作用機序
カルシトニンは甲状腺C細胞(傍濾胞細胞)より分泌されるペプチドホルモンです。破骨細胞に存在するカルシトニン受容体に作用し、骨吸収を抑制しますが、人体ではその役割は限定的とされています。
カルシトニン製剤の種類
本邦では鮭由来のサケカルシトニン(カルシトラン®)とウナギ由来のエルカトニン(エルシトニン®)があります。骨粗鬆症に対しては、どちらも週に2回筋注を行います。親和性が高いサケカルシトニンの方が広く使用されています。その他、カルシトニン製剤は高カルシウム血症や骨パジェット病にも使用されることがあります。
カルシトニン製剤のエビデンス
先に結論を言ってしまうと、カルシトニン製剤の骨密度、骨折予防に対する効果は一貫性がなく、なんとも微妙なものです。骨密度に関しては2002年のシステマィックレビューですと、椎体骨の骨密度は上昇させましたが大腿骨近位部には効果がありませんでした。それどころか、日本で適応の通っている用量に近い投与量ですと、むしろ椎体の骨密度が有意に低下してしまいました。1)骨折については大規模なものとしてPROOF試験がありますが、結果に一貫性がなく用量依存性がありませんでした。2)
一方で、カルシトニン製剤の秀でたポイントとして、圧迫骨折に対する鎮痛効果があります。2012年のシステマテックレビューでは、サケカルシトニン製剤を投与した群は非投与群と比較し、発症10日以内の急性期に投与を開始した場合に有意に痛みの抑制ができていました。ただし、3か月以上経過した慢性疼痛には効果はないようです。3)
副作用
低カルシウム血症によるテタニーが起こる可能性があります。サケやウナギにアレルギーがある人はもちろん使用できません。また、悪性腫瘍が増える可能性があるといわれています。
実際の使い方
カルシトニンについては単純明快、骨粗鬆症による圧迫骨折急性期の疼痛緩和に用いることが唯一の使用法です。他の薬剤と異なり、骨密度上昇や骨折予防を目標とした長期使用は行いません。
カルシトニン製剤のまとめ
参考
論文
1)Endocr Rev. 2002; 23: 540-551.
2)Am J Med. 2000 ;109: 267-76.
3)Osteoporos Int. 2012; 23: 17-38.
本
・もう悩まない!骨粗鬆症診療 新装版
・Gノート 骨粗鬆症診療マネジメント