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肺結核

結核については下記の記事も参照ください。

病態

感染の成立

結核の感染は、肺結核患者が咳をしたときに飛び散る飛沫中の結核菌を吸い込むことで起こります。いわゆる空気感染の様式をとります。

肺胞マクロファージに貪食された結核菌はその細胞内でリソゾーム酵素の殺菌作用を受けますが、生き延びた菌は肺のリンパ路を経由して流域の肺内リンパ節に運ばれます。この肺とリンパ節で起こる病変を初感染群と呼び、胸部画像では肺内と肺門部近傍の小さな石灰化巣として認められることがあります。この場合、結核菌は生き残っていますが、菌の増殖は起こらず発病には至りません(不顕性感染)。

また、結核菌を貪食したマクロファージはT細胞に抗原提示を行い、増殖したTリンパ球はサイトカインを分泌しマクロファージを活性化します。その結果、マクロファージは貪食した結核菌を殺菌できるようになります。このようにして結核菌に対する細胞性免疫が形成されることで、ツベルクリン反応やインターフェロンγ遊離試験(IGRA)が陽性となります。

感染から発病までの流れ

下記は仮想的な群が結核菌に接した後にたどる経過を模式的に表したものです。

菌を吸入した約半数が感染し、その中で10-15%が生涯の間に発病します。発病の多くは感染後2年以内ですが、その後生涯にわたり発病のリスクは付きまといます。

肺結核の発症

肺結核は一次結核、二次結核のいずれでも生じる可能性があります。

一般に、

一次結核:小児に多く、画像的には末梢肺や肺門・縦郭リンパ節腫脹を伴う

二次結核:成人に多く、画像的には肺上部に病変を作りやすい

といった特徴があるとされますが、診療の上でこれらを分類する必要性は乏しいです。

肺結核は全体の80%を占めており、最も頻度の高い病態です。

症状

胸部X線で明らかな所見のある排菌者の多くでは咳、痰などの気道症状を認めることが多いですが、中には全くの無症状であるものもいます。特に初期の頃は症状を呈しにくく、健診の胸部X線などで偶然に発見されることもあります。

咳嗽は最も多い症状で半数以上に認めます。次いで多いのが喀痰で、約30%程度にみられます。発熱は30%程度、喀痰・喀血、胸痛はそれぞれ10%前後に認められます。進行すると体重減少や盗汗が出てきます。

経過は亜急性-慢性経過であることが多く、数週間持続する呼吸器症状を見たら必ず結核を考える必要があります。その一方で、急性経過で一見通常の細菌性肺炎のようなプレゼンテーションを呈することもあるので注意が必要です。結局、“患者を診たら結核を疑え”というくらいの姿勢がよいのかもしれません。

診断

塗抹検査

肺結核を疑ったときにまず行う検査が喀痰塗抹検査です。約半数は喀痰中に結核菌を認めるとされます。重要なのは良い痰を得ることで、早朝のうがい後の、のどの奥から出る痰が理想的です。感度を高めるために3日間の連続検痰(いわゆる三連痰)が必要で、これにより感度を70%まで高めることが可能です。

一般にはZiehl-Neelsen染色が行われますが、蛍光染色法の方が感度がよく時間効率もよいとされます。

Ziehl-Neelsen染色
蛍光染色法

三連痰の塗抹検査が陰性である場合、基本的には他者への感染性はないと考えてよいです。しかし、塗抹陰性でも感染性があり二次感染の原因になる可能性を示した報告もあります。画像検査で空洞影があり排菌の疑いが強い場合や、湿性咳嗽など呼吸器症状が強い場合などは隔離の上で精査を進める方が無難かもしれません。

また、非結核性抗酸菌と結核菌の区別を行うため、塗抹検査にPCR検査を追加します。塗抹が陽性であった場合、PCR検査の感度は95%、特異度は99%とされています。また、塗抹陰性であっても、感度は75-88%、特異度は95%とそれなりのようです。基本的には塗抹が陽性であった場合にPCR検査を行うことが望ましいですが、現場では1回目の喀痰検査にPCR検査を含めてしまっていることが多いです。

喀痰がでない患者さんでは胃液検体の塗抹検査を行います。早朝に胃管を挿入して胃液を採取します。感度は低いですが特異度は高いとされています。

日本からの報告で、

・肺結核の診断における胃液の塗抹陽性は感度21.2%、特異度91.9%、核酸増幅検査陽性は感度55.8%、特異度99.6%、培養陽性は感度71.4%、特異度100%であった

