注目キーワード
  1. 高血圧
  2. 骨粗鬆症
  3. 糖尿病

BP(ビスホスホネート)製剤

  • 2022年9月27日
  • 2023年9月15日
  • 骨粗鬆症
  • 43view
  • 0件

作用機序

ビスホスホネート製剤(以下、BP製剤)は骨粗鬆症の要となる薬剤です。2個のホスホン酸アニオン基を持っていることが名前の由来であるそうです。体内に取り込まれると骨に沈着し、破骨細胞に取り込まれます。BP製剤を取り込んだ破骨細胞はアポトーシスに至り、骨吸収作用が抑制されることで効果を発揮します。BP製剤自体はその後も骨組織内に残存し続けるため、投与中止後もしばらく効果が持続するといわれています。

BP製剤の種類

BP製剤は骨粗鬆症診療において最も使用頻度の高い薬剤ということもあり、上記の通り種類、剤形が非常に多彩です。どれを使用すべきか悩ましいところですが、種類としては最もエビデンスが蓄積されている点からアレンドロン酸リセドロン酸の使用が推奨されます。その中でも週1回製剤や月1回製剤を選択するのがアドヒアランス的にもよいでしょう。最近、年に1回の投与でよいゾレドロン酸(リクラスト®)が販売され始めましたが、こちらも少々お高いもののアドヒアランスの面からよい選択肢になるでしょう。ちなみに、別のゾレドロン酸製剤であるゾメタ®は高Ca血症や悪性腫瘍の骨転移に対して用いられる薬剤ですね。

エビデンスと特徴

この項ではBP製剤のエビデンスについてまとめていきます。前項で使用をオススメしたアレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸について中心に見ていきましょう。

①骨密度について

まずは骨粗鬆症診療の前提となる骨密度への上昇効果です。

プラセボと比較し、アレンドロン酸、リセドロン酸、ゾレドロン酸は椎体および大腿骨近位部の骨密度を優位に上昇させることがわかっています。1),2),3)

➁骨折の一次予防

アレンドロン酸:椎体骨折は予防するが大腿骨近位部の骨折は減少せず4)

リセドロン酸:予防効果は証明できず5)

ゾレドロン酸:検討なし

ということで既存骨折のない患者についての効果、つまり一次予防はあまり効果は期待できないようです。脂質異常症におけるスタチンもそうですが、一次予防で効果を発揮する薬剤はなかなか見ないような気がします。

③骨折の二次予防

二次予防についてはどの薬剤も高い効果を発揮することがわかっており、椎体骨折、大腿骨近位部骨折のいずれに対しても予防効果があります6),7),3)

このように、BP製剤は非常に効果が高くエビデンスが蓄積された骨粗鬆症治療薬であり、基本的には骨粗鬆症における第一選択と考えてよいです。注意点として、効果発現まで時間がかかってしまう点が挙げられます。アレンドロン酸のFIT Ⅰ試験6)の生存曲線を提示します。

図のように、6-12か月経過してようやく投与群の曲線が離れます。この傾向はリセドロン酸のVERT MN試験8)、ゾレドロン酸のHORIZON試験9)でも同様であり、投与してもすぐに効果が出るわけではないことに注意が必要といえます。

また、腎排泄の薬剤であるため、CCr 30ml/分未満では禁忌です。

副作用

①逆流性食道炎、食道潰瘍

BP製剤は粘膜に対する強い刺激性を持っており、GERD食道潰瘍を引き起こす可能性があります。内服時はコップ一杯の水と共に服用し、飲んでから30分以上は横にならないよう指導する必要があります。元々GERDがあったり、食道裂孔ヘルニアのある患者さんには使用しない方が無難でしょう。また、リクラスト®などの経口投与以外の経路であればこの副作用は考えなくてよいことになります。

➁顎骨壊死(MRONUJ)

有名な副作用として顎骨壊死があり、10,000-100,000人に1人程度の頻度とされています。使用する前に口腔内を診察し、口臭や歯のぐらつき、歯肉腫脹があればまずは歯科医院を受診してから内服させる方が無難です。服用中に抜歯などの侵襲的歯科治療を行う際の対応は諸説あり議論となっています。BP製剤は骨に取り込まれ残存する作用を持っているため、治療直前に投与を中止したとして顎骨壊死を予防できるのか定かではないためです。

③異型骨折

骨粗鬆症では通常起きないような大腿骨転子下骨折大腿骨骨幹部骨折を異型骨折(非定型大腿骨骨折)と呼び、BP製剤との関連が指摘されています。頻度は3.2-50人/10万人年と低いですが、総使用量が多い程発症リスクが上昇するとされています。BP製剤での治療中に患者さんが異型骨折を起こした場合、すぐにBP製剤をやめる方が無難です。

BP製剤はいつまで続ければよいか?

