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二次性高血圧について

疫学

高血圧患者のうち、少なくとも10%以上が二次性高血圧といわれています。その中では腎実質性高血圧(2-5%)腎血管性高血圧(1%)原発性アルドステロン症(5-10%)が頻度が高いです。また、睡眠時無呼吸症候群に合併した高血圧の頻度も高いといわれています。一方で褐色細胞腫クッシング症候群は年間発症数が100人程度と非常に稀です。

以下、二次性高血圧の種類と原因疾患、頻度などをまとめました。

また、薬剤による高血圧も重要です。以下の薬剤の内服がないか確認しましょう。

二次性高血圧を疑うタイミング

主に若年発症急激な血圧上昇降圧薬3剤でコントロール不良低カリウム血症の合併などが疑うきっかけとなりますが、スクリーニングのタイミングについて統一した見解はありません。筆者は有病率を考慮し、初診の高血圧患者については腎実質性・腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、甲状腺機能異常は全例スクリーニング検査を行うようにしています。クッシング症候群や褐色細胞腫については頻度が低いため、病歴で発作性の高血圧、動悸、発汗、頭痛がみられたり、クッシング症候群に特徴的な身体的特徴がある場合など、症例を選んで精査を行います。

とりあえずの初期検査

病歴:いびきなどSAS症状、交感神経刺激症状(発作的な発汗、動悸、蒼白、頭痛)、甲状腺症状

既往歴:腎疾患、血尿・タンパク尿の指摘、繰り返す肺水腫

家族歴:40歳以下での心血管イベント、内分泌疾患

身体所見:肥満、小顎症、甲状腺腫大、腹部血管雑音

血液検査/尿検査:腎機能、低カリウム血症、TSH、蛋白尿、血尿、円柱の有無

腹部エコー:腎臓のサイズ、左右差、可能なら血管ドプラまで

以下、J hospitalist networkの二次性高血圧精査のフローチャートのスライドが秀逸でしたので共有させて頂きます。

腎実質性高血圧

〇原因

糖尿病性腎症、急性・慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎、慢性腎盂腎炎などが原因となって発症する高血圧です。腎機能悪化に伴う体液量の増大やRAA系の亢進などがその機序になります。糸球体疾患や多嚢胞性腎では比較的早期から血圧が上昇しますが、薬剤性腎炎や慢性腎盂腎炎などの間質性腎疾患では腎機能低下が進行してからはじめて高血圧が発症することが多いです。

〇スクリーニング方法

病歴と初期検査でスクリーニングを行うことが可能です。高血圧の全例で糖尿病の有無、過去の腎疾患の既往、血尿の有無、NSAIDsの使用歴、CKDの家族歴を確認し、尿の定性検査を行います

試験紙法で尿蛋白2+以上か、尿蛋白と血尿がともに1+以上の場合は別日に再検を行い、再検してもなお尿蛋白が陽性であれば有意と判断します。その場合、腎生検の適応判断のため専門医に紹介するのが望ましいです。

〇治療

治療自体は通常の高血圧に準じて行います。

腎血管性高血圧

〇原因

腎動脈の動脈硬化や血管炎があって、腎動脈が狭窄することで発症する。原因疾患としては、中・高年では粥状動脈硬化、若年者では線維筋性異形成によるものが多い。他の疾患として、高安動脈炎、先天性奇形、大動脈解離、血栓・塞栓がある。粥状動脈硬化では腎動脈の起始部に、線維筋性異形成では中遠位部に多い。

〇スクリーニングを行うタイミングとその方法

下記のようなものがあれば腎血管性高血圧を疑います。

・治療抵抗性高血圧

・進行性高血圧

・55歳以上の重症高血圧

・若年発症高血圧

・悪性高血圧

・高血圧患者に以下のいずれかを認めた場合

 ACEI・ARB開始後1週間以内にCre50%上昇

 繰り返す急性肺水腫

 説明不能な腎委縮、サイズ差1.5cm以上

 腹部血管雑音

疑ったらまずは腎動脈血流ドプラエコー検査を行いましょう。はっきりしない場合はより感度・特異度の高いCTA、MRAを検討しますが、腎障害があると造影剤が使用しにくいという問題があります。血漿レニン活性(PRA)は参考にはなりますが、感度・特異度の面から積極的には推奨できません。