・胃液のみで診断された患者は11.2%であった

・1回目の喀痰検査では58.5%の診断率、この次に胃液検査を行うと診断率は83%に上昇し、喀痰2回を繰り返した場合の診断率75.5%よりも有意に高い診断率であった。また、同様に3回のストラテジーでは、抗酸菌検査の中に胃液を含めることで診断率が87.4%に上昇し、3連痰診断率79.2%よりも高かった。

という、胃液検査の有用性についての研究があります1)

1)より引用

この研究結果を踏まえると、特に喀痰の多くない肺結核疑いの患者さんでは、三連痰の中に一度は胃液検査を含めるとよいのかもしれません

培養検査

結核の最終診断には分離培養法で生菌の存在を確認する必要があります。また、感受性試験を行うためにも必須の検査です。その感度は肺結核全体で80%程度、明らかな空洞例では96%程度とされています。

従来からの卵固形培地(小川培地)は菌のコロニーを確認できる利点はあるものの、培養結果が分かるまで3-8週間かかってしまいます。一方、液体培地では1-3週間で結果がわかるため、現在では液体培地が主流となっています。

気管支鏡検査

一般的に誘発喀痰と気管支肺胞洗浄標本とでは診断精度は変わらないとされていますが、喀痰検査、胃液検査だけでは診断がつかない場合に追加での検査を検討します。ただし、行う際は空気感染に十分留意して行う必要があります。

結節影・腫瘤影の場合は生検を行うことで結核の診断、結核菌の同定が可能となる場合があり、肺癌との鑑別にもなります。逆に、肺癌を疑って生検したら結核!!!ということも実臨床ではあり得ますが、この場合感染対策の上で色々と大変なことになります…。

Interferon-Gamma Release Assays(IGRA)

結核を疑う場合に良く行われる検査です。高齢者では細胞免疫の低下を反映し偽陰性となることが多々あるため、肺結核の診断にも除外にも使えないことに注意が必要です。

画像検査

肺結核は実に多彩な陰影を作るため、画像検査だけでは診断も除外もできないことを理解しておきましょう。画像上は通常の細菌性肺炎と同じ浸潤影を呈する肺結核もあるため、亜急性-慢性の臨床経過や接触歴などから総合的に疑っていく必要があります。

その上で、肺結核の画像所見として覚えておくべき所見として

・tree in bud apperance

・空洞影

の2つを紹介しておきます。

結核は肉芽腫を形成することを反映し、通常の肺炎と比較すると粒状影や結節影など、つぶつぶした影を呈しやすい傾向があります。このため、tree in bud apperanceは比較的結核に特徴的な陰影であり、少なくともこの影を見たら結核を強く疑って診療を勧める必要があります。

また、空洞影を見た場合も結核を疑う必要があります。空洞の中には多量の結核菌が存在しているとされ、空気感染の可能性が極めて高いので、迅速に隔離を行いましょう。

補足ですが、結核を診断した際、公費負担申請書を作成することになりますが、この時に学会分類による病型分類を記入する必要があります。この病型分類ですが、診療方針や予後の判定など臨床的な意味はほとんどないと考えられており、ただの臨床現場への負担でしかありません。あまり詳しくは書きませんが、この辺りを含め、本邦の結核診療にはいくつかの問題点があり、今後の改善が望まれる所です。

肺結核患者への対応

肺結核を疑ったら

外来患者で肺結核を疑った場合、直ちに他の患者さんと隔離を行います(自家用車で待機してもらうなど)。その上で三連痰を行い、排菌の有無をチェックします。この時点で塗抹陽性かつPCR検査陽性となれば排菌のある肺結核の診断となり、入院勧告の対象となります。

三連痰が陰性である場合、ひとまず感染性はないということで一安心することができます。塗抹が陰性でも培養が陽性なることもあるため、そちらの結果を待ちつつ、肺結核が疑わしいようであれば気管支鏡検査を含めた追加検査を検討します。

入院が必要な患者、もしくは入院中の患者で肺結核を疑った場合、すぐに陰圧個室への隔離を行った上で精査を進めていきます。陰圧個室がない場合は少なくとも通常の個室に移すことになりますが、その時点で一度結核対応のできる高次医療機関へ相談しておくのが無難でしょう。

肺結核診療の上での手続き

感染症法に基づき、医師は患者が結核であると診断したときは、直ちに最寄りの保健所に発生届を提出する必要があります(2類感染症)。届け出の対象には結核患者、結核医療を必要とする無症状病原体保有者、疑似症患者が該当します。

