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喘息安定期の治療

  • 2022年12月7日
  • 2023年1月26日
  • 呼吸器
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重症度分類と治療ステップについて

喘息治療を行うにあたり、“治療ステップ“と“重症度分類”という概念を知っておく必要があります。治療ステップ、重症度分類のいずれにも安定期と発作時の2種類がありますが、今回は安定期の方を使用していきます。

早速以下に重症度分類と治療ステップの内容を表としてお示しします。

この表のとおり、実際の外来では

患者さんの症状を聞いて重症度分類のいずれか決定する

            ↓   

重症度分類と対応する治療ステップの治療を初治療として導入する

というような流れで、重症度分類→治療ステップの順に考えていくことになってきます。

重症度分類、治療ステップの中身を暗記することは難しいと思いますから、上記の表を保存するなりしてその都度確認して頂ければ問題ないと思います。

もう一点、ここでしっかりと抑えておくべきポイントは、喘息の安定期の治療でキードラッグになるのは吸入ステロイド(ICS:inhaled corticosteroid)であるということです。基本的にどんな治療ステップであっても、まずはICSをしっかり使用します。その上で、必要に応じてその他の薬剤を上乗せしていくようなイメージです。「ICSなくして喘息治療なし」ということですね。

では、次項からまずは喘息で使用される吸入薬、内服薬、生物学的製剤の一覧をざっと見ていきましょう。その上で、独断と偏見でオススメの薬剤選択を紹介していきたいと思います。

吸入薬

〇SABA

SABAにはアルブテロール(ベネトリン)、プロカテロール(メプチン)などがあります。副作用予防のため、SABAは症状があるときにのみ用いられ、定期吸入としては使用されません。基本的に、推奨されている量で使用すれば安全性は高いとされます。振戦、頻脈、末梢血管拡張、低K血症といった副作用予防のため、使用量については気管支拡張の効果が最も高い量よりもやや少ない量で使用することが推奨されています。下図の通り、メプチン®が製剤が多彩で使いやすいかと考えます。

〇ICS

とにかく喘息のキードラッグであることを頭に叩き込みましょう。

本邦ではシクレソニド(オルベスコ®)、ブデゾニド(パルミコート®)、フルチガゾン(フルタイド®)、ベクロメタゾン(キュバール®)、モメタゾン(アズマネックス®)、フルチカゾン(アニュイティ®)の計6種の薬剤が使用できます。

ICSは以下のような作用で喘息に治療効果を示します。

①気道への炎症細胞浸潤を抑制する

➁血管透過性を抑制する

③気道分泌を抑制する

④気道過敏性を抑制する

⑤サイトカイン産生を抑制する

⑥ロイコトリエンやプロスタグランジンの産生を抑制する

⑦β2刺激薬の作用を増強する

ICSは喘息症状、増悪のリスクを軽減し、QOLを改善し、喘息死を減らすことが分かっています。また、気道リモデリングの抑制作用もあります。好酸球性炎症には著効しますが、好中球炎症現行の喫煙ACOの場合はICS単剤では効果が乏しいとされます。

ICSの局所性の副作用として、咳嗽、咽頭刺激、口腔内乾燥、嗄声、口腔内カンジダ症があります。そのため吸入後にうがいが必要です。嗄声はpMDIよりもDPIで出やすいとされます。ICSの全身性の副作用は少ないが、肺炎の頻度糖尿病のリスクが上昇するとされています。

〇ICS/LABA

ICSの次点で喘息治療のキードラッグであるといえます。本邦ではフルチカゾン/サルメテロール(アドエア®)、ブデゾニド/ホルモテロール(シムビコート®)、フルチカゾン/ホルモテロール(フルティフォーム®)、フルチカゾン/ビランテロール(レルベア®)、モメタゾン/インダカテロール(アテキュラ®)の5種の薬剤が使用可能です。

LABAは気道平滑筋細胞に到達し、β2受容体を刺激します。これによってアデニル酸シクラーゼが活性化し、cAMPが増加することで気道平滑筋の収縮が抑制されます。また、ICSの作用を強める作用があり、合剤として使用することで相乗的な効果が期待できます。

LAMA

喘息ではチオトロピウム(スピリーバ®)が適応が通っています。現在は治療ステップ2以上で用いられています。LAMAはムスカリンM3受容体に対して強力に結合し、気管支収縮を抑制します。ICSに上乗せすることで1秒率の改善、増悪の抑制効果などが示されています。アドヒアランスのことを考慮するに、LAMAの導入を考慮するのであれば後述のトリプル製剤を使用する方がよいかもしれません。

