖が上がりやすいため、初回だけ1.5倍に増量する方法がとられます。
以下は、グラルギンやデグルデクを20単位/日で使っていた場合の例です。
| 1回目 | 2回目 | 3回目以降 | |
|---|---|---|---|
| 初回1.5倍増量あり | 210単位 | 140単位 | 140単位から調整 |
| 初回増量なし | 140単位 | 140単位 | 140単位から調整 |
ポイントは以下の3つです。
・2型糖尿病では初回1.5倍増量は「推奨」ですが、低血糖リスクとのバランスで要否を判断します。1型糖尿病では「原則」増量です1)。
・2回目は必ず7倍量に戻します。1.5倍を続けてしまう誤りに注意が必要です1)9)。
・高齢者では、初回の1.5倍増量を行わないという選択肢も学会のRecommendationで示されています9)。
なお、ペンは10単位刻みのため、計算結果は10単位刻みに丸める必要があります。
用量調整のやりかた
調整は3回目の投与以降に、朝食前血糖をみながら週10〜20単位の幅で行います10)。
連日製剤との最大の違いは、増量の効果が出そろうまでに時間がかかることです。定常状態まで3〜4週かかるため1)、「先週増やしたのに下がらない」と毎週増量を重ねると、数週間後に低血糖として跳ね返ってくるおそれがあります。連日製剤の感覚より一拍おいて調整するくらいがちょうどよいと考えます。
曜日の変更と打ち忘れ
・曜日を変更する場合は、前回投与から4日以上あけます1)。
・打ち忘れた場合は、気づいた時点ですぐに投与します。次回は4日以上あけ、以後は新しい曜日で週1回とします1)。
連日投与の基礎インスリンに戻す場合
戻すときの1日量は、週1回量の7分の1が目安です1)。問題は開始のタイミングで、最終投与後もしばらくイコデクの作用が残ります。
学会のRecommendationでは、最後の投与から1〜2週間の間で、朝食前血糖が180 mg/dLを超えた時点で開始するとされています9)。入院を機に連日製剤へ戻す場面で役立つ目安です。
併用薬について
他の糖尿病用薬との併用は「作用特性を考慮のうえ慎重に」とされています1)。SU薬やグリニド薬を併用している場合は、低血糖を避けるため、導入時に減量や中止を検討するのがよいでしょう。Basal-Bolus療法では、追加インスリンの用量見直しが必要になることがあります1)。
アウィクリを使用する上での注意点
アウィクリの注意点は、「一度打ったら1週間は取り消せない」という一点に集約されます。低血糖、投薬過誤、シックデイ、入院時の対応は、いずれもここから派生します。
低血糖は遷延し、再発する
臨床試験では、低血糖は各投与後2〜4日目に最も多くみられました1)。血糖測定のタイミングを指導する際には、投与日の翌々日から数日間の食前血糖を重点的にみてもらうとよいでしょう9)。
作用が持続するため、低血糖はいったん回復しても再発することがあります1)。重症例では、ブドウ糖の持続静注や入院での経過観察を考える必要があります9)。今後は救急外来で低血糖の患者さんを診たときに、「週1回のインスリンを使っていないか」を確認する習慣をつけておきたいところです。
投薬過誤:毎日打ってしまう、10倍量を打ってしまう
発売後6か月間(2025年1月30日〜7月29日)の市販後調査では、重篤な低血糖が28例報告されました9)。その中には、次のような投薬過誤が含まれていました。
・毎食前、あるいは毎日1回投与してしまった事例
・1クリックを1単位と誤認し、10倍量を投与した事例
連日製剤から切り替える患者さんほど、これまでの習慣で打ってしまう危険があります。「週1回だけ」「1クリック=10単位」「表示された単位数をそのまま合わせる」の3点は、処方医からも繰り返し伝える必要があります1)。切り替え時には、手元に残っている連日製剤をどうするかも確認しておきましょう。
切り替え後の高血糖・ケトアシドーシス
低血糖とは逆に、既存のインスリンから切り替えた後に糖尿病性ケトアシドーシスを発症した症例も報告されています9)。定常状態に達するまでの数週間は、インスリン作用が不足しうる時期です。特にインスリン依存状態の患者さんでは、切り替え直後の血糖測定を密にします。
シックデイ
連日製剤であれば、食事がとれない日は基礎インスリンを減量するという対応ができますが、アウィクリではすでに打った分を減らすことができません。
食事量が落ちたときは、血糖測定の回数を増やし、低血糖時の対応をあらかじめ本人と家族に伝えておきます。一方、感染症などでインスリン需要が増える場合は、アウィクリを増やすのではなく、速効型や超速効型インスリンで対応することが望ましいため、一旦は病院受診を勧めるのがよいでしょう1)9)。
食事量にむらがある高齢者では、そもそも適応を慎重に検討することとされています9)。
入院・周術期
糖尿病性昏睡、急性感染症、手術などの緊急時は、本剤のみで対応するのは適当でなく、速効型または超速効型インスリンを使用します1)。
入院時には、最終投与日と投与量を必ず確認します。絶食になる場合でも作用は数日から1週間以上続くため、ブドウ糖を含む輸液と血糖モニタリングで低血糖を防ぐことになります。連日製剤へ戻す場合の目安は前述のとおりです。
高齢者、小児、妊婦での留意点
高齢者、小児、妊婦への留意点をまとめると、以下の表のようになります。
