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非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)

非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)とは

上気道から陽圧を用いて換気を行う方法を非侵襲的陽圧換気療法(nonivasive positive pressure ventilation:NPPV)と呼称します。対になる名称として侵襲的陽圧換気療法(IPPV)がありますが、こちらは要するにいわゆる挿管・人工呼吸器管理のことを指します。挿管を行わないため“非侵襲的”ということですね。下記のように、マスクを装着して使用していきます。

英語版wikipediaより

本来、CPAP(continuous positive airway pressure)は換気を行わないため、厳密にはNPPVには含まれませんが、どちらも急性呼吸不全に同じ機械を使って用いられるため、区別をしないで用いられることが多いです。

NPPVの適応

急性呼吸不全=NPPVとは当然ならず、適応のチェックが必要です。特に、

・エアウェイに問題がないこと

・重症度が高すぎないこと

が重要です。

以下、NPPV開始の基準を示します。

また、強いエビデンスがありNPPVの絶対適応といえる4疾患が

・COPDの急性増悪

・心原性肺水腫

・免疫不全に伴う急性呼吸不全

・COPDの抜管およびウィーニング

になります。

中等度のエビデンスがあり使用が考慮される疾患として、

・挿管拒否

・緩和手段としての終末期使用

・COPD、心不全の抜管失敗予防

・COPDの市中肺炎

・術後呼吸不全の治療と予防

・喘息における急性増悪予防。

があります。これらは施設、担当医によりNPPVを行うかどうか違いがでてくる所だと思います。

NPPVの設定

NPPVのモードには、S/Tモード、CPAP、PCV、VAPSモードがあります。

今回はよく使用するS/TモードとCPAPについてと、ライズタイムの設定についてまとめます。

S/Tモード

自発呼吸に合わせて換気をするものをSモード、換気回数と吸気時間を設定し自発呼吸とは無関係に強制換気を行うモードをTモードと呼称します。それぞれが単独で用いられることはなく、両者を合わせたS/Tモードが最も頻回に使用されます。

基本的には自発呼吸にあわせてSモードとして作動します。すなわち吸気を感知し(吸気トリガー)換気をスタートし、呼気を感知し(呼気トリガー)換気を終了します。自発呼吸が設定よりも少ない場合にTモードが作動し、再び自発呼吸を検知するとSモードが作動します。

以下、S/Tモードの例を示します。

CPAP

PEEPをかけることで平均気道内圧を上昇させ、酸素化に寄与します。外来では閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対し気道閉塞を開放する目的で使用されます。

S/TモードとCPAPのどちらを使用すべきか?

NPPVが強く推奨される4つの病態のうち、特にNPPVによる介入の効果が高いのが心原性肺水腫とCOPD急性増悪です。それぞれの病態を理解しつつ、どちらを選択すべきか検討していきましょう。

〇心原性肺水腫の場合

心原性肺水腫の場合、肺胞壁が浮腫で厚くなり、肺胞は虚脱し肺胞内に浸出液がたまっています。また、障害部位は呼気時に完全虚脱するため呼気時はガスを交換できません。PEEPを加えると虚脱した肺胞が拡張し、酸素交換に寄与する部分が増えます。呼気時にも虚脱しないため、ガス交換に関与できます。要するに換気血流不均等の改善が起こるわけですね。心原性肺水腫は酸素化の障害であり換気障害ではないため、換気補助をする必要はありません。また、治療が速やかに成功すると比較的短時間で回復します。補助換気を行うことで呼吸仕事量を軽減するメリットはなく、むしろ不快感を与えかねません。よって、心原性肺水腫にはCPAPモードを使用します。

〇COPD急性増悪の場合

COPDは肺胞壁が破壊され、本来もつ弾力性が失われ過膨張しています。肺胞や血管が破壊されているため酸素化が障害されています。また、肺の弾力性が失われ気管支も狭いため、呼出障害があり換気障害もあります。さらに、COPD患者は呼吸筋疲労をおこしやすく、NPPVにより呼吸筋疲労を防ぐことの意味が大きいです。よって、酸素化・換気の両方を補助するS/Tモードを選択します。

その他の呼吸不全も酸素化と換気の両者に問題があることが多いため、CPAPよりもS/Tモードが選択される傾向があります。

ライズタイム

換気を行わないCPAPを除くすべてのモードにあります。吸気の立ち上がりの速さ(EPAPからIPAPに至る時間)を決める項目です。多くの患者は0.2秒で問題ないことが多いです。

0.05-0.1秒に短く設定する場合:呼吸が促迫した病態、ARDSやCOPDの急性増悪などで用いられます。

0.2秒以上に長く設定する場合:神経筋疾患、拘束性肺疾患では、患者が息を吸い込むのに時間を要するため、ゆっくり補助してあげると安楽が得られます。

COPD急性増悪に対するNPPV

前述の通り、S/Tモードで開始します。

FiO2は0.3程度から開始します。CO2ナルコーシスのリスクがあるため、SpO2を見て90%前後に保つことができるよう、低めから開始する必要があるためです。IPAP 8cmH2O、EPAP 4cmH2Oから開始します。これにより換気量(IPAP-EPAP)とPEEP(EPAP)が決まります。いきなり高い圧ですと患者の不快感が強いため、低めの設定から入ります。バックアップ(Tモード)として換気回数は12回/分、換気時間1秒で設定しておきます。

CO2貯留がある場合、患者の同調、受け入れを確認しつつ、IPAPを2cmH2Oずつ挙げていきます。IPAPは上げても15-20cmH2O程度が限界であり、これ以上換気が必要であるようなら挿管・人工呼吸器管理への変更を検討すべきです。

酸素化が悪い場合はFiO2、EPAPのどちらかを上げていきます。ここは匙加減になりますが、両方をバランスよく上げていけば問題ないと思います。

肺水腫に対するNPPV

前述の通りCPAPモードで開始します。ただし、CO2貯留がある場合は換気も必要になるため、S/Tモードを使用することもあります。

FiO2は患者の酸素化に合わせて0.5-1.0で開始し、SpO2を見て至適な値に調整していきます。

CPAPの場合、PEEPのみを設定することになりますが、最初はPEEP 5cmH2O程度から開始し、同調を見て1-2cmH2Oずつ上げて最終的には10cmH2Oを目標とします

NPPV導入後の評価

導入後30分、2-4時間といった時点で血液ガスの評価を行います。pHの推移と意識状態の改善を重視します。もちろんPaO2、PaCO2が改善したかどうかも評価します。努力呼吸が改善したかも重要な観察ポイントです。以下、NPPV開始後のチェック項目を提示します。

また、リークは20L/分前後を目標にマスクのフィッティングの調整を行いましょう。

NPPVからの離脱

呼吸状態や動脈ガスの数値が安定し、呼吸不全の原因が改善した場合、NPPVからの離脱を検討します。

以下がup to dateのNPPV離脱の基準です。

離脱する場合に普遍的なプロトコルはなく、患者の状態を見て調整していきます。

例えば呼吸が抑制される夜間のみNPPVを装着し、日中はフリーとする、など、状況によっては慎重にtaperingしていきます。

参考

・up to date

・こういうことだったのか!!NPPV 小尾口邦彦 中外医学社

・NPPVガイドライン 改訂第2版 日本呼吸器学会