参考:腹部血管雑音のyoutube

〇専門医への紹介のタイミング

・腎臓専門医への紹介が容易な場合:疑った時点で紹介します。

・腎臓専門医への紹介が容易でない場合:腎血流ドプラエコー検査で腎動脈狭窄がある場合に放射線専門医へ紹介します

・腎動脈狭窄の評価が容易ではない場合:まずは降圧療法を行うが、①腹部エコー検査で説明のつかない腎委縮や腎サイズの左右差(1.5cm以上)がある、➁降圧薬を3剤使っても降圧目標を達成できない、といったことがあれば専門医に紹介する。

腎臓専門医への紹介の理由は腎動脈造影を行うか判断してもらうためであり、放射線専門医へ紹介の理由は腎動脈造影を行ってもらうためです。

〇治療

降圧薬での管理が可能ですが、ACE-IやARBで腎機能が悪化する場合や、3剤以上使用しても降圧目標に達しない場合にはIVRによる腎動脈拡張術およびステント挿入術が必要となります。

☆線維筋性異形成

中高年の女性に好発し、動脈に線維筋性の変化が起こることで血管狭窄、閉塞、動脈瘤を引き起こす疾患です。原因ははっきりしていません。結合織疾患のある患者、喫煙者、家族歴のある患者はリスクが高くなります。腎動脈、頭蓋外脳血管動脈が好発部位です。もし腎動脈に病変が見つかればその他の血管の評価をしてもよいかもしれません。

原発性アルドステロン症

〇原因

高血圧において5-15%と高い有病率を占める疾患です。副腎皮質球状層の腺腫に起因し、通常は一側性であるが、ごくまれに副腎癌または過形成が原因となります。アルドステロンが直接心血管障害を起こすとされ、本態性高血圧患者と比較し心血管イベントや脳梗塞の頻度が有意に高いです。発作性の筋力低下、テタニー、拡張期高血圧、ならびに多尿および多飲を伴う低カリウム血症性腎症がみられることがあります。

〇症状

高血圧、原因不明の低カリウム血症、代謝性アルカローシスがあれば疑う必要がありますが、低カリウム血症をきたす頻度は9-37%と低く、低カリウム血症がないからといって原発性アルドステロン症を否定してはいけません

〇スクリーニング方法

以下の特徴があれば原発性アルドステロン症のスクリーニングを考慮しましょう。

・治療抵抗性高血圧

・高血圧患者に以下のいずれかを認める場合

 低カリウム血症

 副腎偶発腫瘍

 睡眠時無呼吸症候群

 40歳以下の心血管イベントの家族歴

 1等親に原発性アルドステロン症の家族歴

スクリーニングはARR(アルドステロン/レニン比)とPAC(血症アルドステロン濃度)で行います。ARR≧200かつPAC≧60以上を陽性、ARR 100-200+PAC≧60を境界域と設定します

βブロッカー、NSAIDs、MRA、ACE-I、ARBなど、結果に干渉する薬剤が多いので注意が必要です。無視し難い高血圧がある場合、ニフェジピンCR 80mgまでMAX使用+ドキサゾシン漸増で血圧コントロールを行い、2週間後に検査を行うのがベターです。コントロール不良だったり、脳出血の既往があり危険な人はやむを得ずそのまま検査を行う場合もあります。採血は午前中に15分座位で安静にしてから採取します。スクリーニングが陽性なら専門医へ紹介としましょう。

〇機能確認検査

スクリーニング陽性の場合、アルドステロンの自律性分泌を証明するため、少なくとも1種類の機能確認検査を行います。ただし、ARR≧1000でPAC≧200であれば機能確認検査は省略してOKです。カプトプリル負荷試験経口食塩負荷試験は外来で可能かつ患者への負担が少ないのでおすすめです。

〇局在診断

原発性アルドステロン症が疑わしければ副腎1mmのthin sliceで単純CTを施行します。腫瘍が典型的な腺腫の所見(0-10HUの低濃度)でなければ単純MRIの評価も追加します。CT陰性の症例が半数以上といわれます。片側性の副腎腺腫であれば副腎摘出術が適応となる可能性があるため、原則として副腎静脈サンプリングまで検討します。

〇治療

片側性の副腎腺腫であれば腹腔鏡下副腎摘出術が検討されますが、術後の血圧正常化が30%程度であるため適応は慎重に判断します。

両側性の副腎過形成、ないしは手術適応のない腺腫は薬物治療を行います。第一選択としてスピロノラクトン、またはエプレレノン、エサキセレノンを使用し、コントロールが悪ければその他薬剤も追加していきます。