| 背景 | 添付文書の記載1) |
|---|---|
| 高齢者 | 低血糖が発現しやすく、慎重に投与 |
| 重度の腎機能障害・肝機能障害 | 低血糖を起こすおそれがある(薬物動態への影響は小さい) |
| 妊婦 | 臨床試験成績なし。有益性が上回る場合のみ |
| 小児 | 臨床試験は未実施 |
日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会は、特に高齢者への使用についてRecommendationを公表しています(2025年4月策定、2026年3月改訂)9)。要点は次のとおりです。
・HbA1cの目標は厳格にしすぎない。
・何らかの手段で血糖測定を行い、家族や介護者にも低血糖時の対応を習得してもらう。
・訪問看護に依存する患者では、血糖を把握できる機会が限られるため、慎重に計画する。
・感染症や術前は速効型・超速効型インスリンを適宜併用する。
・初回の1.5倍増量は必ずしも行わない選択肢も考える。
導入は入院で行うべきか
結論から言えば、入院での導入は必須ではないと私は考えています。大切なのは導入の場所よりも、「打ち始めてからの数週間を、誰がどう見守るか」が決まっていることです。以下は私見を交えた整理です。
決まりはなく、比較したデータもない
添付文書にも学会のRecommendationにも、入院での導入を求める記載はありません1)9)。ONWARDS試験群も、外来で導入されています3)。
一方で、入院導入と外来導入を直接比べた研究は、調べた範囲では見当たりませんでした。どちらが安全かをデータで言い切ることはできず、薬の性質と患者さんの状況から考えることになります。
入院しても「いちばん見たい時期」は見られない
連日投与の基礎インスリンであれば、数日で効果が見えてくるため、入院中に用量をおおよそ決めることができます。アウィクリではそうはいきません。
定常状態に達するまでには3〜4週かかります1)。1〜2週間の入院では、効果が出そろう前に退院することになります。低血糖が起こりやすい投与後2〜4日目も、毎週、そして増量のたびに繰り返しやってきます。入院中に何も起きなかったことは、退院後の安全を保証しません。
加えて、入院中は食事量も活動量も自宅とは違います。病院食のもとで決めた用量が、食事にむらのある自宅でちょうどよいとは限りません。高齢の方では、入院そのものが筋力低下やせん妄のきっかけになりうることも無視できません。
外来・在宅で始めるための条件
通院も入院も難しい高齢者こそ、週1回投与の恩恵が大きい患者さんです。そこで入院を条件にしてしまうと、いちばん必要な人に届かなくなります。ただし、次の準備が整っていることが前提だと考えます。
・低用量で始める:インスリン未使用なら70単位以下、高齢者ややせ型の方ではさらに少なめにします1)。切り替えの場合は、初回の1.5倍増量を行わない選択肢も考えます9)。
・低血糖を起こしやすい薬を整理する:SU薬やグリニド薬は、導入時に減量や中止を検討します。
・血糖をみる日を決める:投与後2〜4日目の食前血糖が目安です9)。訪問看護やデイサービスの曜日から逆算して、投与する曜日を決めるとよいでしょう。リブレ®を用いた持続血糖測定や遠隔モニタリングも選択肢になります9)。私の勤務している病院では、基本的にはアウィクリとリブレの併用を行うようにしています。
・ペンは支援者が管理する:本人の手元に置かないことで、連日投与や10倍量投与といった投薬過誤を防ぎます。
・低血糖時の動きを決めておく:誰が気づき、何を摂らせ、どこに連絡するか。低血糖は遷延するため、回復後も食事と再測定が必要なことを伝えます。
・増量を急がない:HbA1cの目標は厳格にしすぎず9)、増量は数週間の間隔をあけて行います。血糖コントロールについては、心血管イベントの抑制などの長期的なものではなく、HHSやDKAなどの高血糖緊急症を避ける、など、最低限の目標に設定しておくのがよいでしょう。なお、ONWARDS 1〜5の統合解析では、65歳以上でも有効性と低血糖の傾向は若い年齢層と大きく変わらなかったと報告されています18)。ただし、試験に参加したのは自己管理のできる比較的元気な高齢者です。フレイルや認知症のある方に、そのまま当てはめることはできません。
入院での導入を考えたい場面
逆に、次のような場合は入院での導入、あるいは入院中の切り替えを考えます。
・1型糖尿病やインスリン依存状態の場合:切り替え後に糖尿病性ケトアシドーシスを発症した報告があります9)。ただし、私のような一般内科医はそもそも1型糖尿病の診療を行うことは望ましくなく、専門医に依頼するのが無難でしょう。
・著しい高血糖やケトーシスがあり、まず速やかな是正が必要な場合:アウィクリは効果が出るまでに時間がかかり、緊急時は速効型・超速効型インスリンで対応します1)。
・Basal-Bolus療法や高用量の基礎インスリンから切り替える場合
血糖をみる人が誰もいない、低血糖時の連絡体制が作れない、という場合は、入院で導入するかどうかよりも、適応そのものを考え直すべきでしょう。
別の理由で入院している間に導入することは、手技や低血糖対応を本人・家族・支援者と確認する機会として合理的です。その場合も、効果が出そろうのは退院後です。入院中の食事量を前提に増量しすぎないこと、退院後2〜4週間の血糖確認と受診・訪問の予定を決めてから退院することが大切です。
