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肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチンの種類

肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(pnemococcal polysaccharide vaccine:PPSV)

PPSVは部分的に精製された肺炎球菌莢膜多糖体で構成されています。

1980年代に頻度の高かった23の血清型の肺炎球菌を型別に培養・増殖し、殺菌後に各々の型から抽出・精製した莢膜多糖体を混合した薬剤であるニューモバックス®が使用できます。

肺炎球菌結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine:PCV)

PCVは蛋白質に共有結合された肺炎球菌莢膜多糖体で構成されています。

莢膜多糖体を培養・抽出した後、無毒性変異ジフテリア毒素と還元的アミノ化反応により結合させ製造されています。さらに免疫原性を高めるため、アジュバントであるリン酸アルミニウムに吸着させ製剤化されています。一般的に、PPSVよりも免疫原性が高いとされています。

本邦では13価PCVであるプレベナー13®が使用できます。今後、15価PCVであるバクニュバンス®が販売予定です。また、米国では20価PCVであるPrevnar20®も販売されています。

小児に対する効果

小児ではPCVについて各種研究が行われています。以下、侵襲性肺炎球菌感染症と肺炎についてエビデンスを示します。

侵襲性肺炎球菌感染症(菌血症と髄膜炎)

11万3000人を含んだPCVについて6つのランダム化試験のメタアナリシス1)で、2歳未満の小児において、該当する血清型について80%、すべての血清型について58%減少させました。

血清型別
すべての血清型
肺炎

6つのランダム化試験のメタアナリシスで、2歳未満の小児において、X線で明らかな肺炎が27%、臨床的な肺炎が6%減少しました。肺炎については肺炎球菌に限らず、すべての起因菌を含めて減少効果があるようです。

X線で明らかな肺炎
臨床的な肺炎

成人に対する効果

成人ではPPSVとPCVそれぞれについて効果が検証されています。以下、各種ワクチンについてエビデンスをお示しします。

PPSV

PPSV23について、64,500人を超える個人を評価した18のランダム化試験のメタアナリシスで、侵襲性肺炎球菌感染症を82%減少させました。

侵襲性肺炎球菌感染症

ただし、研究によってばらつきがあり、結論としては侵襲性肺炎球菌感染症を減少させることは確かであるが、肺炎全体・全死亡を減らす強い根拠はない、というのが現状のエビデンスのようです。

PCV

PCV13またはいずれかを投与された、65歳以上のオランダ人84,000人を超える大規模なランダム化試験(CAPiTA試験3))では、4年間の追跡期間でワクチンと血清型が合致する侵襲性肺炎球菌感染症を75%減少させ、肺炎球菌性肺炎を46%減少させました。ただし、肺炎全体は減少させませんでした。

大規模な研究はこのCAPiTA試験のみではありますが、PCVは侵襲性肺炎球菌感染症と肺炎球菌性肺炎を予防する効果があるといえます。

PPSVとPCVのどっちがよいのか

これは結論をつけることが難しい問題です。以下、各ワクチンの強みと弱みをまとめます。

このように、効果についてはどっちもどっちというのが正直な所です。

米国疾病管理予防センターの予防接種諮問委員会(ACIP)では、65歳以上の成人に対し、

PCV20を単独

  または

PCV先行接種し、その後にPPSV23を接種する

ことが推奨されていますが、「2種類とも接種」の臨床効果を示したデータはまだありません。

本邦では65歳以上の成人に1回、PPSV23の定期接種が推奨されています。また、エビデンスレベルは乏しいものの、しばらくすると抗体価が低下するというin vitro研究などを踏まえて、5年以上空けて再度PPSV23を接種することが推奨されています。一方で、PPSV23の2回目以降の接種とPCV13の接種は任意接種です。

以下、日本感染症学会の65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方です。

結局どうしたらよいのか・・・?

強い根拠はありませんが、各種推奨を参考とし、個人的には以下のようするのがよいと考えます。

・今年定期接種ではない健康な高齢者(or 65歳未満でも脾摘後、免疫不全、髄液ろうなどhigh risk患者)

 -PPSV23接種歴がある場合→1年あけてPCV13を接種を推奨

 -PPSV23接種歴がない場合→PCV13の接種を推奨し、1年後以降に助成を受けつつPPSV23を接種

・今年定期接種の健康な高齢者

 -助成を受けつつPPSV23を接種して、1年後にPCV13接種を推奨

・脾摘後、免疫不全者では5年後にPPSV23の再接種を行う

自治体ごとに費用は差がありますが、定期接種のタイミングでPPSV23を接種するのであれば助成が出るので、そこはうまく利用したい所です。それ以外のタイミングでのPPSV23やPCV13は自費になるため、患者さんとよく相談しましょう。また、重症化しやすい脾摘後や免疫不全のある方には積極的にワクチン接種を推奨するようにしましょう。

参考

1)Cochrane Database Syst Rev. 2009 Oct 7;2009(4):CD004977.

2)Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;2013(1):CD000422.

3)N Engl J Med. 2015;372(12):1114. 

・Antaa slide

https://slide.antaa.jp/article/view/d56adfe1edc94576#35

・日本感染症学会

https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=38