はじめに
HbA1cは7%前後で落ち着いている。それなのに、患者さんは「朝方に冷や汗で目が覚める」と言う。あるいは、インスリンを増やしてもHbA1cが下がらず、血糖自己測定(SMBG)のノートは空欄が目立つ…。外来でこうした場面に出会ったことはないでしょうか。
HbA1cは過去1〜2か月の平均を示す指標で、その裏にある日内変動や低血糖は教えてくれません。SMBGは「点」の情報であり、測っていない時間帯、とくに夜間のことはわかりません。この「見えていない時間」を線でつないでくれるのが持続血糖測定(CGM)です。なかでもFreeStyleリブレ®は、較正のための指先穿刺が不要で扱いやすく、糖尿病を専門としない医師の外来でも目にする機会が増えました。
今回は、リブレの仕組み、使える患者さんの範囲、データの読み方と治療への活かし方、そして注意点を整理していきたいと思います。
リブレとは
FreeStyleリブレは、上腕に貼ったセンサーで皮下の間質液中のグルコース濃度を連続して測り、血糖値に換算して表示する機器です。国内で現在使われているのはFreeStyleリブレ2です1)。
測っているのは「血糖」ではなく「間質液のグルコース」
センサーの細いフィラメントが皮下に入り、間質液中のグルコースを測定します。血液中のグルコースが間質液に移るまでには時間がかかるため、表示値は実際の血糖値より数分から10分ほど遅れます。
この遅れは、血糖が安定しているときにはほとんど問題になりません。差が開くのは、食後や運動後、低血糖からの回復期など、血糖が急に動いているときです。「指先で測った値と違う」という訴えの多くは、故障ではなくこの時間差で説明できます。
このため、リブレの値は一点の正確さよりも、流れと向きを見るものと考えるのがよいでしょう。画面にはグルコース値とともに、上昇中か下降中かを示すトレンド矢印が表示されます。
リブレ2の特徴

初代のリブレは、センサーにリーダーをかざした(スキャンした)ときだけ値がわかる方式で、間歇スキャン式CGM(isCGM)と呼ばれていました。リブレ2では、スキャンしなくても値が自動で届き、アラートも鳴らせます。使い勝手はリアルタイムCGMに近づいています。
アラートは、無自覚性低血糖のある患者さんや、夜間低血糖が心配な高齢者でとくに役立ちます。一方、鳴りすぎると「アラート疲れ」で通知を切ってしまうことがあるため、最初は低グルコース側だけ設定するのも一つの方法です。
データの共有
測定データはクラウド(リブレView)に保存され、医療機関側から確認できます1)。家族がスマートフォンで値を見守るアプリ(リブレLinkUp)もあります1)。外来では、受診前にデータが届いている状態を作っておくと、診察時間を読み解きと相談に使えます。
誰に使えるか
保険でリブレを使えるのは、原則として「インスリン製剤を1日1回以上自己注射している外来患者」です。1型か2型かは問いません2)。
保険適用の要点
以下は令和8年度診療報酬改定(2026年6月施行)後の内容です2)3)。

若手の先生にとって見落としやすいのは次の3点です。
- 医師の要件があります。 施設基準の届出は不要ですが、要件を満たす常勤医がいない施設では算定できません2)。自分の外来で導入する前に、院内の体制を医事課に確認しておきましょう。
- 指先測定のセンサーや試験紙の費用は加算に含まれます。 「7」を算定する月は、月の測定回数に応じた加算(「1」〜「6」)を重ねて算定できません2)。
- 週1回のインスリン イコデクも対象になります。 承認された用法どおりに自己注射していれば、1日1回以上の患者に準じて算定できるとされています2)。
対象にならない患者

