血小板減少とは
〇定義
血小板減少は血小板数<15万/μLもしくは基礎値より50%以上の減少とされます。
ただし、10-15万/μLで長期間安定している場合、必ずしも病的とは限りません。単に絶対値を見るのではなく、“どのくらいの経過で血小板が減少しているのか”という時間軸を含んだ考え方をすることが重要です。
〇病態
血小板は肝臓で産生されるTPOの刺激により骨髄で作られます。通常寿命は7-10日です。
病態としては血小板産生の減少と血小板の破壊に分けられます。前者では再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など、後者では播種性血管内凝固症候群(DIC)や血栓性微小血管症(TMA)が代表されます。その他の機序として、血小板分布の変化と血液希釈があります。血小板再分布の変化とは、門脈圧亢進症によるうっ血性脾腫で認める病態であり、血小板が循環から脾臓に再分布することで生じます。血液希釈大量の輸液や輸血が原因で起こります。
また、外来患者なのか入院中なのかという状況においても鑑別が異なってきます。例えば外来患者では免疫性血小板減少症(ITP)やHIV、HCV、リケッチアなどの感染症が主体になりますし、入院中ではDIC、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、マクロファージ活性化症候群(MAS)などが鑑別となってきます。
以下、病態と原因をまとめます。
また、私の研修病院で使われていたゴロ“HELP ME DIC”で覚えるという手もあります。
血小板減少 HELP ME DIC
H:HUS, TTP
E:eclampsia(HELLP症候群)
L:LC(肝硬変)
P:prosthetic valve(人工弁による物理的な破壊)
M:marrow(骨髄疾患)
E:EDTA 偽性EDTA凝集
D:DIC, drug(heparin, その他)
I:intoxic, infection 中毒、感染症
C:collagen 膠原病
血小板減少に対するアプローチ
〇末梢血スメアからのアプローチ
血小板減少を見た時、まずは末梢血スメアを確認することが重要です。
血小板凝集がみられる場合、EDTA依存性血小板減少、つまり偽性血小板減少であり、病的ではありません。
血小板凝集を認めない場合も、末梢血スメアのその他の所見から鑑別を絞ることができます。
破砕赤血球:DIC/TMA
芽球:骨髄疾患
球状赤血球:Evans症候群
異形リンパ球:感染症
〇経過からのアプローチ
急性経過の血小板減少には重大な疾患が背景にあることが多く、血小板低下による出血リスクもあるため、スピード感のある対応が必要です。この際もスメアを確認し、偽性血小板減少の可能性は否定しておく必要があります。その後、敗血症/DIC/HIT→TMA/血球貪食症候群→リケッチアなど→血液腫瘍/TAFRO症候群の順で鑑別を進めていきます。いずれも否定的であれば、その他の緊急性に乏しい疾患について精査を行います。
参考
・Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2012;2012:191-7.
・Am Fam Physician. 2012;85(6):612.
・up to date
・医学事始
・ホスピタリストのための内科診療フローチャート 第2版