入院か外来かは、二者択一の問いではないのだと思います。問うべきは「どこで始めるか」ではなく、「始めた後の1か月を支える体制があるか」です。
海外の状況
アウィクリは日本だけの薬ではなく、EU、カナダ、オーストラリア、中国などですでに使われています。米国でも2026年3月に承認され、週1回インスリンは世界的に標準的な選択肢になりつつあります11)12)。
| 国・地域 | 状況 | 対象 |
|---|---|---|
| 日本 | 2024年6月承認、2025年1月30日発売 | インスリン療法が適応となる糖尿病(1型は慎重に) |
| EU | 承認済み | 成人の糖尿病 |
| カナダ、オーストラリア、中国など | 承認済み | 国により異なる |
| 米国 | 2026年3月26日承認 | 成人の2型糖尿病のみ |
米国の経緯は、この薬の性格をよく表しています。FDAは2024年7月、1型・2型の両方を対象とした最初の申請を承認しませんでした。理由の一つが、1型糖尿病での低血糖リスクへの懸念です11)。その後、ノボ ノルディスク社は対象を2型糖尿病に絞って2025年9月に再申請し、2026年3月に承認されました11)13)。
つまり米国では、1型糖尿病には使えません。日本やEUでは1型にも適応がありますが、日本の添付文書が1型での使用に慎重な姿勢をとっているのは、同じデータを踏まえたものです1)。
もう一つの週1回インスリン:インスリン エフシトラ アルファ
週1回の基礎インスリンには、イーライリリー社のインスリン エフシトラ アルファもあります。2026年に日本と米国で承認されました14)15)。
・EU:2026年6月に欧州医薬品庁の委員会(CHMP)が承認を勧告
・米国:2026年9月24日に承認(販売名Onswik、成人の2型糖尿病)
・日本:2026年9月16日に承認(販売名オンスイク注、インスリン療法が適応となる2型糖尿病)16)
アウィクリとの違いは2点です。
1つ目は半減期を延ばす仕組みです。イコデクが脂肪酸側鎖でアルブミンに結合するのに対し、エフシトラはインスリンをIgG抗体のFc領域と融合させています16)。
2つ目は用量の決め方です。インスリン未使用の2型糖尿病を対象としたQWINT-1試験では、週100単位で開始し、4週ごとに150、250、400単位へと段階的に上げる「固定用量」方式が用いられました17)。HbA1cはグラルギンに対して非劣性で、レベル2・3の低血糖はエフシトラ群のほうが少ないという結果でした17)。細かな単位調整を省く発想は、GLP-1受容体作動薬の増量方法に近いものです。
国内での発売時期や薬価は、執筆時点では確認できていません。今後は「週1回インスリンを使うか」に加えて、「どちらを選ぶか」も考える時代になりそうです。
どんな患者に向くか、向かないか
アウィクリが最も活きるのは、「基礎インスリンが必要だが、毎日の注射がネックになっている2型糖尿病」です。逆に、インスリン需要が日々変わる患者さんには向きません。以下は私見を交えた整理です。
| 向いている | 慎重に考える、または避ける |
|---|---|
| 毎日の注射への抵抗が強く、基礎インスリン導入が進まない2型糖尿病 | 1型糖尿病、特に低血糖を繰り返す場合 |
| 自己注射が難しいが、家族・訪問看護・施設職員が週1回なら打てる高齢者 | 食事量にむらがある、シックデイを繰り返す |
| 連日製剤の打ち忘れが多い | 血糖を確認する手段がない |
| 食事量と生活リズムが安定している | 入院や手術の予定が近い、ステロイド投与などで需要が変動する |
| 週1回の管理が難しく、支援者もいない(誤って連日打つおそれ) | |
| 妊婦、小児 |
まとめ
・アウィクリは、アルブミン結合により半減期を約1週間に延ばした週1回の基礎インスリンです。
・2型糖尿病では、HbA1c改善は連日製剤と同等以上ですが、低血糖はやや多くなります。1型糖尿病では低血糖がおよそ2倍で、慎重な適用が求められます。
・切り替えは「1日量×7」、初回のみ1.5倍増量を検討します。用量調整は3回目以降に、週10〜20単位の幅で、急がず行います。
・低血糖は投与後2〜4日目に多く、遷延・再発します。連日投与や10倍量投与といった投薬過誤の防止が重要です。
・海外でも承認が進み、2026年には米国でも2型糖尿病を対象に承認されました。2剤目の週1回インスリンであるエフシトラも登場しています。
・導入に入院は必須ではありません。低用量での開始、血糖をみる日、ペンの管理、低血糖時の対応を決めておけば、外来や在宅でも導入できると考えます。
「1週間効く」ことは、利便性であると同時に、取り消しがきかないということでもあります。この両面を患者さんと共有したうえで使いたい薬です。
参考文献
1)アウィクリ注フレックスタッチ 添付文書(2026年4月改訂 第5版) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/620023_2492424G1022_1_05
2)Nishimura E, et al. Molecular and pharmacological characterization of insulin icodec. BMJ Open Diabetes Res Care 2021;9:e002301.