〇ICS/LABA/LAMA

喘息ではフルチカゾン/ビランテロール/ウメクリジウム(テリルジー®)、モメタゾン/インダカテロール/グリコピロニウム(エナジア®)の2種の薬剤が使用できます。ICS/LABA/LAMAは中等症-重症患者において、ICS/LABAと比較しQOLには影響を与えないものの、重度の喘息増悪の減少と喘息コントロールの改善を認めたとされます。経口ステロイドも考慮するような、ICS/LABA高容量でもコントロールできない喘息の場合に導入を検討することになりますが、プライマリケアの場面ではその時点で一度専門医に紹介するのがよいでしょう。

以下、喘息の吸入薬をICS、ICS/LABA、LAMA、ICS/LABA/LAMAについてまとめたものをお示しします。

色々あって迷ってしまいますが、個人的にはエリプタ製剤をオススメします。ICS(アニュイティ®)、ICS/LABA(レルベア®)、ICS/LABA/LAMA(テリルジー®)と揃っているので後述のstep up、step downがしやすいのと、デバイスの操作が簡便かつ1日1吸入でよく、アドヒアランスを考えた時に非常に有利であることが理由として挙げられます。某製薬会社とのCOIはなく、完全に個人の意見です。

内服薬

〇ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

LTRAにはシステイニルロイコトリエン1(CysLT1)受容体拮抗薬(モンテルカスト、プランルカスト)と5-リポキシゲナーゼ阻害薬(ジロートン:本邦使用不可)があります。

ペプチドロイコトリエンの作用を阻害し、気道粘膜の炎症や浮腫を軽減する効果があります。

長期管理薬の中では、「テオフィリンより勧められるが、ICSやICS/LABAほどの効果はないだろう」という位置づけであるといえ、基本的にはICSやICS/LABAに上乗せして使っていくイメージです。コクランレビューでは,ICS高用量と比較した優位性はないものの(リスク比0.90, 95%信頼区間0.58〜1.39),ICSへのLTRAの上乗せは同用量ICSと比較して喘息増悪を減少させること(リスク比0.50,95%信頼区間0.29〜0.86)が示されています。副作用は少なく、使用しやすい薬剤といえます。ただし、EGPA発症との関連性が指摘されている点には留意しておきましょう。

〇テオフィリン

cAMPを増加させ、気管支平滑筋の弛緩をもたらす薬剤です。

吸入手技不良の喘息患者で、LTRAが使えないような場合の追加薬として使用することになります。前述の通り、喘息においてはLTRAに劣る立ち位置です。ICS/LABAやICSに上乗せとして用いるのはよいとしても,LABAの代替として用いるほどのパワーがあるとはいえません。副作用も多く、消化器症状、精神神経症状、洞性頻脈・心房細動などの不整脈、低カリウム血症などがあります。特に高齢者では副作用が出やすいので、血中濃度を測定しつつ少なめの量でコントロールしましょう(血中濃度10μg/ml前後くらい)。

〇経口ステロイド

ステップ4の喘息に対して他に有効な治療がない場合に経口ステロイドの長期投与を行います。極力使用したくないが、特に気道リモデリングが重度で、なかなか症状がよくならない場合は使用もやむを得ない場合があります。日本のガイドラインでは5mg/日などの少量での使用が推奨されています。適応があるのであれば生物学的製剤を使用することで経口ステロイドを使用せずに喘息がコントロール可能となる場合があります。プライマリケアの場面では経口ステロイドを導入する前に専門医に一度相談することが望ましいです。

〇マクロライド系抗菌薬

マクロライドは最近のリボゾーム50Sサブユニットに結合し、蛋白質合成を阻害することで細菌の増殖を抑制する抗菌作用を示します。抗菌活性以外にもさまざまな作用がありますが、まず最初に示されたのは消化管運動機能亢進作用です。マクロライドが消化管蠕動ホルモンであるモチリンのアゴニストとして作用することによるそうです。このため、マクロライド使用時に消化器症状が問題となることがありますが、逆手にとってICUでの消化管蠕動促進薬として使用されることもあります。

また、好中球の血管内皮への接着阻害、上皮細胞からのIL-8産生阻害、好中球の炎症局所への遊走阻害、好中球の活性阻害などの抗炎症作用が報告されています。加えて、ムチン産生やクロライドチャネルを介した水分泌を抑制するため、喀痰量を減少させる効果があります。

さらに細菌に対して抗菌活性以外にも、菌体毒素産生抑制、プロテアーゼ産生抑制、バイオフィルム形成の抑制や菌の細胞接着を抑制する作用、クオラムセンシング(細菌間のコミュニケーション)機構の阻害など、さまざまな作用で菌の増殖を抑えます。

