尿検査総論については別項をご参照ください。
蛋白尿のフォロー
蛋白尿の鑑別を以下に示した上で、精査の進め方をまとめていきます。
①ネフローゼ症候群、急性腎炎症候群、急速進行性糸球体腎炎ではないか判断する
早期の精査加療により腎予後を改善しうる病態がないか評価することが重要です。臨床症候群での分類ではネフローゼ症候群、急性腎炎症候群、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)が該当します。
ネフローゼ症候群は尿蛋白3+以上の高度蛋白尿を認め、他に浮腫などの症状を伴います。可能であれば採血でアルブミン、脂質異常症(高LDL-C血症)を精査し、ネフローゼ症候群の診断基準に該当するかを確認できれば確実性が増します。
急性腎炎症候群や急速進行性糸球体腎炎では、血尿、病的円柱の出現、急激な腎機能障害、炎症反応上昇を認める場合に考慮します。発熱、体重減少、関節痛、皮疹などの全身症状がないかも確認しましょう。これらの病態を疑う場合、自己免疫関連の採血や腎生検の準備などに時間がかかるため、早期に腎臓内科への紹介が望ましいです。
➁一過性蛋白尿であるか判断する
尿検査の再検を行います。その際の検査で蛋白尿が陰性となっていれば一過性蛋白尿と考えられます。これは発熱や過度な運動、感染症などに付随する一時的な蛋白尿のことです。尿検体採取時の体調を確認すると共に、誘因が除去された後の尿検査で蛋白尿の陰性化を確認できれば一過性蛋白尿と診断できます。
③持続性蛋白尿の場合、起立性蛋白尿であるか判断する
尿検査を再検しても蛋白尿が陽性であれば、持続性蛋白尿と考えます。その中で区別したいのは経過観察可能な起立性蛋白尿です。起立性蛋白尿は小児、青年期に多く見られ、30歳以上では稀とされています。仰臥位では尿蛋白の排泄は認めませんが、立位になると尿蛋白の排泄量が増えます。早朝尿を採取してもらい、その尿蛋白が陰性であれば診断できます。
④病的蛋白尿として鑑別を行う
持続性蛋白尿であり、かつ起立性蛋白尿が否定できれば病的蛋白尿と考えられます。
病的蛋白尿は腎前性、腎性、腎後性に分類されます。以下に特徴をまとめます。
・腎前性
血中で過剰となった低分子蛋白が糸球体で濾過され、吸収しきれないことによって尿中に排泄されることで生じます。例えば多発性骨髄腫、急性骨髄性単球性白血病、悪性リンパ腫、AAアミロイドーシスがあります。また、横紋筋融解症や血管内溶血ではミオグロビンや遊離ヘモグロビンなどの蛋白質が血中で増え、近位尿細管で再吸収しきれなくなることでも蛋白尿として尿中に排泄されます。
・腎性:糸球体性蛋白尿
糸球体の濾過障壁の障害により、アルブミンのような大分子蛋白が尿中に排泄されます。糖尿病性腎症や糸球体腎炎が含まれますが、一過性蛋白尿や起立性蛋白尿もこのグループに入ります。
・腎性:尿細管性蛋白尿
濾過された低分子蛋白が近位尿細管の障害により吸収しきれない場合に尿中に排泄されます。疾患としては尿細管間質性腎炎や重金属中毒、尿細管壊死があります。アルブミン以外の蛋白質であるため、試験紙法では陰性となることがあります。
・腎後性
尿路感染症、尿路系悪性腫瘍、結石などで尿管に炎症が及ぶと尿中蛋白質が増加します。蛋白質はIgAやIgGなど、アルブミン以外のものが少量排泄されます。
病的蛋白尿については原因追及も重要ですが、プライマリケア医としては腎臓内科医に紹介する必要があるかを判断することも重要です。CKD診療ガイド2012によれば、
①0.5g/gCr以上または2+以上の蛋白尿
➁蛋白尿と尿潜血が共に陽性(1+以上)
③GFR<50ml/分/1.73m2
のいずれかを満たす場合は紹介を推奨しています。
以上をフローにしますと、以下の通りになります。
〇プライマリケア医として蛋白尿を診療する上での考え方
プライマリケア医として重要なのは、紹介が必要な腎疾患(急速進行性糸球体腎炎、IgA腎症など、腎臓内科による早期介入で腎予後の改善が期待できる疾患)と、プライマリケア医の元で経過観察可能な腎疾患(腎硬化症や糖尿病性腎症)とを区別することです。
そのために、
①尿検査の閾値を下げて行うようにし、尿蛋白を早めに捕まえられるようにする
➁尿蛋白が陽性となった場合は面倒がらずに前述のフローに則って紹介が必要か否かを判断する
ことを意識するとよいでしょう。
また、もちろんですが経過観察可能な蛋白尿、腎疾患だとしても、CKDとしての管理を適切に行っていくことも必要です。このCKDの管理については別項で解説したいと思います。
参考
・「型」が身につく 蛋白尿・血尿の診かた・考え方 日本医事新報社