インスリンを使っていない患者さんがリブレを希望する場合は、2024年に設けられた選定療養の枠組みがあります4)。保険診療と併せて、機器の費用を患者さんの自己負担で使ってもらう仕組みです。料金は「7」の1,250点相当額を標準に、社会的に見て妥当な範囲で医療機関が設定します4)。
ここで見落としやすいのが、選定療養にも保険診療と同じ人員要件がかかる点です。日本糖尿病学会の通知では、対象となるのは「C150に掲げる血糖自己測定器加算に係る人員に関する要件を満たす保険医療機関」での使用、またはその医療機関が交付した処方箋に基づいて保険薬局が支給する場合に限る、とされています4)。「保険では対象外だが選定療養なら」と考える前に、自施設が要件を満たすかの確認が必要です。
同通知では、良い適応として次が挙げられています4)。
- 食事・運動療法の評価
- 現在使用している内服薬の評価
- 内服薬の増量時・追加時・切り替え時などの評価
- 健診等で保健指導判定値を超えた人における食後高血糖の評価
実務上は、費用を院内の見やすい場所に掲示したうえでウェブサイトにも掲載すること、保険診療分と選定療養分を明確に区分した領収書を交付すること、費用を定めた際と毎年の実施状況を地方厚生(支)局長に報告することが求められます4)。導入前に医事課と相談しておきましょう。
また、GLP-1受容体作動薬で判断が分かれるのは、通知の書きぶりが違うためです。GLP-1受容体作動薬については「週1回以上自己注射している者に対して…インスリン製剤の自己注射を行っている者に準じて算定する」とされる一方、インスリン イコデクについては「インスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っている患者に準じて算定できる」と書き分けられています2)。「7」の対象要件は「1日1回以上」ですから、イコデクは明示的にここへ届きます。GLP-1受容体作動薬にはその限定がないため、「7」まで及ぶかが読み取れません。算定前に支払基金や地方厚生局に確認するのが安全です。
どんな患者さんで考えたいか
保険の対象になることと、使う意義が大きいことは別です。以下は私見ですが、次のような場面では積極的に検討してよいと考えます。
- 低血糖が疑われるが、SMBGでは捉えられていない(夜間の発汗、朝の頭痛、原因のはっきりしない転倒)
- 無自覚性低血糖がある、または高齢で低血糖症状を訴えにくい
- HbA1cとSMBGの値が合わない
- 指先穿刺の負担が大きく、SMBGが続かない
- インスリンを導入した直後や、種類・用量を大きく変える時期
- 自分で測ることは難しいが、家族や訪問看護が値を確認できる
反対に、データを見ても行動や治療が変わらない状況では、費用と手間に見合いません。導入の前に、「何を知りたくて着けるのか」を患者さんと共有しておくことが大切です。
データの読み方
リブレのレポートは情報量が多く、最初はどこから見ればよいか迷います。読む順番を決めてしまうのがコツで、「データは足りているか、低血糖はないか、全体の水準はどうか、いつ崩れているか、なぜ崩れているか」の順に見ていきます。
AGPレポートとは
AGP(Ambulatory Glucose Profile)は、複数日のデータを1日24時間の時間軸に重ねて表示したグラフです。レポートには、主に次の3つが載っています。
- 統計値:平均グルコース値、血糖値管理指標(GMI)、変動係数(%CV)、各範囲にいた時間の割合
- AGP曲線:時刻ごとの中央値と、ばらつきを示す帯
- 日別のグラフ:1日ごとの推移
押さえる指標と目標値
各範囲にいた時間の割合は、次の3つの略語で表されます。
- TIR(Time in Range):70〜180 mg/dLの範囲内にあった時間
- TBR(Time Below Range):70 mg/dL未満の時間
- TAR(Time Above Range):180 mg/dLを超えた時間
国際コンセンサスが示す目標値は以下のとおりです5)6)。

割合は時間に置き換えると実感しやすくなります。1日の1%は約15分です。TBR 4%は1日あたり約1時間、TIR 70%は約17時間にあたります。
高齢者やハイリスクの患者さんでは、TIRの目標を下げる代わりに、低血糖の許容幅がより厳しくなっている点に注目してください。「高めは許容するが、低血糖は起こさない」という考え方です。
読む順番
- データは十分か:14日間のうち、センサーが稼働していた割合が70%以上あることが目安です6)。足りなければ、統計値は参考程度にとどめます。
- 低血糖はないか: 最初にTBRを見ます。目標を超えていれば、高血糖があっても先に低血糖への対応を考えます。
- 全体の水準はどうか:TIR、平均グルコース、GMIを確認します。
- いつ崩れているか:AGP曲線で、低い時間帯と高い時間帯を特定します。
- なぜ崩れているか:日別グラフと、食事・運動・注射の記録を照らし合わせます。

AGP曲線の見方

中央の線は、その時刻の中央値です。その外側の濃い帯は25〜75パーセンタイル、さらに外側の薄い帯は10〜90パーセンタイルを示します。
- 中央の線が高い(低い)時間帯は、毎日のように高い(低い)ということです。薬の種類や用量を見直す手がかりになります。
- 帯の幅が広い時間帯は、日によって値がばらついています。食事の内容や時刻、運動、注射のタイミングといった生活面に原因があることが多く、薬を動かす前に話を聞く必要があります。
変動の大きさは変動係数(%CV)でも確認でき、36%以下が目安です6)。