睡眠時無呼吸症候群

実は最も有病率が高い二次性高血圧症ではないかといわれているそうです。STOP-BANG scoreなどを使って積極的に疑っていく必要あります。引っかかったら家庭用簡易モニターあるいはPSGを行いましょう。

AHI≧5+有症状、あるいはAHI≧15で診断とします。

ただし、CPAPの保険適応はAHI≧20もしくは家庭用簡易モニター≧40の場合のみであることに注意が必要です。また、CPAPでは血圧はほとんど下がらず、心血管系合併症の減少は証明できていません。QOL改善、交通事故の減少は証明されています。

クッシング症候群

〇原因

コルチゾールの自律性かつ過剰分泌によるクッシング徴候、高血圧、糖尿病などを呈します。ACTH非依存性とACTH依存性に大別され、前者は副腎腺腫や両側副腎過形成による副腎性クッシング症候群(狭義のクッシング症候群)、後者は下垂体ACTH産生腺腫によるクッシング病、異所性ACTH産生腫瘍が含まれます。

〇スクリーニング方法

米国のガイドラインでは下記が推奨されています。

①24時間蓄尿遊離コルチゾール測定

➁1mgデキサメタゾン抑制試験

③夜間唾液中コルチゾール測定(本邦保険適応なし)

1mgデキサメタゾン抑制試験が外来でも簡便であり、スクリーニングしやすい

23時にデキサメタゾンを内服して翌朝8時にコルチゾールを採血します。コルチゾール≧5μg/dlとすると感度85%、特異度 95%とされます。

〇治療

治療、診断は専門医に任せるのがベターです。

副腎腺腫では腹腔鏡下副腎摘出術、クッシング病では経蝶形骨洞下垂体摘出術、異所性ACTH産生腫瘍では原発病巣の外科的摘出が第一選択となります。

副腎性サブクリニカルクッシング症候群は腫瘍径が4cm以上や増大傾向がある場合、高血圧、肥満、耐糖能異常を合併する場合に手術適応を検討します。

褐色細胞腫

〇原因

カテコールアミン産生腫瘍には、副腎髄質由来の褐色細胞腫と傍神経節由来のパラガングリオーマがあります。副腎外、両側性、多発性、悪性が10%ずつをしめ、10% diseaseとも呼ばれます。近年、本腫瘍は全例悪性の可能性があるとも考えられています。

〇スクリーニング方法

カテコールアミン過剰による頭痛、動悸、発汗過多、顔面や上下肢の蒼白などの症状や、発作性高血圧から疑います。また、近年は無症状だが画像上副腎偶発腫瘍が見つかり発見されることも多いです。また、MEN2、VHL、NF1や褐色細胞腫の家族歴も重要です。

スクリーニングでは随時尿メタネフリン、ノルメタネフリン排泄量の高値(>500ng/mgCr)で行い、高値例は24時間蓄尿中メタネフリン、ノルメタネフリンの増加(正常上限の3倍以上)を確認します。近年、血漿遊離メタネフリン、ノルメタネフリン濃度をスクリーニングで行うことが保険適応となっており、こちらも有用です。

感度・特異度の問題から、褐色細胞腫、パラガングリーマの低リスク群(治療抵抗性高血圧、アドレナリン過剰分泌による発作症状)では24時間尿中メタネフリン、ノルメタネフリン測定をまず行い、高リスク群(PPGLの家族歴、MEN2などに伴う家族性PPGL、PPGL術後、副腎偶発腫瘍の指摘)では血漿遊離メタネフリン、ノルメタネフリン測定が有用とされています。

ただ、検査ができない病院も多く、その場合はドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンを測定し、総合病院に紹介することになります。

ワイン、バナナ、柑橘、コーヒー、バニラ、チーズはカテコラミン系に影響を及ぼすので、スクリーニング前後では控えてもらいましょう。

造影CTは発作誘発の恐れがあり、基本的には禁忌です!

・褐色細胞腫の画像所見

原発性アルドステロン症と異なり、腫瘍径は結構大きいことが多いです。

大体20HU以上のことが多いです。

〇治療

腫瘍摘出が原則です。手術までの降圧にはα1遮断薬を投与します。頻脈があればβ遮断薬も検討されるが、単独投与ではα作用が増強されるため禁忌です。

参考

・動脈硬化御三家 南郷栄秀 羊土社

・JHN 2次性高血圧のスクリーニング

http://hospitalist.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-kameda-190109.pdf