尿検査総論については別項をご参照ください。
血尿のフォロー
まず下記のフローに則り、真の血尿であるかどうか、尿路性血尿か糸球体性血尿かを判断します。

〇尿路性血尿の場合
リスクに応じて評価を行っていきます。本邦の場合、下記の尿路上皮癌のリスク因子に1つでも当てはまれば高リスク、当てはまらなければ低リスクとして扱います。

リスクに応じ、下記の検査を行います。
・低リスクの場合:まず腎膀胱超音波検査、尿細胞診→陽性であれば膀胱鏡画像検査へ
・高リスクの場合:腎膀胱超音波検査、尿細胞診に加え、最初から膀胱鏡、画像検査(CT尿路造影)を考慮
高リスクの場合、最初から膀胱鏡などの専門的な検査が必要となるため、その時点で泌尿器科への紹介が必要になります。
陰性であった場合、わが国のガイドラインではスクリーニングが陰性であれば、その後尿路系悪性腫瘍が発見される可能性は低く、定期的なスクリーニングは不要としています。米国のガイドラインでは陰性であった場合には12か月以内に尿検査を再検することが推奨されています。
肉眼的血尿の場合、一通りの精査で異常がなくても3年間で1%の割合で悪性腫瘍が見つかるとのデータもあります。そのため、特に肉眼的血尿の場合はスクリーニングが陰性であっても向こう3年間はフォロー(少なくとも定期的な尿検査、腹部エコーは行いたい)が望ましいです。
〇糸球体性血尿の場合
下記に当てはまる場合、尿沈渣以外の要素として糸球体性血尿が疑われます。
・問診、身体所見で腎炎を疑わせる場合
・蛋白尿を伴う場合
・尿沈渣で変形赤血球、赤血球円柱が存在する場合
・腎機能低下(eGFR<50)を伴う場合
腎炎を疑わせる症状には発熱、関節痛、体重減少、紫斑、炎症反応上昇などが当てはまります。
〇プライマリケア医として血尿を診療する上での考え方
最も重要となるのは尿路系悪性腫瘍を見逃さないことです。専門医への紹介が必要となるため、膀胱鏡へのハードルは高くなりがちです。特に、顕微鏡的血尿では腹部超音波と尿細胞診で陰性であればそのままフォローを終了してしまうことも多々あると思います。しかし、腹部超音波検査も尿細胞診も感度は十分ではないため、高リスク群の場合はガイドライン通りに膀胱鏡検査を念頭に泌尿器科への紹介を勧めるのが妥当です。
また、腎予後の観点からも血尿のフォローは重要です。無症候性の顕微鏡血尿でも、持続する場合には長期的には末期腎不全の進展リスクとされています。経過観察中に10%で蛋白尿が陽性となるといわれており、血尿+蛋白尿の症例では末期腎不全に進展するリスクが格段に高まります。明らかに糸球体性血尿の場合は一度腎臓内科に紹介することが望ましいでしょう。
とにかく泌尿器科、腎臓内科への紹介のタイミングを逃さない姿勢が必要です。その血尿、本当に経過観察でよいのか?ということを常に自問しながら診療に当たりましょう。
参考
・「型」が身につく 蛋白尿・血尿の診かた・考え方 日本医事新報社
・血尿診断ガイドライン2013 日本臨床検査医学会