GMIとHbA1cが合わないとき
GMI(Glucose Management Indicator)は、CGMの平均グルコースから推定したHbA1c相当の値です7)。実測のHbA1cと並べて見ると、乖離に気づくことがあります。
GMIよりHbA1cが明らかに低い場合は、赤血球寿命が短くなる状態(溶血、出血、腎性貧血、肝硬変など)を考えます。逆に高い場合は、鉄欠乏などが候補です。こうした患者さんでは、HbA1cよりもCGMの指標のほうが実態を表していると考えて治療目標を立てます。
なお、GMIは装着していた期間だけを反映します。装着期間だけ食事に気をつけていた、ということもあるため、普段の様子も合わせて聞いておきましょう。
結果をどう治療に活かすか
原則は以下の3つです。
①低血糖を先に直す
②一度に変えるのは一つにする
③変えたら次のデータで確かめる
以下は一般的な考え方をまとめたもので、個々の調整は患者さんの状況に合わせて判断してください。

基礎インスリンは「夜間の傾き」で評価する
基礎インスリンの量が適切かどうかは、食事の影響が消えた夜間の推移で判断できます。就寝時から起床時にかけてほぼ水平であれば適量、右下がりなら過量、右上がりなら不足と考えます。
SMBGでは、朝食前血糖だけを頼りに基礎インスリンを増やしがちです。しかし、就寝時から高いまま朝を迎えているだけなら、原因は夕食側にあります。ここを見分けられることが、CGMの大きな利点です。
朝の高血糖:暁現象か、夜間低血糖の後か
朝食前血糖が高いとき、基礎インスリンを増やす前に夜間のTBRとAGP曲線を確認します。夜間に低血糖があれば、増量は逆効果になりえます。「朝が高いから増やす」を繰り返して夜間低血糖を悪化させる、という落とし穴を避けられます。
患者さんと一緒に見る
リブレのデータは、医師が調整に使うだけでなく、患者さん自身の気づきを引き出す道具でもあります。「この日の昼は何を食べましたか」「この日は歩いたのですね」と一緒にグラフを見ると、食事や運動の影響を本人が実感できます。
診察のたびに指摘する点は、多くても2つまでに絞るのがよいでしょう。良くなっている点を先に伝えることも、継続の助けになります。
注意点
リブレの値は便利ですが、常に正しいわけではありません。「値がずれやすい場面」と「指先で確かめるべき場面」を知っておくことが、安全に使うための前提です。
値がずれやすい場面

