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抗核抗体の意義

抗核抗体とは

抗核抗体(antinuclear antibody:ANA)とは自己の核内成分に対する抗体を見る検査です。本邦では蛍光抗体法による技師の目視で測定、報告されています。

抗核抗体を構成する特異自己抗体は50種類以上知られており、これらをすべて測定することはコストの面から困難です。そこで、一般的に蛍光色素を用いた間接蛍光抗体法を用いて検査し、その染色形態から下記のように分類します。それぞれ対応する特異自己抗体も記します。

抗核抗体といっても、抗ARS抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗SS-A抗体の一部は細胞質に対する抗体であるため、抗核抗体が陰性でも陽性となりうることを覚えておきましょう。

抗核抗体の測定法

かつてはげっ歯類の肝臓切片を基質として使用する方法が用いられていましたが、現在はヒト類表皮細胞株(HEp-2)細胞基質を用いた間接蛍光抗体法が用いられています。HEp-2細胞は大きな核を持っているため、染色パターンが見やすくなるという利点があります。また、臨床的に重要な自己抗原が全て含まれているため、自己抗体の検出に理想的です。

細胞を成長させた後、スライドガラスに固定し、溶媒で透過処理をしてから希釈した患者の血清を重ねます。その後、スライドを洗浄してその他の血清蛋白を除去し、ヒト免疫グロブリンに対するフルオレセイン結合抗体を重ね、洗浄後に観察をします。

A:均質、B:斑紋、C:セントロメア、D:核小体 UpToDateより

抗核抗体の力価

どの程度血清を希釈して抗核抗体が検出されるかで力価が決定されます(例:40倍、160倍など)。値が大きければ大きい程抗核抗体が多いことを示しています。

20-60歳の健康なボランティアを対象とした大規模な多施設共同研究では、40倍の希釈では32%に、160倍の希釈では5%に抗核抗体が検出され、抗核抗体陽性=自己免疫性疾患ではないことが示されています。同じ研究でSLE、全身性強皮症、シェーグレン症候群の患者における抗核抗体が測定されていますが、40倍の場合は感度がそれぞれ97%、100%、84%であり、160倍の場合は95%、87%、74%に低下しました。

力価は高い程自己免疫性疾患らしさは上昇しますが、健常人でも陽性となりうることに留意しておく必要があります

また、抗核抗体の力価は疾患活動性とは無関係であるため、基本的には一度の測定で十分です。これはSLEにおいて抗dsDNA抗体の力価が疾患活動性と比例することとは対照的です。

抗核抗体を測定するタイミング

一般的に抗核抗体は「膠原病」を疑ったときに検査すると理解されていますが、そもそも膠原病は

抗核抗体によって抗核抗体陽性率が高い膠原病(抗核抗体関連膠原病)

そうでない膠原病(血管炎、脊椎関節炎、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、ベーチェット病、成人スティル病など)

の二つに分類することができます。

抗核抗体を測定する意義は、この抗核抗体陽性率が高い膠原病を除外するためということになります。特にSLE、強皮症、シェーグレン症候群、混合性結合組織病では抗核抗体陽性率が高く、こうした疾患を除外するために抗核抗体は有用といえます。抗核抗体が陽性となる疾患の中でも皮膚筋炎/多発筋炎では陰性例が多いことを押さえておきましょう。

また、抗核抗体を測定するもう一つのタイミングとして、抗核抗体陽性率が高い疾患を臨床像から疑い診断をつけたい(その可能性を上げたい)時があります。その場合、抗核抗体が陽性となれば、次に疾患特異的な自己抗体を測定します。

よく不明熱の際に抗核抗体を測定することがあると思います。SLE、皮膚筋炎、多発筋炎、混合性結合組織病では発熱もありますが、それぞれに特異的な所見があるため、しっかりと診療していけば不明熱にはなりにくいです。また、強皮症とシェーグレン症候群はそれだけでは発熱することは稀です。また、感染性心内膜炎や結核、悪性腫瘍、悪性リンパ腫、キャッスルマン病、ウィルス感染などで一過性に抗核抗体が陽性となることがあり得ます。したがって、発症早期で臨床症状の出そろっていないのSLEや皮膚筋炎、多発筋炎を疑う場合には抗核抗体を測定する意義はありますが、それ以外では下手に抗核抗体が陽性となることで診断に混乱してしまうときがあるため注意が必要です。

以下、各疾患と抗核抗体の陽性率をまとめます。

また、余談ですが、抗核抗体関連膠原病における抗核抗体の病態への関与は判然としていないのが実情です。当然ながらin vivoでは抗体は細胞内には侵入できないため、それ自身が自己抗原に結合して悪さをしている、という病態は考えにくいとされています。膠原病ではT細胞、B細胞を含め、免疫が複雑に関連しあって異常に活性化することで発症していると考えられています。このため、抗核抗体それ自身が悪というよりも、結果として抗核抗体が産生されていると解釈すべきであり、あくまで病態の一面を見ているに過ぎないことを理解しておく必要があります。

参考

・UpToDate

https://www.uptodate.com/contents/measurement-and-clinical-significance-of-antinuclear-antibodies

https://www.uptodate.com/contents/clinical-significance-of-antinuclear-antibody-staining-patterns-and-associated-autoantibodies

・卒後15年目総合内科医の診断術 ver.2 石井義洋 中外医学社

・ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック 萩野昇 羊土社