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尿路結石のフォローはどうする?

先日研修医の先生から質問を頂いた際に調べた内容です。あまり深く考えたことがなかったので興味深く勉強させて頂きました。

尿路結石とは

〇疫学

日本人の7%で認められ、年間発症率1.38/1000とcommonな疾患です。結石にはシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸アンモニウムマグネシウム、尿酸、シスチン結晶がありますが、日本人にはシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムによるものが8割を占めます

〇診断

尿路結石は急性の腹痛、腰痛、迷走神経刺激による嘔吐を主訴として来院することが多いです。結石の位置より疼痛の性状、部位が異なり、腎臓では側腹部痛、血尿が多く、上部尿管では腰背部・側腹部痛、中部・下部尿管では側腹部-前腹部痛、尿道では排尿障害、頻尿が出現するとされます。

身体所見ではCVA叩打痛などが有名ですが、その頻度は半分程度であり、残り半分は下腹部の圧痛を呈するといわれます。(1

診断にはSTONE scoreが有用とされており、参考にするとよいでしょう。

画像所見にはエコー、X線(KUB)、CTなどのモダリティがあります。特にエコー、CTが有用であり、検査の目的はAAAなどの致死的な疾患を除外する意味合いが強いです。救急医によるエコーでは、尿路結石発作(結石描出または水腎症所見)に対して感度 54%、特異度 73%と程度とされます。また、腹部CTは感度 88%、特異度 58%です。1)KUBについては結石の種類によりX線透過性が異なりますが、頻度の高いシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムは写りやすいとされます。

尿路結石への対応はどうするべき?

〇閉塞性尿路感染症

まず確認すべきは尿路結石に尿路感染症を合併していないかを確認します。この場合、閉塞性尿路感染症となるため、迅速に閉塞を解除しないと容易に敗血症性ショックとなってしまいます。発熱や悪寒といった症状がないか確認し、もし帰宅させる場合もそういった症状が出た場合はすぐに病院を受診するように説明しておく必要があります。

〇疼痛管理

鎮痛薬としてNSAIDs、アセトアミノフェン、オピオイドが使用されます。基本的にはNSAIDsの使用が推奨され、日本ではジクロフェナクの坐薬を使用します。NSAIDsはオピオイドと比較しても効果はほぼ変わらず、1回の投与で改善する可能性が高いとされます。2) ジクロフェナク75mg筋注とモルヒネ0.1mg/kg経静脈投与、アセトアミノフェン1000mg経静脈投与を比較した二重盲検化ランダム化比較試験では、最も疼痛の改善が迅速なのがジクロフェナクであり、アセトアミノフェンとモルヒネは同等でした。3)

trialでモルヒネが使用されている所をみると、海外ではオピオイドが尿路結石の鎮痛に使われることが多いのでしょうか?日本ではとても厳しそうですね・・・。まずはジクロフェナクを使用し、それでもコントロール不良であればアセトアミノフェンを、それでもだめならトラマドール、ペンタゾシンなどの弱オピオイドを使用するのでよいのではないでしょうか

〇結石のサイズと治療方針

診断・鎮痛後の方針はサイズによって変わってきます。結石のサイズと排石率については、1mmの結石で87%、2-4mmの結石で76%、5-7mmの結石で60%、7-9mmの結石で48%、9mm以上の結石で25%程度とされます。当然ですが大きい方が自然排石率が低く、残存するようであれば泌尿器科的処置が必要になってきます。では、サイズごとの対応を見ていきましょう。

■<5mmの結石の場合

5mm以下の結石では自然排石が多いため、基本的には経過観察でよいとされます。しかし、前述の数字の通り、排石されない結石も一定数存在し、その場合は泌尿器科的処置が検討されます。up to dateによれば4週間後のフォローが推奨されていますが、そこでKUBないしはCTでの確認が勧められていました。CTでのフォローはやりすぎな感があるため、KUBでのフォローが妥当でしょう

以上より、救急外来ではフォローなしで帰宅させてしまっている場合が多いですが、本来は少なくとも4週間後に泌尿器科受診を指示することが妥当と思われます

■5-10mmの結石の場合

このサイズになってくると排石率が低下してきます。私も知らなかったのですが、5-10mmのサイズでは薬物治療が選択肢に挙がってきます。α遮断薬であるタムスロシン(ハルナール®)は、自然排石を促進する可能性があるとされます。タムスロシンによる尿路結石排石率への影響を評価したメタアナリシスでは、5-10mmの結石では22%排石率を増加される一方、5mm以下の結石では有意差が認められませんでした。4) 他にもニフェジピンなどが排石促進の可能性がありますが、副作用の観点からタムスロシンの使用が推奨されています。もし使用するのであれば0.4mgを21-28日間使用しますが、本邦では保険適応がないため注意が必要です

以上より、排石率が低く、薬物使用の適応の有無を判断していただくために、できるだけ早期に一度泌尿器科受診を推奨することが望ましいと思われます

■10mm<の結石の場合

このサイズになってくると基本的には自然排石が困難であるため、泌尿器科的処置を行うことを前提に早期に泌尿器科受診させることが望ましいです。

■結局どうしたらいいの?

結局の所、閉塞性尿路感染症への注意喚起を行った上で、どのサイズでも最終的には泌尿器科の先生に診て頂くことが望ましいと思われます。その上で、結石のサイズによって受診のタイミングを柔軟に変えていきます。また、up to dateやAUAのガイドラインでは、患者さんに尿をこしとってもらって意地でも結石を回収させることが推奨されていました。結石の種類によってその後の介入が異なるためであるようですが、そこまでやっておられる先生はいるのでしょうか・・・?

参考文献

・Up to date

・尿路結石症診療ガイドライン2013

・AUA Stone Guidelines

論文

1)N Engl J Med.2014;371:1100.

2)BMJ. 2004 ;328: 1401.

3)Lancet. 2016; 387: 1999.

4)Ann Emerg Med. 2017; 69: 353.

文献

・ホスピタリストのための内科診療フローチャート