また、感染症予防法第37条の2の医療費公費負担申請書についても同様に提出します。

入院勧告の対象

下記が入院勧告の対象とされています。

喀痰塗抹「陽性」は入院勧告の絶対的な対象となります。

喀痰塗抹「陰性」の場合は基本的には外来治療が可能ですが、その中でも感染性が高いと考えられる症例(呼吸器症状が強い、空洞形成があるなど)や、抗結核薬の規則的な内服ができない症例では入院勧告の対象となり得ます。

退院の基準

退院には「退院させなければならない基準」と「退院させることができる(させてもよい)基準」の2つがあります。前者については、“患者の咳、発熱などの症状が消失し、異なる日に採取された喀痰の「培養検査」の結果が連続3回陰性であることが確認された場合”が該当します。

後者については、以下のすべてを満たした場合とされています。

①2週間以上の標準化学療法が実施され、咳、発熱などの臨床症状が消失

➁2週間以上の標準化学療法が実施され、異なった日の喀痰塗抹検査あるいは培養検査の結果が連続して3回陰性である(3回の検査は原則として塗抹検査を行うものとし、①による臨床症状消失後にあっては、速やかに連日検査を実施すること)

③患者が治療の継続及び感染拡大の防止の重要性を理解し、かつ、退院後の治療の継続および他者への感染の防止が可能であると確認できている

長期入院は患者さんにとっての不利益が大きいため、上記の通り①を満たす場合は速やかに➁の確認を行う必要があります。

治療

治療の原則

初期治療は2HREZ(イソニアジド+リファンピシン+エタンブトール+ピラジナミドを2か月)→4HR(イソニアジド+リファンピシンを4か月)のレジメンで行います。

具体的には、体重60kgである場合、

〇初期強化治療 2か月

・イスコチン®100mg 3錠 分1

・リファンピシン150mg 4カプセル 分1

・エブトール®250mg 3錠 分1

・ピラマイド®1.5g 分1

〇維持治療 4か月

・イスコチン®100mg 3錠 分1

・リファンピシン150mg 4カプセル 分1

で治療を行います。

妊婦や痛風患者、ADL不良の高齢者ではピラジナミドを使用せず、残りの3剤で治療を行いますが、この場合は2HRE(イソニアジド+リファンピシン+エタンブトールを2か月)→7HR(イソニアジド+リファンピシンを7か月)となり、治療期間を延長する必要があります。

4剤のうちリファンピシン、イソニアジド、ピラジナミドは結核菌に対する抗菌作用が強く、これらの併用が最強の抗結核治療と言えます。基本的にはピラジナミドを含んだ4剤併用療法を行うべきであり、高齢者だからといって画一的にピラジナミドを使用しないというのは推奨されません

副作用とその対応について

・消化器症状:食後や就寝前の内服などタイミングを変えてみる

・皮疹:軽度であれば経過観察や抗アレルギー薬の併用を行う。重症化の徴候があればすべての薬剤を中止とする。結核治療を継続する必要があれば別の経口薬2剤とアミノグリコシド系抗菌薬に変更し治療を継続する。

・発熱:結核の悪化、他の感染がないか確認する。また、タイミングから初期悪化や免疫再構築症候群の可能性も考慮する。これらが除外され、薬剤熱の可能性があれば一旦すべての抗結核薬を中止してみる。

・肝障害:軽度の無症候性の肝機能異常は20%に起こりうる。肝機能が正常上限値の5倍以内で無症状なら軽症例と考えて治療を継続する。5倍以上または3倍かつ症状がある場合、薬剤をすべて中断する。HBV、HCVなど他の肝炎がないか検索し、飲酒や他の薬剤など疑わしいものがないか確認する。肝機能が正常上限値の2倍にまで落ち着いたら中止した抗結核薬を再開する。ATS/IDSAのガイドラインによれば、リファンピシンによる肝機能異常は頻度が低い上、抗結核薬の要であるため最初に再開を推奨している。リファンピシン開始後1週間、大きな問題がなければイソニアジドを再開、その後エタンブトール、ピラジナミドと続けていく。ただし、ピラジナミドは肝障害のリスクが高いため、無理をして再開はしない。

参考

1)J Infect Chemother. 2022 Jul;28(7):1041-1044.

2)レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版

3)結核の知識 第5版 医学書院

4)結核診療ガイド 南江堂

5)Up to date