BP製剤のRCTは3-5年の観察期間がほとんどであり、長期投与によりどこまで効果が持続するのか現時点でははっきりしていません。長期のBP製剤投与について検討した臨床試験はアレンドロン酸についてのFLEX試験10)とゾレドロン酸についてのHORIZON-PFT試験11)があります。両試験を要約しますと、長期使用により椎体骨折を予防する可能性はあるものの、大腿骨骨折の予防効果は微妙という結果でした。このことから、投与を継続することで異型骨折の頻度が上昇することを踏まえると、BP製剤は3-5年の使用に留めるのが無難と考えます

BP製剤のまとめ

以上、BP製剤について勉強したことをまとめました。BP製剤が骨粗鬆症診療のキードラッグであることは間違いありませんが、使用により逆に異型骨折頻度が増加してしまうこと、長期使用のエビデンスが定まっていないことなどが意外な点でした。普段よく使う薬でも、よくよくそのエビデンスについて調べてみると新たな発見があるもので、やはり常日頃の勉強は欠かせないですね。最後に、下記にBP製剤のエッセンスについてまとめたものを示します。

参考

論文

1)Serrano AJ, et al: Systematic review and meta-analysis of the efficacy and safety of alendronate and zoledronate for the treatment of postmenopausal osteoporosis. Gynecol Endcrinol. 2013; 29: 1005-1014.

2)Cranney A, et al: Meta-analyses of therapies for postmenopausal osteoporosis. III. Meta-analysis of risedronate for the treatment of postmenopausal osteoporosis. Endcr Rev. 2002; 23: 517-523.

3)Black DM,et al: Once-yearly zoledronic acid for treatment of postmenopausal osteoporosis. N Engl J Med. 2007; 356: 1809-1822.

4)Cummings SR, et al: Effect of alendronate on risk of fracture in women with low bone density but without vertebral fractures: results from the Fracture Intervention Trial. JAMA. 1998; 280: 2077-2082.

5)Wells G, et al: Risedronate for the primary and secondary prevention of osteoporotic fractures in postmenopausal women. Cochrane Database Syst Rev. 2008 1:CD004523.

6)Black DM, et al: Randomised trial of effect of alendronate on risk of fracture in women with existing vertebral fractures. Fracture Intervention Trial Research Group. Lancet. 1996; 348:1535-1541.

7)Harris ST, et al: Effects of risedronate treatment on vertebral and nonvertebral fractures in women with postmenopausal osteoporosis: a randomized controlled trial. Vertebral Efficacy With Risedronate Therapy (VERT) Study Group. JAMA. 1999; 282: 1344-1352.

8)Reginster J, et al: Randomized trial of the effects of risedronate on vertebral fractures in women with established postmenopausal osteoporosis. Vertebral Efficacy with Risedronate Therapy (VERT) Study Group. Osteoporos Int. 2000; 11: 82-91.

9)Lyles KW, et al: Zoledronic acid and clinical fractures and mortality after hip fracture.N Engl J Med. 2007; 357: 1799-1809.

10)Black DM, et al: Effects of continuing or stopping alendronate after 5 years of treatment: the Fracture Intervention Trial Long-term Extension (FLEX): a randomized trial. JAMA. 2006; 296:2927-2938.

11)Black DM, et al: The effect of 3 versus 6 years of zoledronic acid treatment of osteoporosis: a randomized extension to the HORIZON-Pivotal Fracture Trial (PFT). J Bone Miner Res. 2012; 27: 243-254.

・竹内靖博 編:もう悩まない!骨粗鬆症診療 新装版: 2022

・南郷栄秀, 岡田悟 編: なんとなくDoしていませんか?骨粗鬆症診療マネジメント. Gノート, 4(1): 2017