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慢性腎臓病(CKD)の管理

慢性腎臓病(CKD)とは

〇定義

CKDの定義は以下の通りであり、①、➁のいずれか、または両方が3か月を越えて持続することで診断となります。

①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要

➁eGFR<60ml/分/1.73m2

〇重症度分類

下記の表の通り、

横軸を蛋白尿・アルブミン尿の程度でA1-3

縦軸をGFRの程度でG1-4

に区分して重症度を決定していきます。

蛋白尿、アルブミン尿は末期腎不全、心血管死、全死亡など重篤なイベントの強力なリスク因子であり、重要なCKDの診断項目であることから、重症度分類でも1つの項目として用いられています。

腎機能は日常診療では血清Cr値、性別、年齢から日本人のGFR推算式(JSN eGFRcr)を用いて算出します。より正確性を求める場合には血清シスタチンCやイヌリンクリアランスを用いる場合もありますが、プライマリケアの場面では限定的だと思います。

血圧

CKDガイドライン上の降圧目標は、

・糖尿病合併 or 尿蛋白陽性(0.15g/gCr以上):130/80mmHg未満

・糖尿病、尿蛋白共になし:140/90mmHg未満

・75歳以上で降圧に対する忍容性がない場合:150/90mmHg未満

とされています。

後述しますが、腎保護作用があるため蛋白尿、アルブミン尿があるCKDの降圧薬にはACE-i、ARBを使用しましょう。

血糖

血糖コントロールにより早期腎症の発生抑制や顕性腎症への進行抑制については明らかなエビデンスがあります。一般的な管理と同様、HbA1c<7.0%を目標に管理を行っていきます。

CKD診療ガイドライン2023年原案を見てみますと、SGLT-2阻害薬は血糖降下作用とそれ以外の機序でCKDの進行を遅らせるため、eGFR 25ml/分/1.73m2以上かつ顕性アルブミン尿を呈する2型糖尿病のすべての患者において投与が推奨されています。また、糖尿病非合併のCKD患者に対しても、蛋白尿を有する場合には投与が推奨されています。蛋白尿がない場合にも効果を示す可能性は示唆されていますが、現状はまだエビデンスに乏しいです。

また、新規薬剤である非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬のフィネレノンは尿アルブミンを有する糖尿病性腎臓病において、尿アルブミンを減少させ腎保護作用を示す可能性があるため、投与が提案されています。ただし、長期的なエビデンスはまだ少ないことに注意が必要です。

尿蛋白

尿蛋白<1g/gCrあるいは尿蛋白が治療開始24週で30%以上減少した群で、腎予後の改善が認められたとの報告があるため、尿蛋白を減少させることは腎保護の観点から有用と考えられます。

そのために前述の通り血圧コントロール、血糖コントロールを行いつつ、尿蛋白・尿アルブミンを減少する作用のある薬剤(ACE-i、ARB、SGLT-2阻害薬、フィネレノンなど)を適切に使用することが重要です。

貧血

ガイドラインではHb 11.0-13.0g/dLが目標とされており、鉄補充およびESA製剤でコントロールを行います。生命予後との関連ではHb>11.0g/dLでの管理が最もよく、Hb<11.0g/dLでESA製剤を導入した群が最も予後がよかったと報告されています。一方で高すぎても予後は悪化するため、ガイドラインではHb>12g/dLでESA製剤の休薬および減量が推奨されています。

高カリウム血症

生命予後との関連からK 4.0-5.4mEq/Lでの管理が推奨されています。K≧5.5mEq/Lとなるようであれば食事指導やアーガメイトゼリーなどK吸着薬の処方を行い、Kを下げます。Kが高いとACE-i、ARBを中止したくなりますが、腎保護の観点からK吸着薬などで対応し極力続けるようにします。

酸塩基平衡

HCO3-低値は腎予後の悪化と関連しているとされており、ガイドラインではCKD G4から静脈ガス分析を行い、HCO3-<21mmol/Lで重炭酸Naを開始すべきとされています。ただ、この時点では腎臓内科による管理が望ましいと思われ、プライマリケアの場面では補正を行うことは少ないと思います。

CKD-MBD

CKD患者での骨代謝異常のことを指します。腎からのリン排泄障害とビタミンD活性化障害により、高リン血症、低カルシウム血症、PTH上昇を引き起こします。透析導入後の患者であれば予後改善効果が認められていますが、導入前のCKD患者においてはリン吸着薬投与の明確な有効性は示されていません。そのため、プライマリケアの場面では気にすることは少ないと思います。

高尿酸血症

別項でまとめている通り、尿酸降下療法による生命予後改善効果や腎保護改善は明確にはなっていません。そのため、痛風発作を起こしていない患者ではCKDがあるからという理由だけで薬剤を開始する必要性には乏しいと考えます。

脂質異常症

非CKD患者と同様で、生命予後改善、合併症予防としてのスタチンおよびエゼチミブ使用が推奨されています。CKD患者に特化した治療の必要性はないと考えられます。

蛋白制限食

ガイドラインでは蛋白制限食が推奨されていますが、具体的な量の提示はなく根拠も乏しいとされています。少なくともプライマリケアの場面では蛋白制限は不要と考えられます。

プライマリケア医が専門医に紹介すべきタイミング

CKDの患者さんをどの段階で腎臓内科医に紹介すべきかは悩ましい問題であると思います。ガイドラインでは、下記の通り紹介のタイミングが明記されています。

ただし、この基準に囚われ過ぎず、必要があると思えばそのタイミングで紹介することも重要であるとされています。CKDガイドラインの2023年版の原案を見る限り、この表も改訂が加えられそうなので記して後事を待ちたいと思います。

参考

・CKD診療ガイドライン2018

・CKD診療ガイドライン2023(案)

・「型」が身につく 蛋白尿・血尿の診かた・考え方 日本医事新報社