3)Rosenstock J, et al. Weekly icodec versus daily glargine U100 in type 2 diabetes without previous insulin (ONWARDS 1). N Engl J Med 2023;389:297-308.
4)Philis-Tsimikas A, et al. Switching to once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin degludec in basal insulin-treated type 2 diabetes (ONWARDS 2). Lancet Diabetes Endocrinol 2023;11:414-425.
5)Mathieu C, et al. Switching to once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin glargine U100 in basal-bolus insulin-treated type 2 diabetes (ONWARDS 4). Lancet 2023;401:1929-1940.
6)Russell-Jones D, et al. Once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin degludec as part of a basal-bolus regimen in type 1 diabetes (ONWARDS 6). Lancet 2023;402:1636-1647.
7)Lingvay I, et al. Once-weekly insulin icodec vs once-daily insulin degludec in adults with insulin-naive type 2 diabetes (ONWARDS 3). JAMA 2023;330:228-237.
8)Bajaj HS, et al. Once-weekly insulin icodec with dosing guide app versus once-daily basal insulin analogues in insulin-naive type 2 diabetes (ONWARDS 5). Ann Intern Med 2023;176:1476-1485.
9)日本糖尿病学会・日本老年医学会 合同委員会. 高齢者における週1回持効型溶解インスリン製剤使用についてのRecommendation(2025年4月18日策定、2026年3月31日改訂) https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/icodec.pdf
10)ノボ ノルディスク ファーマ. アウィクリ注 投与ガイド(医薬品リスク管理計画 資材) https://pro.novonordisk.co.jp/content/dam/hcp-plus/jp/ja/documents/download-materials/awiqli-dosing-guides-for-hcp.pdf.coredownload.inline.pdf
11)Medscape. FDA Approves First Once-Weekly Insulin for Type 2 Diabetes. 2026年3月30日
12)diaTribe. FDA Approves Once-Weekly Basal Insulin Awiqli for Type 2.
13)Managed Healthcare Executive. Novo Nordisk Resubmits BLA for Once-Weekly Insulin for Type 2 Diabetes.
14)Medscape. FDA Approves Efsitora Once-Weekly Basal Insulin Injection. 2026年9月24日
15)Eli Lilly and Company. FDA approves Lilly’s Onswik (insulin efsitora alfa-gobe). プレスリリース, 2026年9月24日
16)新薬情報オンライン. オンスイク注(インスリン エフシトラ)の作用機序・特徴 https://passmed.co.jp/di/archives/20234
17)インスリン治療歴のない2型糖尿病に対するインスリンエフシトラの週1回固定用量投与(QWINT-1). N Engl J Med 2025;393:325. 日本語アブストラクト
18)Lingvay I, et al. Efficacy and hypoglycemia profile of once-weekly insulin icodec vs once-daily comparators across demographic subgroups. J Clin Endocrinol Metab 2025;110:e3596-e3606.