その他、リンパ球や上皮細胞に対しても作用し、免疫抑制なしに過剰免疫、過剰炎症を抑制する免疫調節作用があると考えられています。

喘息に対しては持続型喘息患者に対してAZMを500mgを週3回追加投与したところ、プラセボと比較して有意な増悪頻度の低下、QOLの改善、喀痰・咳嗽・鼻症状の有意な改善を認めました。また、好中球性炎症でも効果を認めており、有効な薬剤がない本フェノタイプにおいて有効な治療薬となる可能性があります。薬剤耐性の問題やQT延長などの副作用があるため、症例は絞って使用を検討しましょう。こちらも導入するような症例は一度専門医への紹介を行いましょう。

*その他、アレルギー性鼻炎の症状がある場合は点鼻薬や抗アレルギー薬を併用することで喘息賞樹生が改善する可能性があります。

生物学的製剤

本邦ではオマリズマブ(ゾレア®)、ベンラリズマブ(ファセンラ®)、メポリズマブ(ヌーカラ®)、デュピルマブ(デュピクセント®)の4剤が使用できます。うまく使用することで重症持続型の喘息を良好にコントロールすることが期待できますが、流石に専門医にお任せするのがよいでしょう。ここでは割愛させて頂きます。

実際の薬剤の導入とStep up、Step downの方法

さて、ここまで薬剤をあらかた紹介した上で、ここからは具体的にどのように薬剤を導入し、step up、step downを行っていくかを解説していきます。一連の流れとして理解しやすいよう、ここでは前述のエリプタ製剤に限定して説明していきます。あくまで筆者の独断と偏見であることに注意してください!

〇初期治療とフォロー、step up

初期治療ではアニュイティ®、レルベア®のいずれかを使用していきます。それぞれICSのフルチカゾンプロピオン酸エステルが100μgなのか200μgなのかでアニュイティ100、アニュイティ200、レルベア100、レルベア200の4種類があることを押さえておきましょう。

まず最初に、患者さんの症状から下記の重症度分類を行っていきます。

その上で、該当する治療ステップを決めていきます。

以下のように初期治療を選択します。

治療ステップ1:アニュイティ100

治療ステップ2:アニュイティ100 or レルベア100

治療ステップ3:アニュイティ200 or レルベア200

治療ステップ4:レルベア200

治療ステップ2と3でどちらアニュイティとレルベアのどちらを使用するかですが、ここは感覚と好みでよいかと考えます。

その後、一度4週間後にフォローを入れ、吸入がきちんとできているのか、症状の程度がどうかを確認し、以下のように対応します。

症状が消失:していればそのまま継続する

症状が改善したがまだ少し残存:LTRAを上乗せしてみる

症状が変わらない:Step upを行い吸入薬を変更する。この際LTRAも上乗せしてもよい

さらに4週間後にフォローを入れ症状を確認していきます。症状が安定するようなら外来の感覚を空けてみていきます。レルベア200+LTRAでも症状が残存する場合はその時点で一度専門医に紹介してしまってよいと思います

繰り返しになりますが吸入薬としてはアニュイティとレルベアだけを選択肢として究極に簡便化していますから、あくまで参考程度にとどめてください。

〇step down

step downはstep upと比べると難しく、失敗すると発作を伴う再発を起こしてしまいます。ガイドライン上は3か月コントロールが維持できれば検討するとありますが、最低でも6か月はコントロールを維持してからの方が安心です

中等量以上のICS/LABAを使用している患者では、優先してLABAを中止するとその後に喘息増悪が起こりやすいという落とし穴があります。アニュイティとレルベアについては、以下の順にstep downしていきます。

レルベア200→レルベア100→アニュイティ100

特にレルベア100からアニュイティ100に切り替えるときにLABAがoffとなることで症状の増悪が起こりやすいため、十分に注意して行いましょう。LTRAは最後まで残し、ICS単剤になってからoffにする形でよいと思います。

気道リモデリングが進んでいるようなケース、高齢者に対しては無理なstep downはしないのが吉です。

以上、喘息の治療についてまとめてきました。御覧の通り、アニュイティ®とレルベア®に限って考えれば、プライマリケアの場面で喘息治療を行うことは比較的簡単です。ただ、そう簡単にいかないことも多いのが実臨床です。エリプタ製剤の弱点として、細かい用量調整ができない点が挙げられます。この点、シムビコート®やフルティフォーム®は細かい調整ができ、患者さんによってはエリプタ製剤よりもうまく喘息のコントロールができる場合もあります。

まずは前述のエリプタ製剤を例にした治療アルゴリズムを入門とし、そこから他の薬剤についても知識を広げて武器を増やしていくとよいのではないでしょうか。

また、治療に難渋したら自分で抱え込まず、呼吸器専門医に早めに紹介することも重要な選択肢であることを覚えておきましょう。

参考

1)喘息バイブル 倉原優 日本医事新報社

2)喘息予防・管理ガイドライン2021