夜間に低血糖が記録されていても、すべてが本物とは限りません。急に落ちて短時間で元に戻る谷は、圧迫による見かけの低値のことがあります。本人に寝る向きを尋ね、症状の有無や、反対側の腕に貼った期間のデータと見比べます。
センサーは装着後60分で測定を始めますが10)、添付文書では装着後12時間はセンサーの測定値と血糖値との差が大きくなる場合があるとされています10)。最初の半日ほどは参考程度と考えておくのが安全です。
指先で確かめるべき場面
メーカーの資料では、次の場合に血糖自己測定器を併用することとされています1)。
- センサーが低血糖、または低血糖の可能性を示しているとき
- 症状と測定値が一致しないとき、または値の正確さに疑問があるとき
とくに大切なのは、「値は正常だが低血糖症状がある」ときです。症状を優先し、まず補食してから指先で確認するよう伝えておきます。インスリンの追加打ちを判断する場面でも、値に違和感があれば指先で確かめるのが無難です。
なお、センサーの測定範囲は40〜500 mg/dLです10)。40 mg/dL未満では「LO」、500 mg/dLを超えると「HI」と表示され、数値は出ません。この場合は指先で血糖を確認し、それでもLOまたはHIが表示されるときはすぐに医師に連絡するよう伝えておきます10)。
グラフの縦軸は通常350 mg/dLまでですが、350 mg/dLを超える値があるときは自動的に500 mg/dLまで拡大されます11)。高い値が切り捨てられて見えなくなることはありません。
画像検査:MRIは装着したまま撮れない(禁忌) ※X線・CTは2026年に改訂
ここは2026年に変更があった点です。
MRI:添付文書の【禁忌・禁止】に挙げられています。「MRI検査前には必ず使用中のセンサーを取り外してください」とされ、理由は「センサーは金属を含んでおり、MR装置への吸着、故障、破損、火傷等が起こるおそれがあるため」と明記されています10)。注意喚起ではなく禁忌である点を押さえておきましょう。
なお米国では2024年10月に画像検査の禁忌が削除され、1.5Tまたは3TのMRIであれば、条件を満たせば装着したまま撮像できるとされています9)。日本は2026年7月にX線・CTのみ追随し、MRIは据え置いた、という順序になります。
X線・CT: 従来は取り外すこととされていましたが、2026年7月の表示材料(添付文書・取扱説明書等)の改訂で、この注意事項が削除されました8)。標準的な撮影条件下では、センサーの破損、測定値への影響、通信障害、温度上昇のいずれも生じないことが確認されたことが根拠とされています。検査中もモニタリングは中断されません。
改訂版の文書は2026年10月以降の出荷分から順次使われ、当面は改訂前の文書が入った製品も流通します8)。実務で最初に問題になるのは「いま患者さんが着けている、旧版の説明書が入っていたセンサーはどうするのか」です。院内で運用を決める際は、この点をメーカーに確認したうえで放射線部門と共有しておくと確実です。院内の検査マニュアルが旧記載のままになっていることもあります。
皮膚トラブルと剥がれ
粘着テープによるかぶれは、継続を妨げる代表的な理由です。貼る位置を毎回変える、皮膚をよく乾かしてから貼る、といった基本を確認します。繰り返す場合は、皮膚保護剤の使用や皮膚科への相談を考えます。
汗や激しい運動で剥がれやすい方もいます。緩んだセンサーは値が信頼できなくなるため、交換が必要です10)。
その他
- 空港のボディスキャナーには、X線またはミリ波を用いるものがあり、センサーへの影響は評価されていません。取扱説明書では、センサーを外さずに済むよう別の検査方法を申し出ることができるとされる一方、ボディスキャナーを使う場合はセンサーを取り外す必要があると明記されています11)。なお、空港の金属探知機は問題ありません11)。旅行の予定がある患者さんには、センサーの交換日を出発に合わせる方法も案内できます。
- 海外の製品情報では、1日500 mgを超えるビタミンC(アスコルビン酸)の摂取で、センサーの値が実際より高く出ることがあるとされています9)。国内の資料には記載がありませんが、サプリメントの使用を確認しておきましょう。
- 値が常に見えることで、不安が強くなったり、細かな変動に過剰に反応したりする方もいます。「一点ではなく流れを見る」と繰り返し伝えることが助けになります。
まとめ
リブレは「HbA1cの裏側」を見せてくれる道具です。導入するときに患者さんへ伝えておきたいことを、最後に整理します。
導入時に伝えること
- 測っているのは皮下の間質液で、指先の血糖値とは数分から10分ほどの時間差がある。値が少し違っても故障ではない。
- 一点の数字よりも、流れと矢印の向きを見る。
- 低い値が出たとき、または症状と値が合わないときは、指先で確かめる。症状があれば先に補食する。
- 装着してから12時間ほどは値がずれやすい。
- センサーは14日ごとに交換する。貼る位置は毎回変える。
- MRI検査の前には必ず外す。検査の予定があれば事前に知らせてもらう。
- 受診時にデータを一緒に見るので、気になった日の食事や出来事をメモしておいてもらう。
本記事のポイント
- リブレ2は、1分ごとの測定値がスマートフォンに自動で届き、アラートも使える持続血糖測定器です。
- 保険で使えるのは、原則としてインスリンを1日1回以上自己注射している外来患者です。医師の要件があるため、導入前に院内の体制を確認します。
- レポートは「データの量、低血糖、全体の水準、時間帯、原因」の順に読みます。目標はTIR 70%超、TBR 4%未満が基本で、高齢者では低血糖の回避を優先します。
- 調整は低血糖への対応を先に行い、一度に変えるのは一つにします。
- 値は万能ではありません。ずれやすい場面と、指先で確認すべき場面を患者さんと共有しておきましょう。
グラフを前にすると、つい数字の良し悪しを伝えたくなります。けれども、いちばん価値があるのは、患者さんが「この日は何があったか」を自分の言葉で語りはじめる瞬間かもしれません。データを会話のきっかけとして使いたいものです。
参考文献
1) アボットジャパン. FreeStyleリブレ2 使い方ガイド
2) 厚生労働省. 診療報酬の算定方法(令和8年厚生労働省告示)C150 血糖自己測定器加算
および「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」
3) 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について
4) 日本糖尿病学会. 間歇スキャン式持続血糖測定器に係る選定療養の運用について. 2024年7月1日
5) Battelino T, et al. Clinical targets for continuous glucose monitoring data
interpretation: recommendations from the international consensus on time in range.
Diabetes Care 2019;42:1593-1603.
6) American Diabetes Association Professional Practice Committee.
6. Glycemic Goals, Hypoglycemia, and Hyperglycemic Crises:
Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care 2026;49(Suppl 1):S132-S149.
7) Bergenstal RM, et al. Glucose management indicator (GMI): a new term for estimating
A1C from continuous glucose monitoring. Diabetes Care 2018;41:2275-2280.
8) アボットジャパン. グルコースモニタシステム「FreeStyleリブレ2」表示材料改訂のご案内. 2026年7月
9) Abbott. Safety Information(FreeStyle Libre 2 / Libre 2 Plus、米国)
10) アボットジャパン. FreeStyleリブレ2(センサー)添付文書. 2025年12月改訂(第2版).
承認番号 30300BZX00119000
11) アボットジャパン. FreeStyleリブレLink 取扱説明書