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心房細動①

  • 2023年1月29日
  • 2023年1月29日
  • 循環器
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心房細動とは

〇疫学

心房細動(Af)は実臨床で遭遇する最もコモンな不整脈といえます。有病率は年齢が進むにつれて上昇し、70歳代では男性 3.44%、女性 1.12%、80歳代では男性 4.43%、女性 2.19%とされています。現時点では約100万人(120人に1人)がAfを有していると推計されています。

発症のリスクとしては年齢、性別、高血圧、心不全、冠動脈疾患、心臓弁膜症、糖尿病、肥満、睡眠呼吸障害、尿酸、アルコール消費などが挙げられます。

また、Afの存在は脳卒中、心不全、心筋梗塞、死亡などの心血管有害事象のリスクと関連しています。

〇病態

肺静脈を含む心房において、

・トリガー(Afの引き金となる期外収縮)となる異常興奮(自動能/自動興奮の発生)

・リエントリーが成立するための不整脈基質の形成

がAfは発症の病態とされます。火(トリガー)と導火線(リエントリー)があって初めて爆破(Af)が起こるわけですね。

トリガーは洞結節以外の部位から発生する異所性の早期興奮ですが、Afの場合は90%は肺静脈周囲に存在する肺静脈心筋スリープと呼ばれる心筋組織から始まります。

リエントリーが成立するための不整脈基質は、高血圧や糖尿病などの外的ストレスやAfそのものにより、心房の構造的なリモデリングが起こることで形成されていきます。

分類

〇進行度を表す持続時間

「いつからでているのか?」「持続時間は?」という概念で、Afの進行度を表します。

最後に洞調律が確認された時期が近いほど、洞調律維持療法を積極的に検討することができます。また、持続時間が1年を超えると洞調律への復帰が難しくなってきます。

〇自覚症状のQOL

Afの4割は症状がなく、無症候性とされ、有症状と比較し予後が悪いことがわかっています。

有症候の場合、EHRAスコアを用いて自覚症状を客観的に点数化することができます。点数が高ければ高いほど、アブレーションなどの積極的な治療を前向きに検討していくことになります。

〇弁膜症性か非弁膜症性か

抗凝固療法を検討する際、ワーファリンとDOACのいずれを選ぶのかの判断材料に、弁膜症性か非弁膜症性か、という分類があります。弁膜症性といってもすべての弁膜症が該当するわけではなく、

・機械弁置換後のAf

・僧帽弁狭窄症を併存しているAf

の上記2つが弁膜症性に該当します。これらの場合、DOACは禁忌であり、ワーファリンの使用が必須となります。

急性期の対応

〇血行動態の評価

一番重要なのは血行動態が破綻していないかどうかです。

・ショック状態が遷延している

・心不全が増悪しコントロールがつかない

・心筋虚血が遷延する

などの場合は電気的除細動(緊急同期下カルディオバージョン)を検討します。電気的除細動に伴う洞調律化により塞栓症をきたす可能性があり、本来は事前に3週間以上の抗凝固療法を行うか、経食道心エコーにより心内血栓がないことを証明することが推奨されています。ただ、上記のシチュエーションでこれ以上待つことができない場合は塞栓症のリスクを説明した上で電気的除細動を検討します。プライマリケアの場面で遭遇した場合、ショックの管理を行いつつ早期に循環器内科に繋いで適切な対応を仰ぐ必要があるでしょう。

〇背景因子の確認

Afは特に誘因がないこともありますが、感染症や発熱、虚血、脱水などの外的ストレスの影響を受けて

頻脈を起こしている場合が往々にしてあります。身体所見や心電図、血液検査で原因の同定を行いましょう。私の研修していた病院では、「HIMA」のゴロで原因検索を行っていました。

Hypovolemia:脱水、貧血、出血

Hypoxia:低酸素、呼吸困難

Hyperthyroidism:甲状腺機能亢進症

Infection:感染症

Intoxic:プレタール、テオフィリン

Myocardia:心筋虚血、心不全

Acidocis:アシドーシス

Aching:疼痛

〇急性期のレートコントロール

原因に対する介入を行ってもAfによる頻脈が改善しない場合、110bpmを目標に薬剤によるレートコントロールを検討します。ここで重要なのは、心不全の有無EFが保たれているかどうかの2点です。レートコントロールで使用するCCBはうっ血がなくEFが保たれていることを確認した上で使用する必要があります。事前にレントゲンと心エコーを確認しておきましょう。心エコーは頻脈があると評価が難しいですが、判断がつかない場合には循環器内科医に相談するのがよいでしょう。とにかくEF低下、心不全合併例ではCCB(特にベラパミルの静注)は心原性ショックの原因になるため、絶対に行ってはいけません

外来レベルではβ遮断薬(ビソプロロール、カルベジロール)やCCB(ベラパミル、ジルチアゼム)の内服を使用します。入院レベルでは静注薬のβ遮断薬(ランジオロール持続)やCCB(ベラパミルdiv、ジルチアゼム持続)を使用します。心機能が悪い場合はジゴキシンやアミオダロンも選択肢になります。

以下、上記をフローにまとめます。

参考

・不整脈薬物治療ガイドライン – 日本循環器学会

・循環器のトビラ 杉崎洋一郎 メディカル・サイエンス・インターナショナル

・循環器薬ドリル 池田隆徳 羊土社