汎血球減少とは
汎血球減少とは赤血球、白血球、血小板のすべての末梢血系統の減少を指します。ただし、汎血球減少を引き起こす多くの疾患は2系統のみの血球減少を引き起こす可能性があるため、こちらも汎血球減少と同様のアプローチを行うことになります。以下、それぞれの血球減少についての定義です。
・赤血球:女性 <12g/dL、男性<13g/dL
・白血球:好中球の絶対数<1800/μL
・血小板:血小板数<15,000/μL
汎血球減少の病態、原因
〇病態
健康な成人の造血は骨髄で行われ、そこから成熟した血球が循環、脾臓およびその他の部位に移動します。骨髄は動的臓器であり、血球産生に継続的に対応します。血液の産生、多臓器への分布、細胞の破壊のバランスが循環中の血球を決定します。おおまかに下記のメカニズムにより汎血球減少が生じます。
・骨髄浸潤:血液悪性腫瘍、固形腫瘍の骨髄転移、骨髄線維症、感染症(粟粒結核、真菌感染症)
・骨髄不全:栄養障害(vitB12欠乏)、再生不良性貧血、感染症(HIV、肝炎ウィルス、パルボウィルスB12)、化学療法
・血球の破壊:DIC、TMA、無効造血(MDS、巨赤芽球性貧血)
・血球の分布異常:脾機能亢進症
〇原因
下記の表にまとめます。
汎血球減少へのアプローチ
〇汎血球減少で緊急性の高い状況
下記がある場合は早期の紹介、治療介入が必要です。
・好中球減少症(新たな診断または発熱/感染症に関連)
・症候性貧血(例,心虚血,血行動態の不安定性,うっ血性心不全の悪化)
・血小板減少症(10,000/μL 未満、または 50,000/μL 未満で出血と伴う)
・播種性血管内凝固症候群
・異常な末梢血塗抹標本(例,微小血管障害,芽球)
・重度の再生不良性貧血
・血球貪食症候群
・代謝異常(例,症候性高カルシウム血症,高カリウム血症,腫瘍崩壊症候群)
〇汎血球減少をきたす血液疾患と特徴
〇検査 *必要に応じて下記の検査を検討します
①採血検査
・血算(白血球分画+血液像+網状赤血球) *特に破砕赤血球の確認
・生化学:AST,ALT,ALP,γ-GTP,ビリルビン,フェリチン,sIL-2R
・凝固検査
・ビタミンB12、葉酸、銅、セルロプラスミン
・自己抗体:抗核抗体、その他自己抗体
・ウィルス関連
➁腹部エコー検査:肝臓と脾腫の評価
③骨髄検査 *非骨髄性が明らかなら必要なし
参考
・up to date
・医学事始
・血液内科ただいま診断中